不到
2021-03-07
安価・お題で短編小説を書こう！9
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1601823106/
>>453
使用お題→『ココア』『たんこぶ』『ネズミ』『那由他』
【不到】
手にしたカップを傾けると茶色く濁った液体が白い磁器の表面を滑り落ち僕の口の中で舌の表面に触れると同時に味を感じる器官の一つ一つが発火し立ち込める香りは鼻の奥で嗅覚を刺激し生じた信号は神経を伝わり途中色々とありながらも最後に思い起こされたのは小さな頃のたんこぶを作った記憶だと知りつつも僕が考えたのはネズミのような姿をした人類の遠い祖先のことで彼らの嗅覚は現代の我々より優れていたはずだけれども味覚はどうだったか僕が忘れても僕の遺伝子はきっと覚えているからあの木漏れ日も幹の感触もカカオの実の硬さも本当は僕の記憶ではなく昔どこかで暮らしていた見ず知らずの誰かがうっかり手を滑らせた日に散らばった種子が芽を出して大きくなり実を付けることを繰り返す内に別の誰かがカカオ豆を発酵させ乾燥させついには粉々にして出来上がった粒子が星の数ほども溶け込んだココアが僕の食道を落ちていった。
そのココアは薄かった。
僕は、ココアを入れてくれた母に
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