最終話 希望
俺達は金色の鍵の竜キアーヴェの背に乗り、魔王城を脱出していた。
キアーヴェはとてつもないスピードで飛び続ける。
魔王城のあった島が見る見る小さくなっていく。
頬を切る風の音が痛い。
魔王を倒した勝利の感慨はない。キィを失ったことで皆一様に暗い顔をしていた。
アリシアはキィのことを聞いて泣いていた。
「私が、私がいけなかったの……うう」
「キィのことは、アリシアのせいじゃない」
俺はそっとアリシアを慰める。
「でも……でも、キィちゃんは……私を生き返らすために犠牲に」
「キィはきっとアリシアと一緒になって生きると決めたんや」
ステラもアリシアを宥めた。
「そうだ、キィは自らの役目を果たしたのだ」
キアーヴェが言う。
俺はただ、キィのことを考えていた。
キィ、開かずの扉の迷宮で出会ってからずっと俺を助けてくれた。
マスターキィソードがなければ強大な敵には勝てなかった。
そして、俺のことを好きだと言ってくれたキィ。
……もう会えないのか?
そのとき、俺の腰につけていた鍵束が光った。
それは魔王の城で回収したシュリセルの鍵だった。
「シュリセル……、俺に何を伝えたいんだ?」
するとアリシアの胸元で何かが光る。
「何かしら……」
アリシアは自らの胸に手を入れてまさぐる。
「胸の間に何か小さいものが挟まっているわ」
そして手に取りだしたのは…………指先ほどの小さな鍵だった。
――――それは紛れもなくキィの鍵だった。
「キィの鍵だ……。小さくなってしまっているけれどもキィの鍵だ!」
俺はそれを見て叫ぶ。
「キィちゃんの鍵!?」
「そうだ、キィは生きている、生きているんだ!!」
鍵の一族は鍵の姿になって生き永らえている。
たとえ、どんなに小さくなってしまったとしても確かに生きている。
――いつかきっと帰ってくる。
「キィ、お腹空いた」
どこかでキィの声が聞こえたような気がした。
「よし、ご馳走を用意して待っているぞ。キィは生きてるんだ!」
東の水平線から夜明けの太陽が昇ってきている。
俺達は、キィがいつか必ず戻ってくることを確信して、ブレイブ王都へとキアーヴェの背中に乗り飛び続けるのだった。
(了)
これにて本編は終了です。
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