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第8話 キィ

 俺たちは落ち着いてあたりを見廻す。

 通路が伸びていて、奥に小さな部屋が見えた。


「行ってみようか」

 俺は立ち上がり歩きだそうとする。


「ちょっと待って、怪我は大丈夫なの?」


「これくらい、平気、へいきっ……いたたっ!」

 俺は思わず先ほどゴーレムにやられた胸部を押さえる。


 まさか、骨は折れてないよな……。


「なんで、あんな無謀なことしたの?アイアンゴーレムに向かっていくなんて!」

 アリシアは咎めるような声で言った。


「いや、気づいたら無意識に体が動いていたんだ」


 アリシアはため息をついた、そして無言で俺の胸に手をやる。

治癒ヒール!」


 瞬間、体が浮くような感じがした。

 それとともに痛みが消えていく。


「回復呪文……君ってこんなことまでできるんだ」

 俺は驚きとともにアリシアに話した。


「簡単なものだけだけどね、それより、大丈夫?」

 アリシアが心配そうな目で俺を見つめる。


「あぁ、おかげで痛みが引いたよ、ありがとう」


 俺はアリシアに感謝した。


「門番を抜けた通路の先にある部屋、封印の眠るところ、どうやらあの部屋みたい」


 二人は歩き出した。


 通路を抜けたその部屋の入り口には扉はなかった。

 俺達は周囲に気をつけながら部屋の中に入る。


「これは……」


 目の前には下半身を壁に埋め込まれた布をまとったやや幼い少女の彫像があった。


「彫像……?いや、まるで生きているみたいだ」


 少女の耳は先が尖っていた。


「俺達と同じ人間か?それともエルフ?」


「まさか、このが鍵の一族……?」

 アリシアが呟く。


「鍵の一族、なんだそれは?」


「伝承に伝わる封印された一族よ、でもまさか封印ってこの……」

 そこまで話して、アリシアがあることに気づく。


「見て、この子、胸元に鍵穴が!」


「なんだって?」

 俺はもう一度少女の顔の下をよく見る。

 確かに胸元、鎖骨の中心あたりに鍵穴らしきものがある。


「まさか……!?」

 俺はある考えにいたり声に出す。


「うん」

 アリシアがその考えを読み取ったかのように頷いた。


 俺は静かにその娘の彫像の胸元の鍵穴に手をやる。

 そして厳かに唱える。


施錠解除アンロック!!!」


 ――瞬間。


 ビカアアアアァァァ!!!


 胸元の鍵穴から膨大な青色の光の渦が当たりを包んだ。


 思わず、俺とアリシアは目をつぶった。


 とんでもない圧力が右手に流れ込んで来る。


「オオオオオオオオオオオッ!!」

 俺は叫びつつ思わず手を離しそうになりながらも必死にこらえる。


 光りの渦はやがて風を起こし、俺たちの髪をなびかせた。

 アリシアの長い金髪が風に揺れている。


「ジョウ君!」


「だい……じょぶだっ!」


 その瞬間、頭の中に女性の声で


施錠解除アンロック


 と声がし、カチャリとどこかで音がした。


 と共に光の渦は収束していき、俺の腕の中に消えていった。


 同時に。


 ――少女の彫像を覆っていた石がボロボロととれて下に落ちていく。


 驚いたことに覆われていた石がはがれたその姿は生身の姿だった。


 少女の下半身を覆っていた壁もボロボロと崩れ、足が現れ少女は倒れ俺の胸に抱き着く格好になった。


施錠解除アンロックが、生身に効くなんて……」

 俺は驚きのあまり声を出していた。


「封印が解けた……?」

 アリシアが同じく驚愕の表情で言う。


 少女は燃えるような赤い髪をしており髪は短く肩までの長さだった。


「……君は?」


 俺は思わず声に出す。


「わたしは……、キィ」


「キィ?」


 笑って彼女は言う。


「会いたかった、マスター!!!」


 そう言ってキィと名乗った少女は俺にがばっと抱き着いたのだった。

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