第79話 その頃のスライドのパーティ(15)
……一方、その頃のスライドのパーティは。
「い、いって――。な、なんだこの揺れは……?」
上から小さな瓦礫が落ちてきて、かろうじて目を覚ましていた。
「魔王が倒されて封印されたのじゃろう、魔王の力を失い城は崩れようとしている」
メルビルがあたたと腰をおさえながら言う。
「何、それじゃあジョウの野郎が魔王を倒したってのか!?」
スライドが聞き返す。
「おそらくな。奴は本物の勇者になったのじゃ」
メルビルは言う。
「そんなの、ありえねえ! ジョウの奴がほんとに……ほんとなのか」
「朧げな記憶だけど、ジョウがあたしたちを洗脳から解いてくれたわ」
ミレイがボロボロの体を支えながら言う。
「俺達、みんなアクアドラゴンのリュウセイに操られてたんだ」
エドガ―が呟く。
「でも、どーすんだ、魔王が倒されて城が崩壊するんじゃ、俺たち助からねーじゃねーか!」
スライドが叫ぶ。
「大丈夫よ。魔王の宝物殿から一個だけ転移石をくすねておいたの」
ミレイが懐から転移石を取り出す。
その転移石は魔王が倒されたせいで、光が戻っていた。
「しかし、このまま王都に戻っても借金は返せませんぜ。宝物殿から少しでもお宝を回収しないと」
モラドが言う。
「そ、そうだな、これじゃあ商売あがったりだ」
「そんな暇、あるわけないじゃない」
ミレイがスライドとモラドを諭す。
スライドは思う。
――負けた、完全にジョウの奴に負けた。
奴は魔王を倒した鍵の勇者となり名声と富を得るだろう、しかし俺達は借金まみれで富も名声もない。
これから借金返済の日々が始まる。
ミレイから渡された転移石を受け取りスライドは叫ぶ。
「ちくしょ――――!俺の負けだ、またまた大損だ、転移――――!!」
そうしてスライドのパーティは崩れ行く魔王の城から逃げ去るのだった。
次回、いよいよ最終回です。
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