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第77話 キィの鍵

「ヌオオオオオオッ!馬鹿な!!」

 

 魔王ザンバックは信じられないという表情で俺たちを見る。


「やった!魔王ザンバックのコアを貫いたぞ」

 俺は叫ぶ。


 魔王はフラフラと後ろに下がる。

 そして、笑う。


「愚かなり、鍵の勇者、それに鍵の勇者を守る戦士よ。今ので我を倒したと思ったか?」

 

「なんだって!?」   


「我の真の姿を見せてやる」

 そう言って魔王は変身していく。


 あっという間にキアーヴェに劣らない大きさの巨大な角を二本生やした魔神の姿になる。


「なに!コアを貫いたというのになぜ!」

キアーヴェが叫ぶ。


「この三百年間、我がただ眠り続けたのだとは思うなよ。我のコアは貫かれても再生するようになったのだ、たとえオリハルコンソードでもな」

 そう言って魔王は咆哮する。


「魔のいかづちを食らえ!」


「いけない、キィだけでも守らなければ、ステラ!」


 ステラはとっさに障壁(バリヤー)を唱える。

 しかし、いきなりのことでキィにしか障壁(バリヤー)を張れない。


 俺とステラ、アリシア、キアーヴェは全身に魔のいかづちを食らってしまう。


 体全身がビリビリと軋むような痛みだ。


 キアーヴェは一番ダメージを受けたようでドラゴン形態から人間形態に変化してしまう。

 

 ――俺達は一気にピンチに陥った。


「何て……こと、オリハルコンソードでも倒せないなんて」

 アリシアは倒れながら言う。


「奴は無敵かっ……?」

 俺は魔王ザンバックを睨みつける。


「フフフッとどめをさしてやろう鍵の勇者」

 魔王ザンバックはこちらを見て言う。


 その瞬間、キィが俺の前に立ちふさがる。

「マスターをやらせないっ!」


「キィ、危ない、どくんだっ!」


「どかない、キィ全て思い出した。自分の記憶、そして役割……」


「記憶が戻った? 自分の役割って……」


「キィの命の力を使って魔王を倒して封印する!」


「命……?何を言っているんだキィ!」


「マスター使って、キィの鍵を!」


 そう言うとキラキラとキィの体は輝きに満ちていく。


 光が踊り、キィ全体を包んでいく。


 マスターキィソードは解除され、キィに戻っていった。


「キィ、一体何を……」


 ……そして、キィは一本の大きな鍵となった。

 キィの身長ほどの大きさで空中に浮いている。


「キィ、これは……」


キアーヴェが言う。

「キィの役割はその命と引き換えに魔王を封印することだったのだ。鍵の勇者よキィの鍵を使え! キィの思いを無駄にするな!」


「そんな……! 命と引き換えになんてそんなことできるわけがないじゃないか!」


「やらなければ、わらわたちは全員やられる! ジョウ、使うんだキィの鍵を!」

 キアーヴェが叫ぶ。


「出来ないっ、俺には」

 キィには失われた記憶があった、それが自分の命と引き換えに魔王を封印することだったなんて。

 しかし、俺を好きと言ってくれたキィを失うなんて俺には耐えられない。


「マスター、キィの命、無駄にしないで」

 キィが頭にそう語りかけてくる。


「キィ……おまえだけ死なせはしない!」

 俺はそれを聞いて決意した。


 キィ……俺の命をかけてでも死なせない。


 魔王ザンバックはその光景を見て言う。

「フフフ……この上まだ何かする気か、鍵の姫の力を使うつもりか」


 俺はキィの鍵を右手で掴んだ。

 そして叫ぶ。


超遠隔施錠スーパーリモートロック

 キィの鍵は瞬間、膨大な光を放つ。


 光は魔王ザンバックめがけて飛んでいく、そして奴を包んだ。


「何、動けない? まさか命をかけた鍵の姫の力か!?」

 魔王ザンバックは叫ぶ。


 俺は一歩、また一歩魔王ザンバックへと近づいていく。


 鍵から放出された力はまるでキィの命と引き換えに放出されているようだった。


「ダメだ、これ以上は……キィの命が失われてしまう」

 魔王ザンバックにあと数歩まで近づいて俺は力の放出を諦めようとした。


「大丈夫だ、ジョウ」

 その時、俺の目の前で光が弾ける。

 

 ――そして 現れたのはなんと大賢者シュリセルだった。

「シュリセル、生きていたのか……!?」


「私は鍵の形となって生きながらえていたのだ」


「大丈夫って、どうして!? キィは命をかけているんだぞ」


「キィではなくお前自身の鍵の力を使うのだ!」


「俺自身の……そうか」


 俺は自分自身の胸に左手を当てる。

施錠解除アンロック!!」


 途端に眩い光が俺を包む。

 ――そのとき俺は鍵の女神の声を聞いた気がした。

施錠解除アンロック!」

 カチャリ、と音がして俺の中の最後の封印が解ける。


「キィだけでない、ジョウ、お前と私の力も使うのだ」

 そう言ってシュリセルは光となって輝き、また鍵へと変わっていった。


「私の力も使って!」

 アリシアが走り寄ってくる。


「あたいもな!」

 ステラもダメージを負った体で近づいてきてくれた。


「わらわの力も使え!」

 キアーヴェも俺に鍵の力を放出してくれる。


 光はアリシアとステラとキアーヴェの力も借りて輝く。


「ぬおおおおおっ!なんだこの力は鍵の姫の力だけでない、まさか鍵の勇者自身の力か……」


 魔王ザンバックはたまらず前に膝をつく


 俺は一歩、また一歩と近づきキィの鍵をついに直接、魔王ザンバックの胸につける。


「ここでおまえを倒し、封印する! 施錠ロック!!」


 光は一層輝きを増した。


 魔王ザンバックはキィの鍵の先端に吸い込まれていく。


「ヌオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


 魔王ザンバックはその姿を保てなくなり、歪み渦となり、鍵の先端へと収束していく。


 大気がパリパリと音を立てる。


 そして魔王は完全にその姿を消した。

 後には魔王が残した杖がカランと転がるのだった。


「やった、魔王を倒して……封印したぞ」

 俺はとたんに両ひざをつく。


「キィ……キィは?」


 俺は目の前に光と共に現れるキィを見た。


「……マスター、ありがとう。マスター自身の鍵の力のおかげでキィ、助かった」

 キィはそう言って俺に抱き着く。


「やった、良かった、キィ!!」


 アリシア、ステラ、キアーヴェはほっとしてその光景を見ている。


 しかし、異変に気づいたのはアリシアだった。


「いけない、あの魔王の杖が残っている!」


 アリシアは走り寄ってくる。


「よくもやってくれたな、鍵の勇者。最後におまえの命だけでも奪う!」

 魔王ザンバックの声がした。


「裁きのいかづち!」

 杖から、光が迸る。


「いけないっ、ジョウ君」


 その鋭い閃光が、俺たちをかばって走り寄ったアリシアの胸を貫いたのだった。

いよいよクライマックスです。あと少しだけおつき合いください。


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