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第69話 結界

 鍵の羅針盤はまっすぐに魔王の島へと導いていた。

 金色の鍵のドラゴン、キアーヴェは俺たちが落ちないようになるべくゆっくり飛んでくれていた。


 背中の鱗をつかみ俺達は夜の月明かりだけを頼りに東へ進んでいる。

「アリシア、キィ、ステラ、大丈夫か?」

 俺は声をかける。


「大丈夫よ」


「うん、マスター」


「問題なしや」


 三人とも大丈夫なようだ。 

 東の大地を抜けて海へ出る。


 俺は鍵の羅針盤を見る。


「もう少し南東寄りだキアーヴェ、右に進路を変えてくれ」


 そうして一、二時間も飛行していただろうか。


 遠くに島の影が見えてきた。


 切り立った崖に囲まれた禍々しい瘴気を放つ島だ。


「あれが魔王の居城がある島に間違いない」


 しかし、魔王の島に近づこうとしたその時、突然キアーヴェが空中に静止した。


「どうしたんだ、キアーヴェ」


「結界が張られている、このままでは上陸できない」


 キアーヴェはそう言った。


「そう言われて見てみると確かに薄い障壁(バリヤー)が島を包んでいた。


「なんてことや、せっかくここまで来たのに」

 ステラが叫ぶ。


「結界を消失させないと島には入れぬ」


 キアーヴェはドラゴン形態で空中に浮かんでいる。


「どうやら、あの島から結界が張られているようだ」


 キアーヴェが魔王の島から少し離れたところにある小島を竜の爪で指さす。

 

 言われてみるとそこから島全体を丸い結界が覆っているみたいだ。


「あの島に降りて結界を消失させないといけないみたいだな」

 俺は皆に小島への上陸を提案する。


「行きましょう」

 アリシアが言う。


 キアーヴェは離れ小島に上陸するのだった。


 小島と言えども結構な広さがあるその島は、魔族の瘴気に満ちていた。


 俺は結界が張り出している方向に歩き出す。

 そこには、ほこらがあり入り口の扉は閉められていた。


 ――しかし、その時だった。

「ついに来たか、鍵の勇者共」


 空気が震える、圧倒的な重圧が俺たちを襲ってきた。

 天空からバッサバッサと翼を広げ現れたのは、四天王の一人、ファイヤーフェニックスのザクスだった。

 

「また、会ったな。ファイヤーフェニックス」

 キアーヴェは再びザクスと相まみえた。


「鍵の勇者、わらわはこやつを相手にする、その隙に結界を解いてくれ!」


 キアーヴェはそう言うとファイヤーフェニックスのザクスに向かって、飛んでいく。

 空中で二体の巨大な生物の戦いが始まった。


 ザクスは巨大なくちばしでキアーヴェを攻撃する、キアーヴェは爪と牙で応戦していた。

 大気がパリパリと大きな音を立てた。


「今のうちに結界を解くぞ!」

 俺は祠に入ろうと足を踏み出した。


 しかし、そのとき何者かが俺たちの前に立ちふさがった。


 角が額から生えている、赤黒い肌の二体の魔神だった。

「我らはグレーターデーモン、魔王の島の結界を破らせはせぬぞ」


 自ら結界を破る方法がそのほこらにあると知らせたそのまぬけなグレーターデーモンに俺は言った。


「結界を破る方法はそこにあるということだな。いいのかそんなこと俺たちに教えて」


「問題ない、お前たちはここで死ぬのだからな!」

 

 グレーターデーモンは二体とも巨大な斧を持って俺たちの前に立ちふさがった。


 俺は両手を前に出し開き、握って唱える。

複数遠隔施錠マルチリモートロック!」


 光は二体の魔神に降り注ぐ。


「アリシア、頼む!」


 動きが止まった二体の魔神は、それでも反撃しようと動く。


 俺は鍵の力を強める。

 マスターキィソードには頼りたくない、もっと強い相手にとっておきたい。

 

 俺は二体の魔神を両手で動かし激しくお互いにぶつけ合う。


「グォ…………」

 たまらずグレーターデーモンはうめき声をあげる。


 そこをステラの電撃魔法ライトニングがダメージを与える。


 と同時にアリシアがオリハルコンソードで切りかかる。

 二体の魔神はアリシアに両断され倒された。


 そしてようやく俺はほこらの扉に手をかける。


施錠解除アンロック!」


 ほこらの扉は開いた。


 俺達は中に入る。


 すると、中は小部屋になっており、手のひらサイズの黒い宝石のような立方体が見えた。


「これが結界を作っているのか? 禍々しい瘴気だ」


 俺は黒い立方体に両手をやり、再び唱える。


施錠解除アンロック!!」


 瞬間、黒い立方体は粉々に砕けた。

 

 ――すると同時に俺達は地震におそわれる。


 慌てて外に出ると、魔王の島を覆っていた結界が晴れていた。


「やった、結界を破壊したぞ」


 俺達は歓喜の声をあげるのだった。

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