第67話 キィの告白
「なんで、勝手に城を抜け出したりしたんだ」
俺はキィが落ち着くのを待って問いかける。
「キィ、夜中にお腹が空いて目覚めたの、そしたらアリシアがいなくて……、外に出たらそしたらマスターとアリシアが……」
そう言って涙声になる。
まさかとは思ったが、昨日のアリシアとの口づけをキィに見られていただなんて……。
「キィ、昨日のあれはその……」
俺はしどろもどろになる。
「マスター、キィのこともういらないの?」
そんなことまでキィは言い出す。
「そんなことはない、そんなことはないよ」
「でもマスターはマスターキィソードがなくても戦えるんでしょ?」
キィは泣きながら言う。
「いや、マスターキィソードは頼りにしてるよ、俺の力だけじゃまだ魔王を倒せない」
「でもアリシアのことが好きなんでしょ?」
「それは……キィのことだって好きだよ」
「そうじゃない、そうじゃないよう」
キィはとうとう泣き出す。
俺は困ってしまい、キィが泣き止むのを待つしかなかった。
「……マスター、キィ、マスターのことが好き」
キィは泣き止んだと思ったらそんなことを口にし始めた。
俺は、自己嫌悪に陥っていた。
勝手にキィを妹のような存在と思い込み、知らず知らずマスターキィソードを引き出す道具のように扱っていたのかもしれない。
――キィだって誰かを好きになる立派なレディなのだと。
「キィ、すまない。俺はその気持ちには答えられない」
「アリシアがいるから?」
「そうだ、キィはアリシアのこと嫌いか」
「ううん、アリシアのことは好き、でもマスターはもっと好き」
「そうか、ありがとう」
それ以上かける言葉が見つからず俺は空を見上げるのだった。
その日の夕方、俺は城の敷地内でアリシア、ステラ、キアーヴェとキィを待っていた。
「キィが来たくないというなら諦めなきゃいけないかもしれない、キィなしで魔王の島へ乗り込むことになる」
俺はアリシア達にそう言った。
「何言うてんのや、キィが来なきゃマスターキィソードが使えないやないか? 魔王に勝つなんて無理やで」
ステラが反論する。
「キィちゃん、どうしちゃったの?」
アリシアが尋ねてくるが、俺は何も言えない。
夕日が沈もうとしていた。
「昼間は目立ちすぎるから夜のうちに魔王の島へ乗り込む」
俺は鍵の羅針盤を手にする。
キィはこのまま来ないのだろうか。
――そう思われたその時。
「マスター……」
キィが城内から現れた。
「マスター、ごめんなさい。キィもついていく」
「キィ……ありがとう」
俺はキィの頭の髪の毛をくしゃっと撫でる。
「よっしゃ、これで準備は出来たで、魔王の島へ殴り込みや」
ステラが杖を振り回す。
「準備が出来たなら、行くぞ」
キアーヴェはそう言って変身する。
見る見るうちに巨大な金色の竜の姿となった。
俺達はその大きな背に乗る。
鱗をしっかり掴んで落ちないようにする。
王が出立を見送ってくれた。
「鍵の勇者よ、必ずや魔王を打ち滅ぼしてくれ」
「はい、王様」
そうして俺達はついに魔王の島へと旅立つのだった。
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