第66話 キィの失踪
王城に泊まった次の日、俺達は魔王城がある島への出発の準備をしていた。
しかし、いつまで経ってもアリシアとキィが来ない。
ステラは待ちぼうけを食らわされていた。
キアーヴェは人間形態で待機している。
昨日は俺、アリシアとキィ、ステラ、キアーヴェは別々の部屋で泊まった。
――そこにようやくのこと、アリシアが現れた。
俺は昨日の夜のことを思い出して、顔を赤くする。
しかし、アリシアは珍しく慌てている様子だった。
そして驚くべき言葉を発した。
「大変よ、キィちゃんがどこにもいないの!」
「キィがいない? どういうことだ」
「わからない、朝起きたらキィちゃんの姿がなかったから先に食事でもとっているのかなと思ったんだけど……そんな様子もなかった」
「城で迷子になっているんじゃないか?」
「そう思って城の人にも聞いたけど誰も知らないって」
「じゃあ、まさか城の外に?」
「わからない……」
「とにかく門番に聞いてみよう!」
俺は取り急ぎ、城の門番にキィを見なかったか聞きに行く。
すると、早朝にキィが一人で城の外に出ていったという話だった。
「なんで止めなかったんですか!?」
「鍵の勇者殿のお使いだと言っていたので、早朝におかしいとは思ったのですが……」
城の門番は申し訳なさそうに言う。
鍵の勇者パーティといえども、キィは見た目は12歳ぐらいのか弱い少女だ。
城の外に安易に出した門番に憤りを覚えつつも俺とアリシア達はキィを探しに行くのだった。
キィは食いしん坊だ、食堂にいるかもしれないと思い、街中の食堂を探した。
しかし、キィの姿は見つからなかった。
俺達は手分けをして探すことにした。
アリシアとステラは街中、俺は街の外を探すことにする。
魔物に襲われていないといいが……。
俺は祈るような気持ちだった。
幼い少女の足だ、そんなに遠くへは行ってないはずだ。
俺は、王都の外れを探す。
すると、キィの声が聞こえた気がした。
なんとなくだが、鍵の勇者としての勘だろうか。
街はずれの遺跡へと辿り着く。
そこには五体のゴブリンに取り囲まれて怯えているキィの姿があった。
「キィ……!」
「マスター!」
キィはこちらを見て叫ぶ。
俺はとっさに左手を伸ばし手のひらを開けて、閉じた。
「複数遠隔施錠!」
光が迸り、天空から降り注ぐ。
まさにキィに襲い掛かろうとしていたゴブリンに降り注ぐ。
俺は動きを止めたゴブリンにミスリルソードで右手で切りかかる。
一、二、三……四…五!
俺は一瞬のうちにゴブリン五体を切り伏せた。
「グアアッ!」
うめき声をあげゴブリン共は倒れた。
「キィ、大丈夫か?」
俺はキィの無事を確かめる。
「うう、マスター、キィ怖かったー!」
そう言ってキィは俺に抱き着いた。
・面白い!
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