第65話 その頃のスライドのパーティ(13)
……一方その頃スライドのパーティは。
「やったぁ、お宝だー!!」
スライドパーティは一面の宝の山に小躍りしていた。
「ジョウの野郎、やっぱり騙してたんだ。何が黒の転移石は魔王の島へ繋がっている、だ」
スライドは宝の山にすっかり気を良くしていた。
「見て見て、これ転移石よ!」
ミレイが青い宝石を発見する。
スライド達が転移した部屋は、全体が金銀財宝に埋め尽くされていた。
「こっちにはサファイアのネックレスがありますぜ」
モラドがニッシッシと笑いながらネックレスを身に着ける。
「これで借金生活ともおさらばだぜ」
エドガーが宝石を両手いっぱいに持って言う。
「うーん、しかしここは一体どこなんじゃろうのう?」
メルビルが首をかしげる。
「どこであろうと関係ねえ、ここのお宝は全部俺のものだ」
……そう、叫んで騒いでいたその時。
正面の扉が開いた。
そして額から角を生やした巨大な赤黒い皮膚の魔物が入ってくる。
全身から瘴気を発している明らかに高レベル帯の魔物だった。
「我はグレーターデーモン、魔王様の宝物殿に入ってくるとはとんだ度胸のある人間どももいたものだな」
「ま、魔王――――!?」
それを聞いてスライド達は取り乱す。
「ま、魔王って、じゃあジョウの言うことは本当だったってのか? 魔王の宝物殿に転移しちまったってことか」
「落ち着いて、この転移石があれば逃げられるわ。我らを転移させたまえ、転移――!!」
ミレイが転移石を高く掲げる。
しかし、何も起こらない。
「愚かな人間め、この魔王の城は魔王様の出す瘴気によって転移石無効化エリアとなっているのだ」
「なぬ、じゃあ黒の転移石は特別だったってことか?」
「黒の転移石を使ってきたのか、黒の転移石は魔王様の瘴気で出来ているのでな。しかし、わざわざやられに来るとは愚かなり人間どもよ」
「ひぇ――っ、すみません、すみません!」
「謝っても無駄だ、魔王様の宝物殿を荒らす奴は許さん」
「違います、違います。宝物殿を荒らすなんてそんな気ありませんでした――! 全て鍵の勇者が悪いんです! 俺達は騙されてここに来たんです」
スライドが都合のいいことを言う。
「何、おまえ達、鍵の勇者の関係者なのか?」
「いや、関係っていうかそのなんというか……」
「グハハハッ、それは都合がいい。しかし、とりあえず魔王様の宝物殿を荒らした罰は受けてもらう」
そう言うと、その魔神は大きな斧を取り出した。
「ひえええええええええええええっ!!」
スライド達の悲鳴が魔王の城の宝物殿にこだまするのだった。
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