第64話 口づけ
その夜、俺達はブレイブ王城に泊った。
アクアドラゴン、リュウセイを退けた経緯と、黒の転移石、そして鍵のドラゴン、キアーヴェのことを王様に報告したところ、城で疲れを癒してから旅立つことを勧められたからだ。
俺達は城の豪勢な一室で眠りにつくことになった。
……が、俺はなかなか寝付けなかった。
なんとなく、部屋から出て王宮の廊下を歩いていた。
ふと見ると、バルコニーに誰かいる。
――アリシアだった。
ピンクの寝間着を着て、バルコニーからの風を受けている。
金色の髪が風になびきキラキラと輝いて見えた。俺は美しいと思った。
ふと、視線に気づいたのかアリシアがこちらに振り返る。
「ジョウ君……?」
「アリシア……」
「ジョウ君も起きてたの?」
「ああ……なんか寝付けなくてな」
二人でバルコニーに立つ、涼しくそよぐ風が心地良い。
アリシアが話し始める。
「私、ジョウ君がリュウセイとの戦いの後、意識を失っている間、ずっと怖かった……このままジョウ君が目を覚まさない、死んでしまうじゃないかって」
「俺はそう簡単には死なないよ」
「うん……、だけど今度の魔王との戦いはきっと命をかけた死闘になるわ」
「ああ、そうだな……」
二人で見つめ合う。
「俺、最後の決戦の前にずっとアリシアに言えなかった言葉があるんだ」
「何? ジョウ君」
口の中が乾いた。俺はやっとのことで声に出す。
「アリシア、愛してる……」
俺はやっとずっと言えなかった言葉をアリシアに告げた。
それを聞くとアリシアは目を潤ませた。
「ジョウ君、私も愛してる……」
俺とアリシアは正面から見つめ合う。
アリシアのアイスブルーの瞳が俺を見ている。
「アリシア……」
「ジョウ君……」
俺とアリシアはそっと口づけを交わす。
「お願い、約束して、死なないって」
「ああ、アリシアも……」
俺たちはそう約束して固く抱き合った。
「ううん、ジョウ君は死なせない、私が守るから」
「俺も君を守るよ」
窓の外の王都の光景は、まるで星のように煌めき二人を見ている気がした。
俺はこの時間を永遠に施錠したい誘惑にかられるのだった。
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