第62話 その頃のスライドのパーティ(12)
……一方その頃スライドのパーティは。
ジョウの予想通り神殿に来ていた。
「一応神様に祈る俺達って意外にまじめだよなー」
エドガーが言う。
「まあ、俺は神なんて信じてねえけどな、信じるのは己のみ!なんちて」
スライドはおどける。
「そんなこと言って、神様のバチが当たっても知らないからね、スライド」
そうは言いつつもバチが当たるとは思ってもみないミレイだった。
神殿での礼拝を終えてパーティは外に出る。神殿がある丘の上の大木の下でスライド達は休んでいた。
「それはそうと本当に黒の転移石使うんですか~スライドの旦那」
モラドが確かめるように言う。
「当ったり前だろ! 質屋でも買い取ってくれなかったんだし。まあ誰か、勇敢な冒険者が買い取ってくれると言うならば買い取らせてやってもいいがな」
「とか言って、本当はちょっと怖いんでしょスライド」
ミレイがおちょくる。
しかし、スライドは図星だといった表情を浮かべる。
「黒ってのがな。ちょっと気になるよな。まさか宝島じゃなく本当に魔王の島へ行っちゃったりして」
スライドが冗談を言うが、誰も笑っていない。
「やっぱり止めておこうよ、スライド。安くても買い取ってくれる質屋もあるかもしれないしさ」
ミレイが諭すように言う。
「バッ、馬鹿言うなよ。これを見つけるのにどれだけ苦労したと思ってるんだ、借金だってあるんだぞ」
裏口を使った分、見つけるのにはそんなに苦労していないのだがスライドは反論した。
「それに魔王だかなんだか知らねえが、いざとなったら俺のこのロングソードの錆にしてやる」
スライドはロングソードを握って振り回した。
「危なっ、やめなよスライド」
「あっ、すまん」
そう言うミレイに素直に応じるスライドだった。
ロングソードを鞘に納める。
――そのときだった。
「待てよ、何だかこっちを目指して誰かくるぜ」
エドガ―が神殿がある丘の上から下を見た。
「あいつ、どっかで見たことが……」
スライドは目を凝らしてそれが誰だか知って驚く。
「ジョウ……、ジョウ・ローレットの野郎じゃねえか!?」
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