第6話 開かずの扉の迷宮(3)
「――じゃあ、いくよ」
「うん」
アリシアは答える。
俺は壁の鍵穴に手をつけ、唱える。
「施錠解除!」
まばゆい光が当たりを照らす。
そして現れたのは金属製の扉だった、ギィと開いていく。
俺たちは無言で中に入り込む。
そこはひらけた空間だった。
天井は高く、丸く大きな部屋、いや、広場といったほうがいいか―――だった。
広場の中央付近に向けて足を運ぶ。
明らかに今までとは異質な空気。
何とも言えない感覚と緊張が俺たちを包んでいた。
――そのとき、
「ジョウ君、扉が!」
振り返ると、いま入ってきた扉があとかたもなくなくなっていた。
「扉が、消えた?」
次の瞬間、ウーウーとどこからともなく大きな音が鳴った。
何かを警告しているみたいだ。
部屋の中央にはいつのまにか魔法陣が現れその下から複数体の何かがせりあがってくる。
巨大な土くれと鉄の塊、人形のようなそれは……。
「ゴーレムだわ!五体も。しかも一体はアイアンゴーレムよ!」
あせったようなアリシアの声が聞こえる。
ゴーレムが五体というだけでもやっかいなのに、その中のアイアンゴーレムは高レベル帯の魔物だ。
俺も叫ぶ。
「これも伝承の通りなのか!?」
「古の封印を守る門番がいるとされているわ!でもゴーレムが複数体なんて!」
アリシアは本気であせっているようだ。
「ごめん!ジョウ君のことは私が守ると言ったけれど、この数を相手にジョウ君を守り切れる自信がない……」
俺は、アリシアのあせりの理由を理解した、俺のことを本気で心配してくれているのだ。
「俺だって、冒険者の端くれだ、自分の身は自分で守れる!」
俺は剣を抜いた。
「ダメ!」
アリシアが叫ぶ。
「ジョウ君なんかアイアンゴーレムに襲われたら一発よ。ここはこれを使うしかない。」
アリシアが懐から何かを取り出す。
それは、あの転移石だった。
「おい、いいのか!貴重な転移石を使って!?」
俺は叫んだ。
「いいの、こういう時のために持ってきたんだから!」
アリシアは息を吐きだす。
そして転移石を持った手を高く上にあげる。
「我らをこの場所から転移させたまえ、転移!!」
大きな声で言い放つ。
――しかし。
何も起きない。転移石は光を失ったまま何の反応も見せなかった。
「転移が出来ない!まさかあの魔法陣……転移石無効化エリア!?」
驚きのあまり、アリシアは叫んだ。
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