第53話 暗転
俺はマスターキィソードをキィに戻し、一人で街はずれの荒野に向かった。
街はずれではアクアドラゴンのリュウセイと直属の部下リドラが待っていた。
リドラは角を生やした人の姿になっていた。
「よく来たな、鍵の勇者。逃げ出すかと思ったがな」
リュウセイは余裕の笑みを浮かべる。
「アリシアを離せ!」
アリシアはリドラに捕らえられていた。縄でぐるぐる巻きに縛られている。
「ジョウ君……!」
「フフフッ、鍵の剣の力なしに私を倒せるかな」
俺はオリハルコンソードをかざす。
「やってみなくちゃ、わからないぞ」
「リュウセイ様、鍵の剣がないこやつ程度、四天王がお相手するまでもありません。私におまかせください」
そう言って、リドラは小さなドラゴンの姿に変わり前に出る。
――とにかくアリシアをどうにか助けないと!
俺は覚悟を決めた。
向かってくるリドラに対して左手を開き握って唱える。
「遠隔施錠!」
迸る光はリドラを包む。
「ふふ、その程度の攻撃など通じないと……む?」
光はリドラを包んで離さない。
「なぜだ、鍵の剣がないというのに、この力は……」
俺自身、驚きに満ちていた。いつの間にか俺の素の鍵の力も強くなっていたのだ。
キィを助けた開かずの扉の迷宮、鍵の村の神殿、鍵のドラゴンの封印を解いたとき。
施錠解除と光と共に唱えられた鍵の女神の力を思い出した。
――俺自身の力もあれで覚醒していたのか?
俺は、リドラに近づきオリハルコンソードでその腕を切りつける。
「グギャアアアアアッ」
リドラはたまらず悲鳴をあげる。
と同時に鍵の力の拘束が解ける。
「よくもやってくれたな……鍵の勇者!」
「アリシアは返してもらう!」
そして俺は自分自身に向けて唱えた。
「施錠解除!」
――瞬間、光が俺を包む。
自分自身の鍵の封印を自分で解いたのだ。
その聖なる光にリドラとリュウセイは目がくらむ。
「グオオオオッ?」
「なんだ、この光は一体」
チャンスだ!
「遠隔施錠解除!」
そう言うと光は遠くのアリシアを包み、捕らわれていた縄の拘束がバッと解かれる。
アリシアは敵が目がくらんでいる隙にこちらに走り寄ってくる。
「アリシア!」
「ありがとうジョウ君、絶対来てくれると思ってたわ!」
「当り前だろ!」
そう言って俺達は抱き合った。
「アリシア、オリハルコンソードを、やっぱり俺じゃうまく扱えない!」
「わかったわ!」
アリシアはオリハルコンソードを手にする。
その様子を見てリュウセイは言う。
「まさかその剣の輝き、オリハルコンソードか!どうりでブゲンがやられたわけだ」
「ぬぅ、よくもやってくれたな、しかしリュウセイ様がいるこちらの方がまだ有利だ」
リドラが目くらましから解放されてこちらを睨みつける。
リドラは大きく口を開ける。
「息吹!!」
巨大なエネルギーの塊が俺とアリシアを襲う。
「遠隔施錠!」
俺はそのエネルギーの塊を空中で止める。
エネルギーは消え去っていく。
「アリシア、リドラを頼む!俺はリュウセイを食い止める」
「大丈夫なの!? 四天王相手に!」
「大丈夫だ!」
アリシアはリドラに向かっていく。
リドラに近づくアリシアに、リュウセイも攻撃を仕掛けようとする。
俺は両手を開き閉じて再び唱えた。
「遠隔施錠!」
光はリュウセイに降り注ぎ、リュウセイの動きが停止する。
「バカな、鍵の剣がないというのに……?」
リュウセイは信じられないという顔で吠えた。
アリシアはその隙に、リドラと対決する。
リドラは鋭い爪と牙でアリシアを襲うがアリシアは華麗に避けて見せる。
「剣があれば、あなたなんて!」
アリシアはオリハルコンソードでリトルドラゴンのリドラの硬い皮膚を切り裂いていく。
「グオオオオオアアアアッ、リュウセイさま……!!」
リドラは致命傷を受けて倒れる。
いよいよアリシアの攻撃がリュウセイを捉えようとしたその時。
突如、世界は暗転した。
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