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第50話 再び王都へ

 その夜、俺達はアリシアの屋敷に泊まった。

 

 俺は寝付けずなんとなく起きてアリシア邸の廊下からバルコニーに出て遠くの森や星や月を眺めていた。

 すると誰かが近づいてくる気配がした。


 それはアリシアだった。ピンクの寝間着に着替えているアリシアだったが、月の光に照らされて淡く金色の髪の毛が光っていた。俺は綺麗だと思った。


「ジョウ君……眠れないの?」


「ああ、なんとなく、な」


「ジョウ君、昼間のこと気にしてる?」


「昼間……、ああ婚約者のことか?」


 アリシアは俺の横に来て言う。

「彼はあくまで親が決めた許嫁なの。だから気にしないで」


 そうは言っても気にしないなんて無理だ。

「アリシアの方こそ、俺に気を使わなくていいんだよ」

 俺はぶっきらぼうにそう答えてしまったと思う。


「ジョウ君、本気でそんなこと言ってるの? 私の気持ちはシーモアにはないわ」


「アリシア……」


「前にも聞いたわよね。ジョウ君はキィちゃんをどう思ってるの?」


「かわいい妹だよ」


「ステラは?」


「大切な仲間だ」


「……私は?」

 そう聞かれて俺は戸惑う。しかし気持ちは一つだ。


「俺は……アリシアのことが……」

アイスブルーの瞳がまっすぐにこちらを見ている。


「マスター……アリシアと何してるの?」

 ――そのとき、突如キィの声がした。


 キィが寝間着のまま部屋から出てきていた。

 俺は不意をつかれて答えた。


「べ、別になんでもないんだ……キィ、あははは」

 アリシアも少し慌ててるようだ。

「キィちゃん、起きちゃったの?」


「アリシアが起きたらいなかったから……マスター、キィもお話しする!」


 トテトテと歩いて俺達の間にちょんと立つ。


 俺はアリシアに言うべき言葉をまたも言えないのだった。




 次の日、俺達は馬車で王都に旅立つ準備をしていた。


 すると、シーモアがやってきた。

「アリシア、もう王都へ発ってしまうのかい?」


「ええ、シーモア。すまないけれど私達は魔王退治に忙しいの。あなたにはわからないでしょうけど」


「そんなことはない、僕もついてく」

 シーモアはとんでもないことを言いだした。


「聞いてなかったの、私たちは魔王軍四天王にも狙われてるの。危ない目にあうかもしれないのよ」

 アリシアはそれとなく諭す。


「鍵の勇者だかなんだか知らないが、男と一緒に冒険するなんて心配だよ」


「何を言い出すのよ、シーモア」

 アリシアはシーモアの扱いに困っているようだ。


「僕もついていく、馬車だって用意したんだ」

 シーモアは豪勢な馬車を持っていた。


「仕方ないわ、ついていくのは勝手よ。ただし、私は自分の家の馬車に乗るわ」

 アリシアはシーモアに冷たい言葉を投げかける。


「僕の馬車のほうが豪勢で乗り心地もいいよ」

 シーモアは文句を言う。


「残念だけど私は鍵の勇者パーティの一員なの、ジョウ君と一緒に行くわ」


 シーモアはしばらく憤慨していたが、諦めて自分の馬車でついてくることにしたようだ。


「それでは、行ってきますお母様、お父様」


「うむ、鍵の勇者パーティの一員として立派に責務を果たすのだ」

 アリシアの父親が言う。


「シーモアのこと怒らないであげて、彼も彼なりにアリシアのことを気にかけてるのよ。でも親同士が決めた結婚だけど最後はあなたの気持ち次第と私は考えているわ」

 アリシアの母親はそうアリシアを諭す。 


「はい……」

 アリシアはそう答えた。


 そうして俺たちとシーモアは一路王都に向かうのだった。

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