第5話 開かずの扉の迷宮(2)
その宝箱はよく見ると蓋が少し開いていた。
中には宝石らしきものが見える。
「あっ、この宝箱開いてるよ、解錠しなくてもいいみたい!」
アリシアが宝箱に近づいていく。
その瞬間、俺は嫌な予感がした。
いままで、怪物や罠がなかったことで感覚がアリシアと俺、どちらも麻痺していたのかもしれない。
『開かずの扉の迷宮』で正解は鍵のかかっている扉だ、つまり鍵が開いているっていうことは……。
「アリシア、気をつけろ!」
その言葉と同時だった、
宝箱が自動的に開き、中から出てきた無数の手がアリシアを襲った。
「人食い箱だ!」
瞬間、アリシアは剣を抜き、そのうちの数本を切り落とす。
しかし、残った手がアリシアを捕まえようとする。
俺は奥の手を繰り出す。
右手を大きく開き、次の瞬間、手を握る。
迸る閃光は、アリシアに次の攻撃を繰り出そうとしていた宝箱を包む。
「遠隔施錠!」
瞬間、宝箱の蓋は閉じ施錠された。
そしてしばらく中の手だろうか振動していたが、やがて動かなくなった。
アリシアは剣を構えた状態で一瞬、何が起こったのかわからず呆けていた。
「ごめん、油断してた。人食い箱ごときに遅れをとるなんて……」
アリシアが駆け寄ってくる。
「でも、今の何!あれも鍵魔法?直に触らなくてもいいの?」
「ああ、遠くの鍵も閉められる奥の手さ、ちょっと疲れるからあまり使わないんだけど。相手が人食い箱で良かった……良かったってことはないか」
フフフ……。
二人して笑う。
「でも、助けられちゃったね。ありがとう。しかし私があんな初歩的な手にひっかかるなんて」
アリシアが礼を言う。
「いや、A級冒険者なら人食い箱ぐらい余裕だろ、余計なことしたかな」
「それでも、ありがとう」
アリシアに瞳をまっすぐに見つめられ言われて、俺はドギマギした。
「でも、こんな罠があるなんていよいよ大詰めらしいな。」
「うん……」
俺達は四角い部屋の中を改めて見渡した。
扉らしきものはもうない。
「おかしいな……」
アリシアが呟く。
「とにかくもう一度部屋の中を調べてみよう」
俺達は罠に気をつけながら部屋の中を探索した。
そして――
「あった!」
アリシアが叫んだ。
俺もすぐそこに駆け付ける。
正面の壁の、俺の腰ぐらいの位置にわかりずらいが穴があった。
「これは……」
「鍵穴、かな?」
アリシアが言う。
二人は次の瞬間、同じ考えにいきつく。
「「隠し扉だ!」」
同時に叫んだ。
・面白い!
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