第46話 アリシアの戦い
「ヌハハハハハハハハハッ、待ちわびたぞ」
ブゲンは律義にも外の岩山で待っていた。
「どうもこの迷宮には魔物にとって不快な空気がながれていて中には入れなかったからな」
そう言い人の姿からグランドタートル、巨大な亀の姿へと変化していった。
「勝負だ、鍵の勇者!」
俺はあらかじめ出しておいたマスターキィソードを手に取る。
「望むところだ!」
「私の甲羅は鉄よりも硬いぞ。おまえ達に傷つけることができるかな! ストーン・バースト!!」
巨大な岩の弾丸が打ち出される。
ステラは唱える。
「障壁!!」
そうすると杖の先についた魔法の石から障壁が打ち出される。
「これは、力が倍になった気分や!」
ステラは杖の威力に叫んだ。
「キィは障壁の奥に隠れてるんだ!」
キィは後方に下がる。
障壁は岩の弾丸を完全に防いでいた。
俺はそのすきにマスターキィソードをブゲンに向けて唱える。
「マスターキィソード、遠隔施錠!」
刹那、閃光がブゲンを襲う。
「ム、動けぬ……!これが鍵の勇者の力か……しかし、私を傷つけられねば意味はない」
俺はマスターキィソードを使って相手を揺さぶろうとするが硬くて動かない。
「俺じゃだめだ、頼むアリシア!!」
アリシアはその隙を見て、一気に駆け上がる。
オリハルコンソードが日の光にきらりと光った。
次の瞬間、アリシアの剣はブゲンの甲羅を十字に切った。
「フ……おろかな、効かぬと言ったであろ、ム……?」
余裕を見せていたブゲンだが次の瞬間、その余裕は驚きに変わった。
「まさか、オリハルコンソード。伝説の武具かっ……」
ブゲンの甲羅は十字に傷が入っていた。
「ぬぅ、よくも私に傷を負わせたな! ストーン・エクスプロージョン!!」
周囲の岩山が大爆発した。
障壁で守られてる俺達は大丈夫だったが、アリシアが弾け飛んだ岩の餌食になった。
「いけない!複数遠隔施錠!!」
俺は岩によって壁に打ち付けられる直前にアリシアと岩を鍵の力で空中に留める。
「ありがとう、ジョウ君!」
アリシアは間一髪、助かった。岩とともに地上に降下する。
「やったわね、たあああああああっ!」
アリシアの反撃が始まる。
動けないブゲンに斬撃を打ち出していく。
「ぬぅ、卑怯なり、鍵の力で動けぬからといって……」
グランドタートルの甲羅は傷つけられ剥がれていく。
その時、アリシアは急に攻撃をやめる。
「どうしたんだ、アリシア! とどめを!!」
俺は叫ぶ。
「ううん、ジョウ君。鍵の勇者の力を止めて」
「何を言い出すんだ!」
「このブゲンという魔物、軍団を引き連れずに一人で私たちに正々堂々と挑んできたわ」
アリシアはオリハルコンソードを持ったまま言う。
「ハンデなしに一対一で戦いたい!」
アリシアが叫ぶ。
「何言い出すんや! もう勝ったも同然やないか!?」
ステラも言う。
「この先、こんな状況で一対一で勝てないようならどのみち未来はないわ」
アリシアが決意の表情で答える。
俺はアリシアの表情にその言葉は本気だと悟る。
「いいんだな、鍵の力を解いてしまっても……」
「うん、お願い」
「信じてるよ、アリシア」
俺は鍵の力を解いた。
「むぅ、敵ながらあっぱれなり。しかし後悔しても遅いぞ」
ブゲンはグランドタートルの姿から人の姿へと変化していく。
「勝負よ!」
アリシアは剣を構える
「立ち合いか、笑止……!」
ブゲンは一直線にアリシアに迫ってくる。
アリシアも、相手に向かって全力で走っていった。
それは一瞬だった。
――――お互いの姿が交差する。
アリシアがフラッと片膝をつく。
俺は叫ぶ。
「アリシアっ……!?」
しかし次の瞬間、ブゲンは
「ぐふっ、見事だ……」
と言い、血を吐いて倒れこんだ。
・面白い!
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