第44話 ブゲン現る
「ここが、万の扉の迷宮の入口か……」
俺達は北の山脈の万の扉の迷宮の入口に来ていた。
険しい山道を登った先にその扉はあった。
あたりは灰、茶、黒などさまざまな色合いが層になってそびえる岩壁に囲まれている。
ところどころ苔が生えた木の幹が見られた。
扉は豪勢な装飾がなされている。
「開けるぞ、施錠解除……!」
そう言いかけたときだった。
突然地面が揺れた。
「なんだ、地震かっ……!」
突然のことに俺達は驚く。
「地震じゃないわ、あれを見て!」
アリシアが近くの地面を指さした。
「ヌハハハハハハハハハッ! 来たか鍵の勇者!」
何者かが地中からボコボコっと嘲笑うようにせり出してきた。
「我が名は、グランドタートルのブゲン! 魔王軍四天王の一人なりっ」
現れたのは巨大な亀の化け物だった。
そう言うなりブゲンは人の形に姿を変えていく。
赤髪に緑の体をした男になった。
「よくもコビャックをやってくれたな。だが大賢者がいない今、お前たちでは俺には勝てまい」
そう言って手をこちらに向ける。
「ストーン・バースト!!」
岩が爆発してこちらに向かってくきた。
ステラがすかさず
「危ない! 障壁」
を唱える。
見えない障壁が岩の嵐から俺達を守ってくれている。
その岩の止む一瞬の間隙をついてアリシアがブゲンに向かっていく。
「たああああああっ!」
アリシアはミスリルソードを奴の腕に切り伏せた!
……が、切れない。
「なんてこと、硬すぎる!」
ブゲンはそのまま腕を振り下ろした!
アリシアはこちらの方に吹き飛んでくる。
俺は、なんとかアリシアを受け止めるが、勢いで二人とも奥の岩壁にぶつかる。
「ぐはっ」
俺は思わず声が漏れる。
「くっ……いけない、このままじゃやられるわ! いったん迷宮の中に避難しましょう!」
なんとか動けるアリシアが提案する。
俺は同意する。
「わかった! 施錠解除……!!」
迷宮の扉が開く。
俺達は一目散に中に逃げ込んだ。
そして施錠で扉を閉める。
「むう、逃げるとは卑怯なり、しかしいずれ出てこねばなるまい、そのときこそ真のおまえたちの終わりの時だ。それまでかりそめの命を楽しむがよい」
ブゲンはそう扉の外で嘲笑っている。
「くそっ、俺たちがここに来ることはばれていたみたいだな」
俺は迷宮の中で呟いた。
「ブゲンと言ったわね、やつもかなりの難敵ね、それにしても硬すぎる、ドワーフ王国で鍛えてもらったのに」
アリシアのミスリルソードは歯がこぼれていた。
恐ろしい硬度の体だ、ブゲンの攻略法なんてあるのだろうか。
「さて、こらからどないするん?」
ステラが当たりを見廻す。
「とりあえず、奥に進むしかない……けど」
俺は周囲を見て迷う。
五つの扉が目の前を阻んでいた。
「どれが正解なんだ?」
「とりあえず、開けていくしかないね」
アリシアが言う。
俺は罠に気をつけつつもとりあえず、一番右の扉を右手で施錠解除する。
しかし、その先の部屋はさらに十の扉で分かれていた。
「これは……」
俺は愕然として言う。
「さすが万の扉の迷宮だけあって扉だらけやな」
ステラはそう言ってのけたのだった。
「こんな鍵、その都度開けてられないぞ」
「でも、他にどんな手があるの?」
「考えがある、キィ、マスターキィソードを」
「はい、マスター」
キィは走り寄ってくる。
俺はキィの胸に手をかざし施錠解除する。
光と共にマスターキィソードが現れた。
俺は柄を手にし、一気に引き抜く。
「入り口は閉じたままにしないとな……マスターキィソード、複数遠隔施錠解除!!」
途端に前後の扉は全部、ダダダダダダダダダダダダダダダダダダッと開いていった。
「ほわーっ、凄いな。」
ステラが感心したように言う。
「これで扉を開ける手間はなくなった」
俺はそう言いながら片膝をつく。
「ジョウ君、大丈夫?」
アリシアが心配してくれる。
「ああ、なんとか。問題はどの道を進むかだな。」
すると、キィがまた導かれるように進みだす。
「こっち……」
「キィ、道がわかるのか?」
俺たちはキィに導かれるように歩き出すのだった。
・面白い!
という方は広告下の☆☆☆☆☆からの評価、ブックマークへの登録をお願いいたします。
執筆の励みになります!