第42話 激闘
「わらわは、キアーヴェ。ドワーフ王国の守り神、鍵のドラゴンなり」
俺達を見下ろし、そう金色のドラゴンは喋った。
「鍵のドラゴン……おまえも鍵の一族なのか?」
俺はドラゴンを見上げて言う。
「鍵の勇者よ、封印を解いてくれて礼を言う」
キアーヴェはそう言うと大きく翼を羽ばたかせた。
「四天王ファイヤーフェニックスよ、もう好き勝手にはさせんぞ」
その羽ばたきに飛ばされそうになり、必死に岩にしがみつく俺とゴルドバ王と近衛兵たち。
鍵のドラゴンはまっすぐザクスのほうへ飛んでいく。
「ぬぅ、鍵のドラゴンか!三百年ぶりだな」
金色のドラゴンを見てザクスは唸る。
「許さんぞ、ザクス!」
キアーヴェはザクスに体当たりをかます。
たまらずザクスは街の外へ飛ばされる。
そうして二つの巨大な生物による格闘がはじまった。
爪とくちばしがお互いを削り合う。
ズシンズシンと大きな地響きがし、パリパリと大気が震える。
俺とゴルドバ王達はその迫力に圧倒されて見ているしかできなかった。
キアーヴェとザクスの戦いは互角に見えた。
しかし、配下のファイヤーバードがザクスに加勢し始め、多少キアーヴェのほうが押されてきている。
そのときだった。
「マスター!」
キィとアリシア、ステラが岩山を上ってきた。
「城の人に聞いたらこちらに向かったって、キィちゃんを連れてきたわ」
アリシアが言う。
「なんやあの二匹の怪獣は?」
ステラが呆然として暴れている巨大なドラゴンとファイヤーフェニックスのほうを指す。
「金色のドラゴンがドワーフの鍵の守り神のドラゴン、キアーヴェだ、俺達の味方だよ」
アリシアがドワーフ王の方を見て言う。
「私は鍵の勇者のパーティの一員、アリシア・グーテンベルクです。ドワーフ王ゴルドバ様ですね、加勢しに来ました」
「グーテンベルク家のお嬢様か。ありがたい、キアーヴェに加勢を頼む」
ゴルドバ王は言う。
「はい、でもこの距離じゃ私では無理ね、せっかくミスリルソードを鍛えてもらったけど……」
アリシアはキィの方を振り向く。
「キィちゃんお願い」
とアリシアは言い、キィを前に出す。
俺はキィの胸元に手をかざし唱える。
「施錠解除!」
すると光に包まれた鍵の剣、マスターキィソードが現れる。
俺は遠くの二体の格闘しているキアーヴェとザクスを見る。
「距離があるな……とりあえず、キアーヴェのそばをうろちょろしているファイヤーバードを叩く!」
そう言って、マスターキィソードを天高くかかげる。
「マスターキィソード、複数遠隔施錠!」
まっすぐ遠くに光は天に放たれキアーヴェの周りを飛び回っていた十数匹のファイヤーバードを捉える。
その機を逃さず、キアーヴェは爪や牙でファイヤーバードを蹴散らしていく。
それを見た、ザクスは
「ええい、いまいましい、鍵の力か!」
と飛び上がったかと思うと
「鍵のドラゴンと鍵の勇者、両方相手にはさすがにできん。ここは引かせてもらう」
そう言い飛び去ろうとする。
「逃がすか……! 複数遠隔施錠……!」
そこで俺は片膝をつく。
「ジョウ君、大丈夫?」
アリシアが心配して声をかけてくる。
そのすきにザクスは飛び去って行ってしまった。
「ここのところ、力を使いすぎてしまっていたのかもしれない」
俺は肩で息をしながらそれを悔しそうに見るしか出来なかった。
ドワーフ王国の城下街の炎は水魔法による消火活動もあり、下火になっていた。
キアーヴェ――金色の鍵のドラゴンは俺達のもとに戻ってきて言う。
「鍵の勇者よ、加勢ありがとう。しかしファイヤーフェニックスは逃がしてしまった」
「構わないよ。いずれまた戦うことになる。そのときも加勢してくれるんだろ?」
俺はキアーヴェを見上げて言う。
「そうしたいところだが、わらわも長い封印のせいで力を失っている」
そう言い、光となり金色のドラゴンは消えていく。
「この鍵を肌身離さず持っていてくれ、必要な時には必ず助けに行く」
そう言い、光となって消えたキアーヴェのあとには金色に光る鍵が残されていた。
――その後、俺達はゴルドバ王から感謝の言葉をかけられ活躍を称えられた。
そして俺達は目的の万の扉の迷宮の場所を教えられ一路そこへと急ぐことになったのだった。
・面白い!
という方は広告下の☆☆☆☆☆からの評価、ブックマークへの登録をお願いいたします。
執筆の励みになります!