第4話 開かずの扉の迷宮(1)
「どう、開きそう?」
『開かずの扉の迷宮』と呼ばれているらしいその迷宮の入り口は古ぼけた鉄のような素材で作られた大きな扉だった。扉というより門に近い。
――鉄のような、とは正確には鉄ではないということだ。古代の魔法文明が作った鉄のように硬くて重い魔法の素材だった。
「どうかな?やってみる、たぶん大丈夫だ」
俺は右手を扉につけて落ち着いて言葉を唱える。
「施錠解除!」
その瞬間当たりが眩い光包まれた。そして次の瞬間ゴオォォォという音がして扉――門がゆっくりと内側に開いていった。
「やった、開いたわ!さすがだね、ジョウ君!」
「たいしたことじゃないよ。」
照れて思わず頬をかく。
そして門の中を覗き込む。
中には暗くまっすぐな道が奥まで長く伸びていた。
「じゃっ、行こうか?」
アリシアが張り切って迷宮の中に足を踏み入れた。
「ちょっと待て、本当に行くのか?」
「何よ、ここに来て怖気づいたの?」
「いや、そんなことは……ただ二人だけでダンジョン探索なんていくら君がA級のライセンスを持ってる冒険者とはいえ」
「心配しなくてもジョウ君のことは私が守るわ!それに危なくなったら転移石があるし」
「そうか……わかったよ」
俺も覚悟を決めた。
迷宮の中は冷たい空気に満ちていた。
古代魔法文明の名残なのか、薄暗いが灯りがついている。
それでも、奥のほうは暗くて見えない。
どれだけ歩いたか。
――小さな部屋に出た。
奥には金属製の扉が三つに分かれて存在していた。
「どの道が正解なのかしら?」
俺は罠がないか注意しながら、三つの扉を調べる。
「右と真ん中の扉は鍵はかかっていない、左は鍵がかかっているようだ」
「ジョウ君、その扉は開けられる?」
「多分……」
「おそらく伝承の通りなら左ね。お願い、鍵を外してくれない?」
「お安い御用だ」
伝承とはなんだろうと思いつつ左の扉に手を当てる。
「施錠解除!」
眩い光が一瞬あたりを包む。
カチャリ。
音がして扉が開く。
奥には道が続いていた。
そこからまたしばらく進む。
また扉が3つに分かれてあった。
俺はまた注意深く扉を調べる、今度は右の扉が施錠されていた。
「右を開けるのかい?」
アリシアが、頷く。
「施錠解除!」
そうして進むうちにまた扉があり、一つには必ず鍵がかかっていた。
俺もなんとなくわかってきた。
『開かずの扉の迷宮』は、つまり開かない扉が正解の迷宮なのだと。
それが証拠に、今まで迷宮内で罠や怪物に出会わない。
「長く、未踏の迷宮だったんだなここは……」
俺はアリシアに呟く。
「私の家に古くから伝わる伝承があるの、『開かずの扉の迷宮』の開かずの扉を開けて進めと」
アリシアが俺の考えを裏付けるように話す。
「施錠解除!」
「施錠解除!」
「施錠解除!」
何回目かの施錠解除ののち今までとは違った雰囲気の四角い広間に出た。
「大丈夫?鍵の魔法、連続で使って疲れてない?」
アリシアが心配して声をかけてくる。
「ああ、扉に直に触って解錠してるからほとんど疲れはないよ」
「そう、ならいいけど……でも、それって」
俺の言葉に何か違和感を覚えたみたいだったが、すぐに彼女の目は他に奪われた。
「あっ、宝箱!」
アリシアが叫んだ。
四角い部屋の右奥に金色に光る宝箱が置かれていた。
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