第35話 竜の魔人
「汚いぞ……、クリップ。一対一の勝負じゃなかったのか!?」
「クククッ、もしものことを考えていて良かったぜ」
クリップが剣を手に取る。
「助かったぜ、竜の魔人さんよ」
クリップが角を生やした男に礼を言う。
「私は四天王リュウセイ様の直属の部下リドラだ、鍵の勇者……死んでもらおう、しかしその前に」
リドラと名乗ったその男はクリップに杖を向ける。
「役立たずには、消えてもらう」
クリップは突然の成り行きに戸惑う。
「な……何を言ってるんだ、リドラ。俺は鍵の勇者を倒すために……」
「邪竜のダガーは鍵の勇者を殺すために渡したものだ……自分の都合のいいように使いおって死ぬが良い」
そう言って杖から邪悪な光が放たれクリップに降り注ぐ。
クリップは
「ぐあああああああっ」
と声をあげる。
俺は、とっさに
「遠隔施錠!」
と唱えリドラに光を当てる。
リドラの動きが止まり、邪悪な光は止まる。
「フッ、お前たちは殺し合っていたのではなかったのか?」
リドラはこちらを伺う。
「殺すまでしなくていいだろ」
俺は言う。
「ふっ、まあよい。では望み通りお前から殺してやろう、鍵の勇者!」
リドラは俺の鍵の力をはねのけ杖をこちらに振りかざした。
――その瞬間だった。
「火球!」
どこからか強力な火球の魔法が飛んできた。
それはリドラに向かって落ちた。
俺は振り返る。
「ステラ! キィ!!」
そこにはステラとキィの姿があった。
「やっぱり心配でついてきたんや! 男のタイマンなら邪魔するつもりはなかったんやけどな」
「マスター……!」
リドラはそれを見てひるむ。
「フッ、魔法使いに鍵の姫まで来たとなると、分が悪いな。ここは退かせてもらおう」
そう言って杖を振ると宙に浮かぶ。
リドラはみるみる小さな竜の姿になる。
「逃がすか!」
ステラが杖を振りかざす。
「ステラ、もういい。アリシアを助ける方が重要だ」
俺はステラを制す。
竜はあっという間に飛んで逃げ去っていく。
クリップは深手を負い完全に気を失っていた。
「こいつは明日にでも、憲兵に引き渡しとこ。魔王軍と共謀した罪でな」
ステラはクリップを見て言った。
俺はクリップの懐から邪竜のダガーを引き抜く。
中央に青い魔石がはまっていた。
その魔石に手を着け唱える。
「施錠解除!」
途端に魔石の封印は解け、粉々になる。
「これで大丈夫……なはずだ」
俺は急いでアリシアのいる宿に戻った。
階段を昇り、アリシアの部屋へと走って向かう。
「アリシア……!」
一気に扉を開ける。
するとそこには、寝間着姿のままのアリシアが立っていた。
俺の姿に気づくと駆け寄ってくる。
「ジョウ君…………、ありがとう!!」
俺は飛びついてくるアリシアを全身で抱き止めたのだった。
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