第30話 洞窟
村長の話では村のはずれの洞窟に住み着いたのは、ゴブリンとホブゴブリン共らしい。
今の俺達のパーティーなら問題にならないはずの相手だ。
しかし、油断は禁物だ。
キィを連れていくかは逡巡した。
マスターキィソードの超複数遠隔施錠の影響でキィには疲労がたまっていたし、マスターキィソードを使う場面は出てこないと思ったからだ。
しかし、俺達についていきたいという本人の希望もあって連れてくることにした。
洞窟の中はひんやりとした空気が漂っていた。
ステラの持つ杖の魔法の光だけが当たりを照らしている。
先に進むと大きな広間に出た。
ここまで敵の気配はない。
「どういうことだ……?」
奥まで進んだが敵の姿は一匹も発見できなかった。
その時、入口の方から声がした。
「大変じゃ! 村がジョウ殿が洞窟に潜っている隙に襲われた!!」
それは村長の声だった。
「なんだって……!」
俺は驚き振り向いた。
「早く村に戻らないと!!」
アリシアが元いた道を引き返す。
ステラとキィがそれに続こうとしたそのとき、村長が俺達の後ろから現れた。
「なんで、村長が後ろに!?」
俺は驚く。
「それは……な、裏道を使ったんじゃ。そしてこういうことじゃよ」
最後尾にいたキィに村長は襲い掛かり羽交い絞めにする。
「キィ!!」
俺は叫ぶ。
「マスター……!」
キィを羽交い絞めにした村長の姿は見る見る変わっていき巨大なオーガの姿になる。
「なんてこと、村長に魔物が化けてたんだわ!」
アリシアがあせった声で言う。
「フシュルシュル……鍵の勇者、この娘が弱点だということはばれているぞ、四天王様が教えてくれた」
オーガはこちらに睨みをきかす。
「遠隔施錠……」
「おっと、何か変な真似をしたらこの小娘をくびり殺すぞ」
「くっ!」
俺は構えることが出来ず動きを止める。
「出て来い……!!」
するとどこからかわらわらとゴブリンやホブゴブリン、仲間のオーガ共が現れる。
いつのまにか俺達は囲まれていた。
「グフフフフ……、この娘を人質にされていては何も出来まい。者共やってしまえ。」
オーガの声が洞窟中に響いた。
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