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第29話 アザミ村

 俺達は、ステラの案内で妖精の森を抜け近くのアザミ村へと来ていた。


「ここが、あたいらのいるアザミ村や」


 アザミ村の宿屋で地図を広げ作戦会議を練る。


「北の山脈は、遠いわね。でも、とりあえず北の山脈の麓のドワーフの国をめざせばいいのかな」

 

 ステラは抵抗を示す。

「確かに山には詳しいし、よろずの扉の迷宮ダンジョンの行き方も知ってるやろけど、ドワーフはあたいらエルフと仲悪いからな、あんま手を借りたくあらへん」


「そんなこと言ってる場合じゃないだろ。こうしている間にも魔王軍の脅威は増しているんだ」

 俺はステラに釘を刺す。


「四天王が行く手に立ちはだかる可能性もあるしね」

 アリシアが頷く。


 俺達が宿屋で頭を捻らせていたその時だった。


「大変だ! 魔物モンスターが……!」


 宿屋の外から村人がそう言って入ってきたのだった。




 外にはゴブリンの集団が十数匹群れをなしていた。

 村人に襲い掛かっている。

 昼間に堂々と現れるとは珍しい。

 

「これぐらいの敵ならば……」


 俺は両手を大きく開き、握る。


複数遠隔施錠マルチリモートロック

 光は高く飛び、ゴブリンどもに降り注ぐ。


 途端にゴブリンどもの動きは静止する。

 俺はそのままその光を下へ引っ張り、地面に叩きつける。


 その隙を逃さず、アリシアが剣を抜いて走っていく。

 瞬く間にゴブリン共を切り裂き、十数匹のゴブリンは絶命した。


「あちゃー、あたいの出番ないやん」

 ステラがスタッフを持ったまま出遅れたという感じで立っている。

 後ろにはキィが隠れるようにいた。


「怪我はないですか?」

 襲われていた村人にアリシアは声をかける。


「はい、大したことないです……」

 そう言う村人は左腕に血が出ていた。


「大丈夫ですか? 治癒ヒール!」

 アリシアが回復魔法をかけるとその村人の腕の怪我は治っていく。


「あなたたちは一体……?」

 村人は俺達を見て言う。


「ただの冒険者ですよ」

 俺は答える。


「いや、聞いたことがあります。王都で新たに名前付き(ネームド)の勇者が現れたと、確か鍵の勇者……あなたたちがそうなのですね」

 村人は尊敬の眼差しで俺達を見る。


「まあ、そう……なんですけど……」

 俺は照れた。今まで冒険者をしていてこんな眼差しを向けられたことがない。


 そうすると次々と村人が集まってきた。

「勇者様……!」


「鍵の勇者様だ……!!」


 アリシアの元にも人々がぞくぞくと集まっている。


「アリシア、ステラもキィも、行くぞ」

 俺はアリシアの手を取り、ステラやキィとその場から逃げ出した。


 村はずれの大木の下でようやく落ち着いた。


「何も逃げることはなかったんじゃない?」

 アリシアがやれやれという感じで言う。


「いや、こういうの慣れてなくてさ」

 

 俺達は木陰であらためて休んだ。

 日の光が気持ちいい。


 俺は横になって目を細める。


 ――そのとき、また突然声をかけられた。


「これは、これは鍵の勇者様ですか」

 現れたのは初老の男性だった。

 

「俺にはジョウという名前があるんですが」


「すいません、ジョウ殿、私はこの村の村長のクラヴィスと申します」


「村長さんが俺に何の用ですか?」


「いえ、先ほどのゴブリンを倒した手際、見事でした。そこで私から依頼があるのです」


「依頼?」


「はい、近頃、先ほどのように村の近くに魔物が住み着くようになって困っているのです。どうかジョウ殿に駆除してもらえないかと……」


 俺は少し考えた。

「アリシア、どう思う?」


「困っている人がいたら助けるのが勇者の役目よ」


「そうだな。わかりました。微力ながらお役に立てるよう頑張ります」

 そうして、俺は村長からその場で詳しい話を聞かされたのだった。

・面白い!


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