第28話 その頃のスライドのパーティ(4)
一方、その頃スライドのパーティは。
王都の冒険者の宿屋の酒場でたむろっていた。
「いやー、ひどいめに遭ったわい」
魔法使いのメルビルは心の底からそう思っているようだった。
「ほんとですっ、開かずの扉の迷宮だけあって鍵が強力でしたからね。いつもはこんなことはねえでやんすが」
シーフのモラドが申し訳なさそうに言う。
「あんたたちを蘇生するのにだいぶお金がかかっちゃったわ、もう殆ど文無しよ」
僧侶のミレイがやれやれといった感じで手をあげる。
「このスライド様の勇者パーティともあろうものがとんだ失態だぜ」
スライドはイライラしながら言葉を吐き出す。
「勇者パーティと言えば、名前付きの勇者が現れたらしいぜ」
戦士のエドガーがそういえばという感じで言う。
「何、名前付きの勇者だと」
スライドが食いつく。
「ああ、なんでも鍵の勇者とか言う」
「鍵の勇者だと!? この俺様を差し置いて! 何て野郎だ?」
「それが、ジョウ・ローレットと言うらしい」
「ジョウ!? まさかあのジョウか?」
「いや、俺も何かの間違いかと思ったんだが……」
「間違いに決まっている、同姓同名だ!」
「そ、そうだよな、ハハハ……」
そう言って皆で笑い飛ばすが、どうもその様子は精彩を欠いていた。
「これから、どうするの?」
ミレイが問いただす。
「そうだな、とりあえず金だ。迷宮に潜ってお宝を探すしかねえ」
「迷宮に潜るって言ったって王都近くの迷宮は皆、開拓しつくされてるわよ」
「そこでだ、俺に考えがある。北の山脈にある万の扉の迷宮って知ってるか?」
「あの攻略した者がいないと言われる難攻不落の迷宮か!」
メルビルが驚く。
「そうだ、あそこならお宝がまだ沢山残っているはずだ!」
スライドは自信満々に言う。
「冴えているじゃないのさ、スライド」
ミレイがスライドを持ち上げる。
「ぬははははっ、今度こそお宝を手に入れる。それに難攻不落の迷宮を攻略したとなれば、名前付きの勇者に格上げされる日も近いぜ」
「いいわねっ」
「そうとなりゃあ善は急げだ、いざ万の扉の迷宮へ!」
そう言ってスライドパーティは一路、万の扉の迷宮を目指すのだった。
※すいません、毎日更新3、4日休ませていただきます。パワーアップして帰ってきますので続きをお待ちください。
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