第19話 その頃のスライドのパーティ(3)
「ハァハァ、ゼーゼー! なんとか倒したぞ」
スライドは崩れ去ったゴーレムとアイアンゴーレムの山を見て呟く。
「危なかった……ゴーレムとアイアンゴーレムがなぜか弱っていたからなんとかなったものの……」
息も絶え絶えに言う。
「どうしてか、かなりのダメージを与えられてたからな、ラッキーだったぜ」
エドガーが尻もちをついて応じる。鎧はもうゴーレムの攻撃でボロボロだった。
そのダメージを与えていたのがアリシアであることをスライド達は知る由もない。
スライドのパーティはもはや満身創痍だった。
「モラドとメルビルの奴はどうした?」
スライドはミレイに聞く。
「息をしてないわ、蘇生魔法をかけないと……でも、もう私も魔法力が残ってないわ」
「くそっ、なんでこんなことに! ん?」
朽ちたアイアンゴーレムの中心部に光るものがあるのをスライドは発見した。
「これは鍵だ! あの扉の鍵に違いねえ」
黒光りする鍵を手にしてスライドは叫ぶ。
「ほんと? やったわね」
「これだけ苦労したんだすごいお宝があるに決まってる!」
全身傷だらけだが、スライドは意気揚々と扉に向かっていく。
「おい、二人を運ぶのを手伝えよ」
よろよろとした足取りで、エドガーは咎める。
「ち……モラドの野郎、大口叩いておいて役立たずめ! このくらいの鍵、パッと開けやがれ」
そう言いながらスライドは扉の鍵を開ける。
ガチャリと音がして扉は開いた。
エドガーは、モラドとメルビルをずるずるひきずっている。
「おったから、おったから!」
スライドはステップを踏みながら進んでいる。
――しかし、スライド達が奥の石造りの部屋で見たのは崩れた壁の残骸だけであった。
「お宝がねえ!」
「一足先に誰かが持っていってしまったようだな」
エドガーが悔しそうに言う。
「なんでだ! あのアイアンゴーレムどもを倒さないとこの部屋の鍵は手に入らないんだぞ! じゃあ、どうやってそいつはここへの扉の鍵を開けたっていうんだ?」
「俺が知るかよ」
エドガーが憮然とした表情になる。
「ねえ、二人ともモラドとメルビルに早く蘇生の魔法をかけないと……ここは一旦街に戻ろう」
ミレイがエドガーが引きずってきた二人を見て提案する。
「戻る!? どうやって」
「転移石があったでしょ、あの部屋の嫌な空気がなくなったから使えるはずよ」
「確かに、転移石には光が戻ってるみてぇだが……高かったんだぞこれ」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
ミレイがスライドをたしなめるように言う。
「ちくしょー!! とんだ大損だ!」
スライドは転移石を右手でつかみ、かかげて大声で叫んだ。
「我らをこの場所から転移させたまえ! 転移ー!!」
次の瞬間、転移陣が現れ光がスライド達を包んだ。
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