第17話 旅立ち
俺は横になって倒れているキィのもとに行く。
「キィ……ありがとう」
「勝ったの?マスター……」
「あぁ、キィのおかげだ」
俺は鍵の剣を手にし言う。
「マスターキィソード、施錠!」
そう唱えると鍵の剣は光となり、キィの胸元に吸い込まれていった」
「やった、やったね! ジョウ君!」
アリシアが駆け寄ってくる。
「なんとか……なった……みたいだ」
俺は片膝をつく。
「ジョウ君! 大丈夫?」
「ああ……、しかしマスターキィソードを使いこなすにはまだまだ修行が必要みたいだ」
ブレイブ王が近づいてくる。
「よくぞ、あのクリップを倒した、そなたこそ真の鍵の勇者じゃ」
「鍵の勇者、か……」
……この強大な力が鍵の勇者としての力ならば。そして信じてくれるアリシアがいる、力となってくれるキィがいる。
俺は覚悟を決めた。
「アリシア、俺なるよ。鍵の勇者に! どこまで出来るかわからないけれど」
「本当? ジョウ君ならなれるよ、本物の鍵の勇者に!」
アリシアはそう言って微笑んだ。
俺にはその笑顔がとても眩しく、心地良いものに見えた。
――その日の夜は、宴が催された。
鍵の勇者の誕生を祝う宴だ、王が開催してくれた。
「そういえば、クリップはどうなったんだ?」
「先ほど、意識を回復したそうよ、それにしてもすごいね、マスターキィソードの威力は」
俺とアリシア、キィは主賓席にいたがどうも居心地が悪かった。
しかし、出された料理はいままで食べたものがない美味しいものばかりで俺は貪り食った。
キィも、差し出された料理に手をつけている。
肉を美味しそうに頬張りながら、
「マスター、おいしいね」
キィの言葉に俺も相槌を打つ。
「あぁ」
そんな中、宴も中盤に入った頃だった。
奥で近衛兵がざわついた。
「お待ちください、クリップ様!」
現れたのは、なんと剣を持ったクリップだった。
「おまえ、どんなイカサマをしたァ!」
近衛兵の静止を振り切って俺にまっすぐ近づいてくる。
「クリップ、止めるんじゃ」
王様が慌てて声をかけるが、クリップは俺しか見えていないようだった。
ずんずんとこちらに近づいてくる。
……まずい、こちらは丸腰だ。
俺は、両手を使い即座に唱える。
「遠隔施錠!!」
光はクリップの足に当たると、動きを止めさせた。
たまらず、クリップはよろけ、前のめりに倒れた。
「くそっ、足が、動かねえ……!」
その機を逃さず、近衛兵はクリップを取り囲み、宴の間の外へと連れて行った。
「離せっ、くそっ……覚えてろよ、ジョウ・ローレット!」
クリップの怨嗟の声が遠くなっていった。
「遠隔施錠が効いた……」
俺は驚いて、両手を眺める。
「高レベル帯の相手でも弱っていて体の一部位ならば、遠隔施錠は効くのか」
「それだけじゃないよ、ジョウ君の鍵の勇者としての力はレベルアップしているのかもしれない」
アリシアが言う。
「そうなん……だろうか」
俺はそう言って、いつまでも両手を見つめていた。
「皆の者、気を取り直して真の鍵の勇者の誕生を祝おうぞ!」
王が叫んだ。
そうして夜が更けていく。
――――そして、旅立ちの朝が来た。
「鍵の勇者ジョウよ、必ずや魔王を打ち倒すことを期待しているぞ」
ブレイブ王が王城の入り口まで旅立ちの見送りに来てくれた。
「はい、できる限りやってみます」
俺も答える。
「して、まずどこに行くつもりじゃ?」
「はい、キィの失われた記憶を取り戻すためにも、鍵の一族の村に行こうかと思っています」
「ふむ、なるほど。それはどこにあるんじゃ」
「禁書庫で手に入れた鍵付きの本。それに書いてありました、今もあるのだとすれば西の妖精の森を抜けた先にあると、それよりこの本、本当に貰っていいのですか?」
俺は懐から本を取り出し言った。
「うむ、それは鍵の勇者が持っているのが一番じゃろう」
「とりあえず、馬車で妖精の森の近くまで行って、それから徒歩で村に向かうつもりです」
「そうか、健闘を祈るぞ、アリシアとキィ殿もジョウ殿に協力してやってくれ」
「もちろんです、王様」
「キィもがんばる!」
アリシアとキィも気合を入れる。
――こうして俺達は一路、鍵の一族の村があるという妖精の森の先を目指して旅立ったのだった。
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