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第16話 鍵の剣

 ――数刻後、俺達は城の闘技場にいた。

 周りはブレイブ王や、臣下の者たちが囲んでいる。


 結局、俺はクリップと勝負することになった。


 クリップは豪勢な装飾が入ったプレートメイルを身に着けている。

 そしてこれまた柄や鞘に凝った装飾のロングソードを装備していた。

 

「クリップはあれでも冒険者であればA級クラスを持つ実力者よ、近衛兵の隊長を務めているくらいだから」

 アリシアが心配して言う。


「そうか、でも俺にはこの鍵の力がある」


 そう言って両手を握りしめる。


「問題はそれが、奴に効くか、どうか、だ……」


「マスター……大丈夫?」

 キィも心配そうな顔で見つめる。


 クリップが闘技場の真ん中に来た。

「どうした、怖いのか。逃げてもいいんだぞ、鍵の勇者の称号を捨ててな」


 ハッハッハと高笑いをする。


「やっぱり、危険すぎる。ジョウ君、諦めよう……」


「アリシアは俺を鍵の勇者だと信じてくれてるんじゃないのかい?」


「それは……」


「君が信じてくれれば、俺はいくらでも強くなれる」

 そう言って俺は闘技場の中心へ歩いていく。


 クリップは剣を抜いた。


 俺も剣を抜き、構える。

 そして左手を前に出す。


 ブレイブ王が言う。

「どちらも準備はよろしいかな?」


「私はいつでも大丈夫です」


「俺も大丈夫です」


「それでは……、はじめっ!」

 王が大きな声で高らかに宣言した。


 クリップは刹那、こちらに走り寄ってきた。


 俺はとっさに唱え、左手を大きく開き、閉じる。


遠隔施錠リモートロック!」


 閃光が走り、クリップに突き刺さる。


「何?」


 クリップの動きが剣を振りかぶったままでビタッと止まった、そのまま動けないでいる。


「やった!」

 アリシアが叫ぶ。


 俺はスタスタとクリップに歩み寄っていく。


「さあ、降参してもらおうか」

 剣を突き出し、降参を促そうとしたそのとき……。


 クリップの剣が振り下ろされた。


 俺はすんでのところでかわした。

 左腕に傷がつく。


「なんだ、おまえ今何をした!?」

 クリップが怒りに燃えている。


 俺は驚愕した。

遠隔施錠リモートロックが効かない!?」


「何を言っている!」


遠隔施錠リモートロック!」

 俺はもう一度、左手を前に出し広げて握る。

 閃光がクリップを包み込む。


 一瞬、クリップの動きが止まる。

 しかし、次の瞬間には動き出してしまう。


「ジョウ君!」


「アリシア様に近づくなど、平民の分際で目障りなんだよォ! 何か小細工は使えるようだが、あてがはずれたみたいだなァ」


 クリップは勝利を確信したのか、剣を使わず俺に蹴りを入れる。


「グ……ハッ!」


 俺は、蹴り飛ばされ無様に闘技場の端に転がった。

 口に血の味が広がる。

 剣は右手から離れる。 


「もう二度と、アリシア様に近づこうという気を起きなくさせてやる」

 クリップが余裕の表情で俺に近づいてくる。


「もうやめて!勝負はついたわ」

 アリシアが叫んだ。


 ――そのときだった。


「マスター!!」

 

 キィがいきなり飛び出してきて、俺たちの間に割って入った。


「マスターをいじめる人、許さない」


 キィが両手を大きく広げて、ここは通さないという決意で立っていた。


「あん? なんだお前は?やられてぇのか、アアン?」


クリップが近づいてくる。


「キィ、危ない! ここを離れるんだ!!」


「嫌! キィ離れない! それにマスターは負けない!!」

 キィが叫ぶ。


「使って! マスターキィソードを」


 瞬間、キラキラとキィの体が輝きだす。


 俺はあの禁書庫の文献を思い出していた。

 鍵の一族の体に眠る剣の伝説。

 ……あれが本当なら。


 俺は駆け寄り、キィの体を横に抱きよせた。

 そして胸元の鍵穴の紋章に手をやる。


施錠解除アンロック!!」


 次の瞬間、激しい閃光が当たりを照らす。


「なんだっ! これは!」

 クリップがその光にひるむ。


 俺はキィの胸の上に右手をかざす。

 すると何もないはずのその空間に光が集まっていく。

 そしてなにかが光と共に徐々に姿を現す。


 ――それは、鍵の形をした剣だった。

 

 俺はそれの柄を手にし一気に引き抜き、上にかざした。

 

「これが、マスターキィソード!?」


「なんだ、おまえ何をしたあああっ!」


 クリップが怒り狂い近づいてくる。


 とっさに鍵の剣を手にし、それを相手に向ける。


 クリップは勢いよく剣を振り下ろした。


 俺はそれを鍵の剣で受け止め、鍵をひねるように剣を右に回す。

 そして唱える。


施錠ロック!!」


 次の瞬間、クリップの動きが止まる。

 今度こそ、動けない。


「な……ん……だ! 体がうごか……ねぇ」


「これで決まりだ!」


 鍵を先ほどとは逆の方向にひねり、俺は唱えた。

施錠解除アンロック!!」

 

 瞬間、クリップのプレートメイルが吹き飛んだ。剣も弾け飛び装飾がボロボロになって朽ちた。

「ぐ……お……ッ!」

 そして、衝撃でクリップは無力化し、気を失い前のめりに倒れた。


 一連の事柄を見守っていた、王と家臣たちは何が起きたのかしばらくわからないでいたが、王は我に返ると言った。


「勝者! ジョウ・ローレット!! 鍵の勇者じゃ!」

・面白い!


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