第10話 その頃のスライドのパーティ(1)
スライドは青く鈍く光る宝石を持って言った。
「これが噂に聞く転移石か……やっと手に入れたぞ」
ジョウをクビにした冒険者の宿の酒場で今日も昼間からスライド達は飲み食い騒いでいた。
「ジョウの野郎の上前をはねて貯めた分も合わせて買ったんだ、もう金も残り少ないぜ」
戦士のエドガーが肉を食べながら言葉を吐き出した。
「大丈夫じゃ、また迷宮に潜って、宝箱を開けまくればいいんじゃ。」
魔法使いのメルビルが余裕の表情で言う。
「それには、あなたの協力が必要、ね、新入りさん?」
僧侶のミレイが隣の席に座る男の肩を叩く。
「まかせてください、このシーフのモラドが入ったからには、どんな扉も宝箱も一発ですわ」
モラドと名乗った男はニヤリと笑う。
「それだけでなく戦闘でも役に立ってくれそうじゃしな」
メルビルが言う。
ゴクゴクゴクと酒を飲み干しスライドは吐き出す。
「プハーッ!まったく、あの能なしの役立たずをやっとクビにできたぜ。何が俺はどんな鍵も開けることができる!だ、笑わせるぜ」
「どんな扉も、といえば開いたみたいだぜ、あの開かずの扉の迷宮の扉が」
エドガーがそういえばという顔で告げる。
「なに、あの300年間開いたことのないと言われる、古代魔法文明の迷宮がか!」
スライドは驚く。
「ああ、何者かが開けるのに成功したらしい」
「まさかジョウの野郎じゃねぇだろうな」
スライドは訝しむ。
「ハハハ……まさか、あんな小物には無理無理!」
エドガーが笑って否定する。
「そうだよな!!」
そうスライドが言うと、ハハハハハと全員が笑う。
「しかし、そうとなればチャンスだな、まだ開いてから日にちが経ってないならお宝も残ってるかもしれねえ」
スライドがパーティメンバーに告げる。
「そうとなりゃあ善は急げだ、いざとなれば転移石もあるわけだしな」
モラドのほうに振り向き言う。
「頼むぞ、モラド」
「シシシ……、おまかせください」
モラドは笑いながら自信満々に答えた。
・面白い!
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