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異世界クロスオーバー物語《ストーリー》  作者: 宮糸 百舌
【怪物と呼ばれた少女、神の願いを聞き世界を救うために異世界へ渡り英雄となる】 第1部 第2章 勇者にスカウトされて聖騎士になります。
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第26話 実技実習が始まります。

 リニアとの戦いから、泥臭い闘いであっても自分の能力を十全に活かせるようにするべきである、という新しい考えに気が付かされた花は早速次の模擬戦の授業でそれを実践してみることにした。


「それでは、ハナさんとアイリスさん。舞台にあがってください。」


 相手はアイリス。今までも何度も戦ったが、今のところはなんとかずっと花が勝っている。アイリスも色々な工夫で花に挑んではいるものの、どうしても必殺の突きを避けられてしまうのである。


「むっふっふ。今日こそは勝たせてもらいますよ。」

「よろしくお願いします。」


 いつもは避けて避けて避け続けて隙を狙う花。しかし、今日は思い切って受け止めてみようと考えていた。そう、リニアとの戦いで学んだことを活かし、アイリスを相手にしても速攻を決めようとしたのだ。


「はじめ!」


 ドロイドの合図で勝負がはじまる。開始の合図と同時にアイリスが突っ込んでくる。突っ込んでくるというが、実際にはほとんど捉えることはできない。ただ、毎回やってくるのでわかっているだけだ。そして、その一撃を肩にもらった花は魔力で全身を完全ガードしているにも関わらず、その付きの勢いでそのまま場外へと吹き飛んだ。


「あら・・・?ちょっと、ハナハナ大丈夫!?」


 慌てた様子でアイリスや他の生徒も駆け寄ってくるが、花は完全に気を失ってしまっていた。


---


 しばらくは気を失っていたものの、花は保健室で目を覚ました。幸いにも怪我はすでに治療されているようで問題なく起き上がれる。周りを見渡すとリニアとアイリスが付き添ってくれていたようで、すぐに花が起き上がったことに気が付いた。


「これもまた良い勉強になりました。」

「ハナさん、アイリスの突きを受け止めようなど私でも絶対にしませんよ。受けられる攻撃かどうかはちゃんと精査しないと。」

「そうですね。アイリスさんとリニアさんの模擬戦でリニアさんがどうして受けに徹していたのかを考えるべきでした。」


 たしかにアイリスとリニアの模擬戦ではリニアはちゃんとアイリスの攻撃を受け流すようにしていた。決して、受け止めるようなことはしていなかったのだ。


「ぶっちゃけていうけど、アイリスはちゃんと手加減はしているの。ほんとに全力で撃ったら死人が出るかもしれないから。でも、それはそういうシチュエーションもあり得るし、それで負けるのは納得してる。だからって、アイリスの突きを受け止めて反撃は無理だよ。」

「そうですね、いくら身体が大丈夫でも意識を失うほどの衝撃を受けてしまえば、何もできなくなる。これもまた学びでした。」

「やはり、基本は受けないように、が一番いいですよ。痛い思いもしなくて済みますし。ただ、当てるだけの攻撃をしてくる相手もいますので、そういう場合には利用していきましょう。」


 こうして保健室はすぐさま戦闘の反省と勉強の場になっていったのであった。


---


 それからまたしばらくして、花はギド工房へとやってきていた。依頼していた手甲の完成版ができたということで、受け取りにやってきたのである。


「おう、出来てるぞ。これは自信作だ。」


 渡された手甲を早速つけてみる。そして、魔力を流してみるのだが、今までの防具よりもじんわりと魔力が流れていくのが花にもはっきりと感じ取れた。


「ふむ、今までとはだいぶ感覚が違いますね。」

「魔力が流れにくいだろう。それがミスリルの特徴だ。ただ、だからって一気に流しすぎるなよ。」


 その言葉の意味はすぐにわかった。ある程度の魔力を流し込むとさっきまでのじんわりと流れる感じはなくなり、すっと魔力が全体に流れ込んでいった。


「なるほど、問題なく魔力は流せますね。」

「普通のやつだとミスリルは魔力を流し切れないものいるくらいのものだ。」

「そちらの問題はないですね。」

「そうだろうな。だから、あまり強く流さないように注意したんだ。」


 ここからはしばらく魔力を流しておけと言われたので、そのまま魔力を維持している。20分くらいたっただろうか、手甲の先に丸く光る部分が浮き上がってきた。


「そいつが魔力を集める鉱石だ。光っているなとわかるほどの変化があったら魔力を放出できる。そして、それが赤いと思える色の光になったら魔力のため込める限界だな。」

「それで、これはどうやって放ったらいいのでしょう。」

「ああ、それは外でやろう。」


 外に出て前回同様に木の人形へ向けて拳を向けていた花だが、ギドから「いや、たぶんその先に家が全部吹き飛ぶぞ?」といわれてしまったので、空に向けて拳を向けなおした。


「そのまま魔力を前に打ち出そうとしてみろ。」


 いわれたことがよくわからなかったが、とりあえず前に向かって撃ちだすイメージを持ってみる。すると魔力が拳の先へと流れだし、そこで魔力が集まっていく感覚があった。


「おお!感じます。これで、どうしたら?」

「拳を素早く突き出せ。その衝撃で魔力がぶっ放されるはずだ。」


 いわれたとおりに天空へと拳を繰り出すと、その瞬間に魔力が空へと撃ちだされた。


---


「それで、いったい何があって、あんな大騒ぎを引き起こしたの?」

「ええと、あんなつもりでもなかったのですが、大変申し訳ありません。」

「ううん、別に怒っているわけではないの。周りの住民からは一斉に聖騎士宛てに問い合わせが殺到して、すぐに私たちが向かうことになって、尚且つ聖騎士見習いであるあなたが引き起こしたことで、それを周りの住民に説明に回って、問題ありませんでした、って伝えることくらいどおってことないから。」

「お手数をおかけしました。」

「それで、なんの関係もないって顔でそこに座っている親父はどういうつもりなのかな?」

「そりゃこっちのセリフだ。武器の実験をしただけで周りの住民から文句が出るなんて言いがかりだろう?そっちでなんとかするのが当たり前だ。」

「空に穴をあけるほどの威力の武器を使用して、そんな言い訳が通ると思っているの!ああ、もう!」


 空に穴をあけた、というのはオーバーな言い回しではあるが、間違いというほどでもなかった。花の撃ちだした魔力は聖騎士国の上空にあった雲を全部吹き飛ばし、まるで空に穴をあけたように見えたのだ。その様子は周りの住民から見れば、恐怖でしかなく、聖騎士への通報祭りとなってしまったのである。


 そう、ここはアーリエのいる総隊長室。花とギドはかけつけた聖騎士に事情を聴かれて、そのまますぐにここへと連れてこられたのであった。


「俺の工房では危険な武器を作ることも報告してあるし、そのために聖騎士へ安く装備を入れてやってるだろう?」

「それにしたって限度があります。それと、ハナさんはその危険な装備をどうするつもりだったのですか?」

「いえ、最初はただ防具が欲しかったのですが・・・」

「あれが防具によるものだとでも?」

「それについては間違いない。あの魔力の砲撃みたいのはいったら副産物だ。」

「・・・ふむ、もう少し詳しく聞きましょうか。」


 そこから花が防具を付けられなかった話からここまで改造した手甲の経緯を説明した。説明が終わると、アーリエは頭を抱えていたもの、徐々にうーんと唸るようになり、最終的には長い溜息を吐きだした。


「たしかに、今後ハナさんに防具は必要でしょうね。ただ、その魔力の大量放出は他の方法ではなんとかならなかったのですか?」

「無理だな。他の方法も色々考えたがこれが一番安全で、かつ魔力が無駄にならない。」

「ギドさんがそういうのであれば、そうなのでしょうね。わかりました。今回の件は一応不問にします。」

「当然のことだ。」

「ただ、近隣への迷惑を顧みなかったことはよくありませんよね。」

「・・・ま、そうかもしれねぇな。」

「それは間違いありません。」

「そこで、ハナさんはこの後実施される実技実習にペナルティーを科します。他の生徒よりも難しい課題をこなしてもらいましょう。」

「はい、それならなんとか頑張ります。」


 正直、お金が絡んだりするものだと花は困る。これなら修行しながら、ペナルティーをこなせるのでそれほど問題はないだろう。


「ギドさんは納期が来月になっていた装備を今週までにあげてください。その後、別の仕事を来月までにやってもらいます。ああ、お金は払いますので。」

「いや、無理だろ。」

「やってください。」


 アーリエはにっこり笑っている。その様子にギドが折れた。


「わ、わかったよ。それでなんとかしよう。」

「はい。それでは、この件はこれで。後は聖騎士の方で片付けますので。」


 結果としては、アーリエにも得があったのだろう。この件はこれで片付くことになった。


---


 昨日のアーリエの言葉をもう少しちゃんと聞いておけばよかったと花が後悔したのは次の日のことであった。ドロイドより、実技実習が行われることが説明されたのだ。


 そういえば、実技実習があるなんて聞いてなかったしどういうものなのかもしらない。花はそんなことを今更ながらに考えていたのだが、時すでに遅しである。


「あの・・・実技実習とはどのようなものになるのでしょうか?」

「ああ、ハナさんは初めてだったね。これは聖騎士へ依頼が来たものの中で緊急度や難易度が低いと判断されたものを聖騎士の見習いとなる君たち聖騎士学校の最上級クラスの生徒たちに実習としてこなしてもらうものになる。」


 さらに詳しく聞くと、このように全体の実習になることは結構少ないらしい。普段ならば、順番に指名が入り、2~3人くらいの生徒が実習に向かうことになる。ただ、年に何回かは生徒同士の連携を現場でも確認するために大がかりな実習が行われるということだった。


「普段だと、2~3人といっても別の現場に行くからね。こんな風にある程度の人数でまとめていけそうな件を聖騎士の方で集めておいて実習にするのさ。もちろん、依頼側にもメリットがあるようにしてね。そうじゃないと、聖騎士を当てにしてきた依頼主に失礼だから。」

「具体的にはどのような?」

「ああ、普段なら断るような難易度の低い案件も受けたり、緊急度が低いから見習いが行きます、でも依頼料は要りません、みたいになったりするね。」

「なるほど、それならメリットもあるし、相手も納得ですね。」

「生徒が解決できなかったら場合にはもちろん正規の聖騎士が後始末もしにいくしトラブルになったりはしないから安心してほしい。ただ・・・」

「ただ?」

「今回はハナさんには特別実習があてられているから、ちょっと大変かな。」


 その言葉にクラス中がざわつきだす。どうやら特別実習とは花の考えるよりも大変な感じなのだろうなというのがなんとなく伝わってきた。そして、真っ先に声をあげてくれたのはアイリスである。


「ええ!いきなり初めての実習で特別実習は大変すぎですよ。ドロイド先生、アイリスが代わりにやりますよ。」

「あー、いえ、気持ちは大変ありがたいのですが、今回はわけありなので私が自分でいきます。」

「ハナさん、わけありってなんですか?」

「実は昨日街中で騒ぎを起こしてしまいまして、そのペナルティーにと。」

「ハナさん、騒ぎ起こしすぎ。」

「面目ありません。」

「じゃあ、アイリスがパートナーとして出向いてあげるわ。先生、それなら大丈夫ですよね?」

「いえ、今回はアイリスさん、アゼリアさん、カルミアさんの三人は一番厄介な現場に向かってもらうことが決まっていますので、だめです。」

「む、残念、私たちもだめなんだ。」


 アゼリアやカルミアも行けないということで、すまなそうに花を見ている。だが、当の花は特別実習がわからないので、反応に困っていた。だが、救いの手はまだ花に伸びていたのである。


「それなら、私がいきましょう。それならどうでしょうか!」

「あー、リニアさんはそもそも今回は前回の実習から近いからお休みってことになっているんだけど・・・いきたいっていうなら許可は出せると思うよ、うん。」

「それならハナさんと一緒に行ってみたいです。ハナさんはどうでしょうか?」

「リニアさんが一緒なら心強いです。お願いできますでしょうか。」

「じゃあ、それでいこう。たしかに最初から特別実習は大変だとは思っていたんだ。」

「先生、お言葉ですが、それはちょっと特別扱いが過ぎるのではないでしょうか?」


 良い感じに話がまとまりそうなところへ横やりを入れてきたのは、アンファーであった。

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