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異世界クロスオーバー物語《ストーリー》  作者: 宮糸 百舌
【怪物と呼ばれた少女、神の願いを聞き世界を救うために異世界へ渡り英雄となる】 第1部 第2章 勇者にスカウトされて聖騎士になります。
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第17話 装備を作ることになりました。

 花がやってきたのは暗い雰囲気のたたずまいの武器屋であった。ここは街の紹介所にておすすめされた武器屋なのだが、どうみてもあまり良い雰囲気とは言えない感じがする。


 まあ、そうだとしても他に行くあてもないので、とりあえずは入ってみることにする花。


「ごめんくださーい。」


 それなりの声であいさつした花ではあるが、店の中からはなんの応答もない。しかし、店内はちゃんと武器屋や防具が並べられてはおり、どうやらちゃんとお店はやっているようである。


 どうしようか迷った花ではあるが、見ているだけなら別に構わないだろうと武器や防具を見て回ることにした。ざっと見まわった感想としては、武器の種類というのは案外少ないんだなということだった。


 剣、槍、斧、そして鈍器。大まかにいうとこの四種類しかこの店には置いていない。ナイフとか弓といった武器すら置いていないのだ。


「この店は武器の種類が少ないのでしょうかね?」

「そうじゃねえよ。うちの店で求められるのがそういう武器ばかりってだけだ。」


 突然の声に少々驚いたが、店の奥から聞こえてきたので、お店の人だと判断していいだろう。出てきたのはかなりガタイの良い中年男性だった。


「こんにちは。防具を探していまして。」

「そのようだな。最初は若いお嬢さんだから冷やかしかおつかいかと思った。そうでもないようだな。」

「そんなのがわかるものなんですか?」

「わかるさ。冷やかしは店に人がいないなら大体は帰っていく。おつかいはしつこく声をかけて用事を済まそうとする。」


 なるほど、経験上の知識というやつだ。とりあえず、花は話を聞いてもらうくらいはできるレベルの却と判断してもらえたようだった。


「それで、お嬢さんはどんな装備を探してるんだ?」

「はい、小手のような拳の動きを邪魔せずに拳を守れるようなものが欲しいんですが・・・」

「ああん?それならこんなへんぴな店に来なくてもその辺で用意できるだろうが。」

「普通はそうなんですが、私は普通の装備が全く使えませんので。」

「使えないっていうのはどういうことだ?」


 そこで花は自分の魔力が異常に高いことを店主へと説明した。その魔力のおかげもあって今までは武器も防具もなくても戦えていたこと。さらに、そのことを街の案内所に話したら、この店であったら花にも装備できる装備が見つかるかもしれないと紹介されたことを伝えた。


「そんな馬鹿なやつがいるのか。よし、こいつをはめてみろ。」


 そういって手渡されたのは金属製の小手であった。


「そいつは失敗作だから、別にぶっ壊れても構わん。魔力を実際に流してみてくれ。」

「あの・・・魔力を流すってどうやるんですか?」

「ああん?やったことねえのか。こうすんだよ。」


 店主がお手本を見せてくれたのだが、ぱっと見では何をしているのか全然わからない。ただ、魔力視ができる花はたしかに魔力が小手にも移っていくのを見て取ることができた。


「そんなに強く意識しなくても魔力が流せるようにうちの装備は調整してある。そもそも戦士タイプは魔法使いタイプほど魔力なんて自分で操作できねえからな。小手を身体の一部という感じで意識するんだ。」

「なるほど、やってみます。」


 再び小手を受け取った花が意識を込めると、たしかに小手に魔力が流れていくのを感じる。そして、すぐにやばいというのがわかった。魔力が先ほどの店主の時とは比べ物にならない量で流れ込んでいるのがわかったからだ。


「あの!まずそうですけど!」


ギギギギギ!!ガギン!バギッ!!!


 みるみるうちに小手はひびが入っていき、ボロボロになってしまった。その様子を見た店主は最初こそ驚いていたが、その様子に納得したようだ。


「なるほど、たしかにこりゃ普通の装備は無理だな。それは聖騎士に納品するやつの出来損ないだ。出来損ないといっても、魔力が流しにくくなってしまった失敗作だ。強度なんかは普通のものと変わらないし、魔力が流しにくい。それをそんなにあっさり破壊するか。」

「あの・・・私が使える装備ってあるんでしょうか?」

「はっきりいうなら、この店にはない。」

「そうですか。それは残念です。」

「だが、作ってやることはできる。」

「作れるんですか!?」

「ああ。ただ、どんな風にするかは悩むところだな。」


 魔力を流しにくいようにすれば、それで装備としては使えるものができる。ただ、それは店主曰く最後の手段とのことだ。


「その場合は無理してつけることにどのくらいの価値があるんだって話になるからな。」

「それもそうですね。」

「そのバカみたいな魔力を活かしつつ、壊れないようにする工夫が必要だ。」


 本来武器を使うのは魔力を流すことによって、その武器の力を引き出し戦力を強化する。その際に身体に流れているときよりも魔力を流しやすい武器に魔力を集めることで攻撃力を増し、また同じく防具ならば防御力をあげる。それを魔力を流しにくくして装備だけつけても何の意味があるんだ?ということになりかねない。つまり、魔力を流しやすくしても壊れないようにする必要があるのだ。


「思いついたのは魔力をため込まずに打ち出す機構でも仕込むとかだな。」


 装備の加工でもう一つポピュラーなのが魔力をできるだけ発散しにくくする加工である。これにより魔力を装備に流し込んでもそれが外に流れださないので、魔力が少ない傾向にある戦士タイプは魔力切れを恐れずに戦うことができるようになる。


ただ、花の場合では魔力は有り余っている。それなら、あえて装備にはため込まず、それを攻撃に利用できるようにする、くらいの改造をしても良いのではないかという提案だった。


「これで少なくとも防具としての小手の強度は保てる。さらに、攻撃力アップと必殺技を仕込むことができるだろうな。ただ問題もある。」

「それはどういうものでしょうか?幸いお金の問題なら多少はなんとかできると思うのですが。」

「その問題もあるが、今言ってるのはそっちじゃねえ。お嬢さんが使いこなせる保証がないってことだ。出来上がった小手は相当扱いの難しいものになるだろうからな。それに金を出そうって思えるか?」


 花は少し悩んだ。今は蓄えはある。ただ、無駄かもしれないものにお金を使うのはどうなのだろうか?というのも実際に思うところではある。


 しかし、花は決断する。


「構いません。それでも使える装備が欲しいですから。」

「そうかい。結構肝が据わったお嬢さんだったか。うーん、そうだな。それならこうしよう。お嬢さんは時間はあるか?」

「はい、今日は一日やることがありません。夕方に戻ってくればいいです。」

「そうか、それなら俺は今から夕方までに簡単な試作品を作る。そもそも俺が応じたものを作れなんじゃ話にならねえからな。その間にお嬢さんは装備の材料を持ってきてくれ。どんな手段でも構わねえ。」

「最悪買ってきても良いってことですか?」

「ああ、それでもいいぜ。ただ、お嬢さんの魔力を見ると、自分で取ってきた方が良いと思うがな。ま、それで夕方に俺の試作品を見て、納得してくれたらその材料を渡してくれ。それで制作を請け負うから少々多めに依頼するがそれでも破格だ。俺もちょっと試してみたくなったんでそれでいい。」

「材料を持ってこれなかったらどうなるんでしょう?」

「そのときは試作品を作る手間に応じた料金を割り増しで払ってもらう。逆にこっちが試作品を作れなかったら、そっちが持ってきた材料は市場価値の倍額で引き取ってやる。これなら文句ないだろ。」

「はい、ありがとうございます!」

「それじゃあ、一応身分証で契約するぜ。」


 こうして花はこの店主に装備を作ってもらうために材料を集めることになった。


---


 花がやってきたのは聖騎士国からそれほど遠くはない鉱山だ。取ってこれるというのであれば、自分で採掘してきたいと店主に伝えたところ、店主のお使いで鉱山へ鉱石を捕りに来たという内容の紹介状を書いてもらい、さらに鉱石を採掘するためのハンマーを貸してもらった。


 鉱山の入り口で店主に書いてもらった紹介状を渡すと、すんなりと鉱山には入ることができた。ただ、今の鉱山は少々危険な状態だということだ。


 門番の兵士曰く、


「どうやら中に住み着いているなんらかの野生動物が採掘中の人を襲う事態が多発しているようなんだ。どうやら、そこまで人に興味はないみたいで死人はでてないけど、十分に警戒してほしい。一応、冒険者ギルドが派遣した冒険者たちが見回りしているから、やばそうなときはそいつらのところまで逃げてくれたらいい。」


 とのことだった。


「わかりました。丁寧にありがとうございます。そうだ、この場所ってその野生動物は出ていたりしますか?」


 花は鉱山の地図も店主から貸してもらっている。目的の鉱石がどこで取れるのかもちゃんと教えてもらっていたからだ。


「そのあたりは割と目撃されている地域だね。時間が許すなら、あんまり今行くのはおすすめしないところだ。」

「ふむ、そうなんですね・・・」


 なんの準備もせずに一人で危険に突っ込んでいくのは愚かかもしれない。しかし、花の実力はこの世界でどんなものなのかはそろそろ理解できていた。おそらくだが、普通の採掘者が殺されないような相手ならば、自分の実力で倒せないことはないと判断してよいだろう。自分の実力が一般的ではないことくらい、この数日で十分に理解できていたからだ。なので、花は別に無理さえしないなら大丈夫だろう、そう結論付けた。


(正直、よくある物語で自分の実力を誤解するというのがありましたが、そんなこと絶対に起こりそうにないですが・・・)


 花はこのタイミングでそんなことも考えていたが、門番の兵士が返事を待っているようなので、考えを中断する。


「いえ、時間もないので行ってみます。ご忠告ありがとうございました。」

「そっか。まあ、止める権利は私にはないからしかたないね。でも、やばい生き物を見かけたらすぐに逃げること、いいね。」

「はい、わかりました。」


 親切な門番に気をよくして、花は鉱山の中へと進んでいったのだった。


---


 鉱山の中は基本的には野生動物は見かけなかった。結構、人も頻繁にやってくるのだろう。ある程度の深さまでは野生動物は出てこないことで人との無駄なやり取りを防いでいるのかもしれない。しかし、花が求めている鉱物はあまり人が入らないような場所になるため、野生動物と鉢合わせる可能性は十分にあった。


 花が持ってくるように頼まれた金属はミスリル。魔力をため込む性質のある金属であり、魔力を強く流しても壊れにくい。そして、魔力に対しての耐性もあるので、魔法攻撃対策などの防具としても優秀である。


 難点としては、加工のしにくさ、そして扱うのに大量の魔力が必要なことだろう。魔力によって燃え盛る炎が鍛冶の基本となっているこの世界で魔力をはじく鉱物は加工がかなり大変になってしまう。さらに、魔力を吸収しやすいということは魔力を流しやすいが力を発揮するために必要な魔力も多くなり、戦士タイプでこれが扱える人間は少なくなってしまう。


 ただ、これらの特性や問題は花の装備づくりには物凄く適している。この鉱物の説明を受けたときに花もそれはなんとしてもそのミスリルを使った装備が良いだろうなと思ったほどだ。


 こんなことを思い出しながら進んでいくと、目的の発掘場所にはあっさりとたどり着くことができた。ここまでは野生動物は全く見かけていない。ただ、この周りはどうも何かの気配は感じる。薄暗いため視認こそできていないが、どうやら相当な野生動物が隠れているようである。


(うーん、どうしましょうかね?)


 花としては襲ってこないならこちらからなにかをするつもりはない。しかし採掘中に襲われるのはめんどうだし、危険でもある。そもそも危険度がわからない状況は作業に集中しづらい。


(せっかくだし、試してみましょう。)


 これは店主から教わった動物避けの方法。魔力を全身に込めて高ぶらせる。ただ、これだけ。野生動物は強さを魔力の強さと体の大きさで判断するのがほとんどなのだそうだ。だから、自分の魔力をしっかりと見せつけるだけで、その恐ろしさを野生動物は感じ取って逃げていくのだ。


 花がやるとその効果は抜群であった。さっきまで、感じた気配がさぁーと消えていくのを感じ取れる。これは思ったよりも効果がありそうだ。


(基本的な動物避けとのことでしたが、これは知れてラッキーだったかもしれません。あの店主は本当に良い方で良かった。)


 花はこうしてゆっくりと採掘を始めるのであった。

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