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異世界クロスオーバー物語《ストーリー》  作者: 宮糸 百舌
【怪物と呼ばれた少女、神の願いを聞き世界を救うために異世界へ渡り英雄となる】 第1部 第1章 女神にスカウトされて異世界へといきます。
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第3話 これが神からの贈り物でした。

 花の修行は順調に進んでいた。花は独学で修行するものだとばかり思っていたが、地の女神はちゃんと修行のメニューまで考えてくれて、それをこなすためのサポートまでつけてくれていたからだ。


 初日はまず、花の力がどの程度のものなのかを知ることから始まった。地の女神がいなくなった後は、実戦形式ではなく、まず基礎の鍛錬の仕方を教えてもらった。


「まず、花さんは魔力を感じるところからはじめます。本能的に扱えているようではありますが、魔力を感じることができないと、相手の強さを知ることもできません。その状態は何より危険です。」


 修行のメニューをこなすためのサポートをしてくれているのは、この目の前にいる白い球。簡単にいうなら女神の知識を集めたAIのようなものだと説明してもらった。この子が修行のお手伝いをしてくれるというか、修行するべきことを教えてくれるらしい。


「たしかにせっかく相手の強さの基準がわかるというのに、それを感じ取れないのはもったいないですね。」

「まあ、行ってもらう世界ではこの技術はあんまり使われてないんですけどね。」

「そうなのですか。便利そうなのに、なにか理由でもあるのですか?」

「理由といいますか、なんといいますか・・・」


 それからは修行をしながら、異世界についてのことを少し教えてもらった。簡単にいうなら、その異世界では他人へと何かを教えるということが無償ではほぼ行われない。それが常識というのだから仕方がない。


「なるほど、優れた技術でもそれを独占しているものがいるだけで、広くは使われていないということでしたか。」

「そういうことです。能力の高いものでも知らない人や思いつかない人は多く、一般的な技術ではありません。」


 よく考えると、そういう意味では地球の方が異常なのかもしれない。様々な専門的な知識も誰かが独占するということもなく、全体の発展のために多くの人がそれを公表している。


「こういう常識のずれもあり得るということは学べてよかったです。」

「それでしたらなによりです。」


 こうして、修行は進んでいった。


---


 二日目はほぼほぼ魔力の流れを知るという修行で終わった花ではあったが、おかげで自分の中にある魔力を感じることができるようになっていた。コツをつかむとあっという間にできるようになった。そして、他人の魔力もすぐに感じ取れるようになっていた。


 魔力が感じ取れるようになると、昨日戦った生き物たちと再び同じように組み手を行うことになった。これは相手の強さをちゃんと感じ取っているのかを確かめるのが目的だ。


(こうして魔力が知れるようになると、この生き物たちの危険度が手に取るようにわかりますね。)


 さらにいうなら、相手の弱点もなんとなくわかるようになっていた。魔力は身体全体に均等に流れているわけではないことが感じ取れたからだ。明らかにうまく魔力が流れていない場所は攻撃の通りがよく、その場所が弱点なのだと察することができた。


 しかし、それだけではわからない相手もいるようだった。目の前にいるのは巨大な亀のような生き物。昨日は噛みつくために伸ばしてきた頭にカウンターを叩き込んで倒したのだが、今日の花はあえて甲羅部分を殴りにいった。


がごおおおおん!!


 とてつもない音が響き渡るが、残念なことに甲羅は割れることはなかった。予想とは違う結果に驚いた花ではあったが、冷静に状況を立て直し、昨日と同じように頭へのカウンターで巨大な亀を仕留めてみせる。


「ふむ、どうやら魔力だけで判断するのも間違いみたいです。」

「はい、そのとおりですね。魔力が行きわたっていない部分は、場合によってはそもそも魔力の強化が要らない、と判断された部分であることもあります。」


 その説明で花は少し理解した。肉体と魔力は補い合うためのものでもあるのだと。さきほどの巨大な亀、実は甲羅の部分にはほとんど魔力が流れていなかった。そのため、花は甲羅は見掛け倒しなのだと思い込み、頭よりも的の大きい甲羅を殴りに行った。


 ただ、結果は見ての通り。花の全力の攻撃すらも甲羅はちゃんと受け止めてみせた。それもそのはず、あの亀の甲羅はそもそも魔力の強化など必要がないほどに頑強だったからだ。魔力だけでは、相手の全てはわからないことを花は学び取った。


 この日はこうしてゆっくりと色々な生き物の特徴を観察しながら、戦っていくことで修行を行った。そして、その都度お手伝い役の白い球に色々なことを教えてもらった。


「さきほどの大きな人間のような生き物は余り魔力を感じませんでしたが、強い力を持っていたようです。」

「はい、オークですね。オークは魔力の扱いが苦手なので、その分身体を鍛えて補っています。魔力が高いオークとか見かけたら注意です。」

「その前に戦った大きな人間のような生き物はかなり多くの魔力を感じましたが、そちらは違うのですか?」

「あー、あれはトロールですね。トロールは魔力をため込む種族なので再生力や持久力に長けています。また、魔法への耐久力も高いです。オークは割と魔法には弱いですね、はい。」


 その言葉を花は聞き逃さなかった。そうだ、魔力というくらいなのだから、当然あるべきだった。


「魔法があるのですか?」

「あ、そうです。行ってもらう世界には魔法があります。」

「魔法の知識と魔法への対策も学ぶことは可能でしょうか?それは是非ともやっておかないといけません。」

「勿論可能です。それでは、明日はそちらを学びましょう。」


 そうか、魔法があるのか。花は少しだけワクワクしていた。もしかしたら自分も魔法が使えるのかもしれないと。しかし、真面目な花はすぐに気持ちを引き締めなおした。今日の修行は今日の修行でちゃんとやっておかないといけないからである。


---


 二日目の修行が終わった花は現状をある程度理解することができた。花の魔力は文字通り異常である。花の魔力を100としてあらわすなら、ほとんどの生き物の魔力は5に届いていない。魔力をため込むという種族のトロールですら10という感じである。


 昨日の時点でも苦戦しなかったドラゴン、地面を走る竜でランニングドラゴンというらしい。ドラゴンは肉体も強力ではあるが、魔力もかなり高い生き物の筆頭になる。その中でいうとランニングドラゴンは強い方ではない。しかし、それでもドラゴンである以上、普通の人間、普通の冒険者からすれば、十分に厄災となるレベルの生き物だ。


 そんなドラゴンですら、花の魔力が100なら、せいぜいが30である。さらにいうなら、昨日でも楽勝だったが、今日はもっと楽勝であった。花は徐々に魔力の使い方を学んでいたからだ。


(私は魔力が高いから勝てているとばかり思っていました。しかし、それだけではなかった。)


 昨日の花は魔力なんてほとんど使っていなかったのだ。もちろん、魔力無しで人間はドラゴンに勝つことなんて出来はしない。だから、魔力は使っていた、それもまた事実だ。ただ、花の肉体は普通ではないレベルで鍛え上げられており、その強さは異世界ではとんでもない力を発揮していたのだ。


「なるほど、これはまだまだ強くなる余地はありそうです。」

「はい、今の花さんはとてつもなく魔力が高いオークのようなものです。」

「いや、その例えはちょっと・・・」

「そうですか、申し訳ありません。」


 地球での『怪物』という呼び名も女性である花はあんまり気に入っていなかった。それが異世界では『魔力の高いオーク』と呼ばれるようになったらたまったものではない。異世界ではもっといい感じの二つ名をつけてもらいたいものだなと花は思うのであった。


---


 それからの日々はあっという間に過ぎていった。


 魔法のことを教えてもらった三日目、残念ではあるが、花に魔法は使えなかった。


「肉体の強化に魔力を使う人間は魔法は使えません。魔力は内で高めるか外に放つかのどちらかしかできないのが普通です。」

「その言い方ですと、両方できる方もいるのですか?」

「います。しかし、それは外に放つことができるものが、外に放つべき魔力を完全に操作して身体の強化もできるようにする場合です。逆はできません。」

「それは残念です・・・」


 魔法は使えなかったが、魔法についてはしっかり教えてもらった。魔法とは魔力を外に放つことで様々な効果を引き起こす技術。


「ここまで覚える必要ありませんが、魔法は神がちゃんと管理しています。」


 魔法は神が安全に使えるものをきちんと管理しているらしい。だから、基本的には新しい魔法を作り出すということはできない。新しい魔法だと思われているものは、そのときに発見されただけということだそうだ。


「あと、野生の生き物や人間以外の多くの種族は魔法を使うのに困りませんが、人間などの一部の種族は媒介となるものが必要です。」


 魔法は神の安全が確認されたものになるので、神に使用の許可が必要になるのだそうだ。そのための使用許可は基本的には種族によって決まった神への伺いとなるので、魔法の発動には問題ないのだが人間などの一部の種族はそうはならないのだ。人間などの種族は複数の属性の魔法を使える可能性がある。そういう種族は神への許可を届けるために、その神とのつながりを持つ道具を持っていないといけない。


「そもそも生まれたときから自然に魔法を使える種族が多いですから。人間は可能性が多い種族ですが、その分なんでもかんでも後で覚えていくことになるので、そういった部分では不利です、はい。」


 幸いなことに花は勉強も嫌いではなかったので、こういった知識を蓄えつつ、魔法への対処の仕方を教わって三日目は終わった。ただ、そもそも高い魔力があれば大体力業で防げてしまったのであんまり意味はなかったのかもしれない。


 四日目は総合的な修行を行った。


 倒すことが難しい生き物の倒し方を学んだり、魔力を利用した戦い方の実践などを行った。ここまで真面目にこなしてきただけあって、花は本当にすごい勢いでこの技術を習得していった。


「ここまでくれば普通に過ごしている限りは花さんを殺せるものはほとんどいないと思いますです。」


 これが白い球の評価である。しかし、同時に忠告もされた。


「ただ、花さんは世界一強いとかそういうレベルでもありません。実戦が圧倒的に足りていません。最初は命を大切に行動することをおすすめします。」


 それも納得できる話だ。花は調子に乗らないように気持ちを引き締めた。


 五日目は魔物について教えてもらった。


 異世界には凶暴な生き物だけでなく、神の加護から逸脱した生き物である魔物がいるそうだ。


「簡単にいうなら死の瀬戸際にたった生き物が生き残るために魔力を正しくない方法で使っている状態です。」


 魔物の基本は三つ。身体が大きくなる巨大化、その獣がもつ能力が増強される能力強化、そして体をバラバラにしても再生してしまう不死化なのだそうだ。それぞれ順番に戦ってみたものの、巨大化や能力強化の魔物はそれほど花にとっては脅威にはならなかった。


 その中で苦戦したのは不死化した魔物である。結果としては花は不死化した魔物を倒すことには成功した。30分ほど魔物化したオオカミと戦い続けた花はその間にそのオオカミを殺し続けた。結果として、再生する魔力を空にしたオオカミは復活できなくなって倒すことはできた。


「不死化した魔物を初見で倒すとは思いませんでした。」

「なるほど、負けるか諦める前提だったのですね。」

「はい、簡単に倒せる方法がありますが、聞きますか?」

「勿論です。毎回こんなことをやっていたら、それこそピンチになります。」


 方法を教えてもらうと至極簡単に不死化の魔物は倒すことができた。その方法は魔力を見ること、そして、相手の中にある濁った魔力を破壊することである。理屈はよくわからないが、不死化した魔物はその濁った魔力こそが本体なのだそうだ。だから、それを魔力をぶつけて破壊してしまえばあっさりと倒せるらしい。


「神の知識の代行にしては曖昧な答えなのが気になりますが。」

「残念ながら魔物は神の管理から外れたものなのです、はい。こちらにも満足のいくデータはありません。」


 なるほど、そういわれるとそうだなと花も納得した。


 その後は、巨大化したドラゴンの魔物と模擬線をやったのだが、さすがに花も苦戦を強いられた。巨大化とは肉体の強化といいかえられる。だとするならば、魔力が高い生き物が巨大化した場合は手が付けられない。強大な肉体を魔力で強化されるのだから。


 こうして、異世界で生きていくうえで非常に大事になる魔物の対処法も教えてもらった花ではあったが、一番重要な知識を教えてもらうのはこの翌日の修行のときであった。

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