モビルフォーミュラについて
これはスターライガシリーズに登場する架空の兵器「モビルフォーミュラ」についての設定を纏めたものです。
本編のストーリー進行に伴い加筆修正されると思うので、その時は再度ご確認ください。
※現在は「スターライガ∞」BOG編時点の情報を掲載しています。
モビルフォーミュラ(英語表記:Mobile Formula)――通称「MF」はスターライガシリーズに登場する機動兵器。MFの操縦者は「ドライバー」と呼称される。
・概要
栖歴2020年代末期に勃発した「第1次フロリア戦役」においてフロリア星人が投入した機動兵器「プロトタイプマシン(PM)」をルーツとしている。
機体の鹵獲や亡命フロリア星人から提供されたデータを基にオリエント連邦が初めて実用化し、コピー元といえるPMを上回る戦闘力を発揮することで勝利に貢献した。
少なくとも地球にはMF以外の実用的な機動兵器が存在しないため、何を以ってMFとするかは曖昧な部分も多い。
ただし、国際条約では大まかながら以下のように定義が定められている。
1.人型で四肢を有し、これを人体のように利用できること
2.全高が約4~5m程度であること
3.操縦者の身体が外部に露出する、開放式のコックピットであること
4.航空戦が可能な程度の飛行能力を有すること
5.宇宙空間でも行動可能な姿勢制御能力を有すること
6.戦車や軍艦といった強固な目標を撃破し得る火力を有すること
7.対戦車兵器や光学兵器の直撃に耐え得る防御力を有すること
8.従来から存在する兵器との連携が行えること
9.友軍の支援に依存しない、スタンドアローン的な単独戦闘能力を有すること
10.あらゆる脅威に対し直接的且つ持続的な戦闘を行えること
この中でも特に重要なのは1~3番の定義であり、これらを満たしてない限りいくら高性能でもMFとは見做されない。
2番は元々「既存の航空母艦の格納庫に直立姿勢のまま駐機できること」という要求仕様のために決められたものだが、無闇に大型化すると運用設備も更新しなければならないため、特に正規軍は機体サイズを一定の範囲内へ収めることに拘っている。
3番に関しては黎明期に密閉式コックピットも試されたが、諸問題により開放式のほうが主流となった。
密閉式は可変機の巡航形態(ファイター形態)で空気抵抗軽減を目的に使用されているものの、こちらも人型形態(ノーマル形態)では開放式になる。
4番の定義の関係でほぼ全ての機体が飛行能力を有しており、法律上の扱いは航空機に準ずることが多いほか、ほとんどの国でMFは空軍管轄(空母艦載機のみ海軍管轄)となっている。
ただし、オリエント国防軍は全ての機体及び人員を空軍で一括管理、ドイツ軍のMF部隊は陸軍所属であるなど、運用体制は各国の事情により異なる。
9番は地球人類がフロリア星人に敗北し、組織的戦闘力を失った場合にゲリラ戦を展開することを想定した要求であるが、2050年代以降の機体ではさほど重要視されていない。
以上のようにMF(特に22世紀以降のワンオフ機)は在来兵器を圧倒し得る戦闘能力を持っているため、畏敬の念を込めて「スーパーロボット」と呼ばれることがある。
・名称
「モビルフォーミュラ」という名前の由来には諸説あるが、一般的には「開発担当者の一人が適当に付けた名称が、現場から軍上層部に至るまで広がっていった」という説が信じられている。
開放式コックピットがフォーミュラカーを彷彿とさせ、航空戦用の空力パーツを纏った姿もどことなくF1マシンのイメージに近かったことから、前述の開発担当者が「人型ロボット(機動兵器)」と「レーシングカー」を結び付けたようだ。
ちなみに、MFとモータースポーツは決して無縁ではなく、アークバードのように自動車部門を所有するMFメーカーも少なくない。
ほとんどの機体には型式番号と愛称が付けられている。
型式番号については開発元が決める場合と運用者の命名規則に従う場合があり、前者はオリエント国防軍など旧連邦構成国のみが採用している。
そのため、オリエント国防軍には「FA21」「BA-110」「RM5-21」「RM5-25」など、運用者にとっては統一性の無い型式番号が乱立している。
MFの独自開発能力を有するスターライガは具体的な命名規則を持っておらず、型式番号は全く統一されていない。
ただし、同系統の機体の場合は似たような型式番号を使用しており、そこから関連性を予想することはできる。
また、型式番号とは別に管理用のコードナンバーが割り当てられているため、内部関係者なら容易に判別可能である。
・歴史(黎明期)
概要の項で述べている通り、MFは2020年代末期に亡命フロリア星人がもたらした技術を基に開発された。
当時の地球はニミッツ級航空母艦やF-15E ストライクイーグルといった20世紀の兵器を未だに運用していたが、それらがPMに対抗することは実質不可能であり、戦場で遭遇したら撤退または全滅の二択しかなかったのだ。
PMの特性を熟知するフロリア軍は各戦線で勝利を重ね、一時期は地球全体の約85%を占領下へと収めることになる。
この時点で多くの地球人は逆転勝利を諦め、中には侵略者へ尻尾を振る愚か者まで現れる有り様だった。
開戦から9か月ほど経ったある日、1機のフロリア軍輸送機がヨーロッパからウラル山脈を飛び越え、当時ユーラシアの秘境として一部マニアに知られていたオリエント連邦へ不時着する(ディアトロフ峠航空戦)。
この機体を操縦していた人物――アグダン・ギルテイ博士こそ、いくつかの傑作機を生み出してきた優秀なPM設計者だったのだ。
祖国の拡大政策を危険視するアグダン博士は元々地球側への亡命を計画しており、ヨーロッパ方面へ派遣された時に作戦を決行したのである。
彼は亡命成功の見返りとして自らが所有する技術資料を提供。
PM相手に苦戦していたオリエント連邦軍(オリエント国防軍の旧名称)は早速「対抗兵器」の開発へ着手し、当時軍に在籍していたライラック・ラヴェンツァリ博士主導の下、敵も味方も欺きながら反攻作戦「アグダン・プロジェクト」の準備を進めるのだった。
アグダン博士がもたらしたオーバーテクノロジーの一部は他国にも提供され、地球とフロリアの技術格差は急速に縮まっていく。
亡命事件の約1年後には史上初の実用MF「アークバード・FA01 パルトリオン」がロールアウトし、月間30機程度の量産体制まで整えられていた。
ところが、機動兵器という新たなカテゴリへの転換訓練は困難が伴い、実戦参加には程遠い状況に軍上層部は頭を抱えることになる。
オリエント連邦軍が最も欲していたのは、機動兵器の扱いに長ける人材だったのだ。
MF部隊の練成を地道に進めていた2029年2月、領空侵犯を犯したフロリア軍エース部隊がオリエント連邦軍へ投降するという事件が起こる(ダーステイ隊亡命事件)。
彼らは敵味方双方に名を知られる存在だったが、何かしらの理由で督戦隊に追われる身となっていた。
オリエント連邦軍は練成途中のMF部隊を急遽出撃させ、苦戦を強いられながらも督戦隊を見事撃退。
前述のエース部隊の面々は無事に亡命を果たし、史上初となるMFの実戦投入は見事成功を収めたのである。
MFが実戦に堪え得る性能を持つことが証明され、オリエント連邦軍はMF部隊の増強を決定。
亡命してきた元フロリア軍エース部隊――「スターサンダース」と名を改めた同部隊もMFへ機種転換を行い、「機動兵器のエキスパート」としてMFドライバーたちの指導に当たる。
その結果、パルトリオンを乗りこなせるようになったMF部隊の練度は大きく向上し、3月に行われた本土防空戦ではキルレシオ10:1という圧勝を見せた。
この勝利で勢いを得た地球側は息を吹き返し、劣勢だった戦線を徐々に押し返していく。
2029年12月の第2次オリエント本土防空戦で敵戦力を一気に削り取り、フロリア星人を地球から追い出すことに成功する。
年が開けると戦場は宇宙へ移行し、地球側は初の宇宙戦争に苦戦しながらもフロリア軍の切り札である宇宙要塞を攻略。
2030年2月4日、フロリア軍残存戦力の撤退により戦いは終わりを告げるのだった。
MFという革新的な兵器の実用化で勝利に貢献したオリエント連邦は、国際社会における発言力を一気に高め、列強諸国への仲間入りを果たすことになる。
・世代区分
【第1世代MF】
第1次フロリア戦役時代に開発された、黎明期の機体を指す。
「開放式コックピットを持つ人型ロボット」という基本概念はこの時点で既に確立しており、後に開発される全てのMFの基礎となっている。
アークバード・FA01 パルトリオンとそのバリエーション機、マドックス・LSTR-XM120 メドゥーサなどが該当する。
【第1.5世代MF】
第1次フロリア戦役終結後から第2次フロリア戦役の間に開発された機体を指す。
基本的には第1世代機の発展型であるが、変形機構を有する可変機が初めて実用化されている。
史上初の可変型MFであるアークバード・XFA02 ターミネーターなど、ごく一部の機体がこの世代に分類される。
【第2世代MF】
第2次フロリア戦役時代に開発された機体を指す。
推進技術及び空力制御システムが劇的な進歩を果たし、エアロパーツの小型化に成功。
その結果、第1.5世代以前の機体よりも洗練されたデザインとなっている。
マドックスが開発した「バルバッツァ」の名を冠する機体群、アークバード・FA04 イルグテナなどが該当する。
【第3世代MF】
第2次フロリア戦役終結後から21世紀終わりまでに開発された機体を指す。
最大の技術革新は小型軽量且つ核融合炉並みの出力を誇る「E-OSドライヴ」の実用化である。
この機関の登場によってMFは一気に高性能化が進み、新時代を担う兵器としての片鱗を見せ始めた。
RMロックフォード・RM5-20 スパイラルやアークバード・FA20 スターブレイズなど、E-OSドライヴ搭載の量産機が主に該当する。
【第3.5世代MF】
22世紀初頭――所謂「バイオロイド事件」の時期に開発された機体を指す。
世界初のプライベーター「スターライガ」が投入した数々のワンオフ機は第3世代準拠の技術が用いられていたが、その性能は同じ第3世代機を凌駕するほど高く、MFという兵器の在り方を一変させてしまった。
XRG-30 パルトナを筆頭とするスターライガ製MF全般、そしてCA-6B エクスカリバーなどが該当する。
【第4世代MF】
ルナサリアン戦役時代――2120年代から30年代前半に開発された機体を指す。
第3.5世代機のデータが情報開示によって広く普及し、先進技術を搭載する高性能機が続々と現れる時代が到来。
様々な技術革新が実現した結果、MFはついに陸空宇を制する主力兵器となった。
なお、ルナサリアン(月の民)が運用する機動兵器「サキモリ」の一部もこの世代に含まれる。
史上初の可変型量産機であるRMロックフォード・RM5-25 オーディールなど、第4世代機は枚挙に暇が無い。
【第4.5世代MF】
将来的に登場が予見されている次世代機。
第4世代機をベースに「特別なチカラを持つドライバー」の能力を引き出す機能が加わるらしいが、現時点では詳細不明である。
・構造
MFの部位は大まかに分けて胴体、腕部、脚部、背部(バックパック)の4つとなっており、頭部に相当する部分は存在しない。
首から上を意図的に省いた姿はデュラハンに喩えられることもある。
約100年に亘る歴史の中で様々な機体が作られたが、「胴体上部に開放式コックピット」「バックパック内部に機関を搭載」というレイアウトは第1世代機の時点で既に完成しているため、この部分に関しては現用機でも変わらない。
【内部構造】
装甲を全て取り外すと機体を支える骨格――フレームが確認できる。
関節可動域やペイロードといった基本性能に関わる部分の一つであり、フレームの完成度が低いと様々なトラブルが頻発し、高性能化どころの話ではなくなってしまう。
そのため、MF業界には「良いMF作りは高品質なフレーム作りから」「優秀な技術者はフレーム設計に精通するべし」という格言が存在している。
外見が全く違ってもフレーム自体は共通設計という機体も多く、それらは俗に「姉妹機」と呼ばれる。
【胴体】
胴体にはコックピットとアビオニクスの搭載スペース、吸気用インテークが配置される。
前述の通りMFのコックピットは開放式であるが、見かけに反して実戦での被弾率は低い(もちろん、運が悪ければ直撃するが)。
転倒時の安全対策としては展開式のロールバーや固定式のロールフープ、練習機ではコックピット上部を広くカバーする「HALO」などが実用化されている。
また、コックピット内にはロールケージが張り巡らされており、直接攻撃を受けても簡単には潰されないようになっている。
胸部を構成するインテークは冷却効率に深く関わる。
吸気口を広げれば空気の流入量は増えるが、防御力の低い部分も生まれてしまうため、機体によっては可動式のシャッターを装備している。
シャッターが無い機体でも外付けのカバーが用意されており、寒冷地や宇宙ではこれをインテークに被せることで流入量を抑え、オーバークールによる悪影響を防ぐ。
なお、冷却方式はオリエント系メーカー及びルナサリアンは空冷、日米メーカーの機体は水冷といったように、国ごとの設計思想が反映されやすい。
【腕部】
MFの定義1番の存在もあり、全ての機体が人体に限り無く近い構造の腕と手(マニピュレータ)を持つ。
これによって人間が扱える道具をほぼ全て利用できるため、MFの携行武装は刀剣類や銃火器を大型化した物が多い。
5本指のマニピュレータは精密作業を得意としており、敏捷性と小柄な機体サイズを活かした工作活動に投入されるほか、デモンストレーションでキャッチボールなどを行うことがある。
ちなみに、人体と異なり関節部は全て独立しているので、手首だけをグルグル回すといった動作もできる。
肩部は上腕と胴体を繋ぐ部分となっており、ここの設計がマズいと腕部の操作性に悪影響を及ぼす。
肩部を守る装甲は塗装しやすく目立ちやすいためか、国籍マークや部隊章をこの部分に描くよう指定する組織も少なくない。
【脚部】
MFの脚部は主に腰と足で構成される。
上半身と下半身の接続部分になる腰部はMFの動作全てに関わっており、開発において最初に設計を行う部分でもある。
脚部は地上における走行・歩行・降着装置となるほか、空中及び宇宙では総推力の20~30%を賄う推進器としての役割を持つ。
通常時の膝は人間とほぼ同じ可動域だが、状況に応じて少しだけ逆関節のように動かすこともできる。
上半身の重量を全て支える役割もあるため、フレーム強度はコックピット周辺に次いで高く、実戦では脚部を盾代わりにして急所を守るテクニックも編み出されている。
足裏にはインラインスケートのような小さな車輪が内蔵されており、駐機中の移動作業を容易なものとしている。
基本的には引き込み機構とブレーキだけのシンプルな構造だが、滑走中の速度に耐え得るだけの強度を有しているため、平坦な路面であれば背部スラスターを噴かすことで所謂「ローラーダッシュ」が行える。
ただし、車輪は横方向から加わる力に弱いため、ほとんどの機体ではローラーダッシュは推奨されていない。
【背部】
胴体後方には機関部やメインスラスターを収めた「バックパック」が装備される。
バックパックはMFにおいてフレームを持たない唯一の部位であり、セミモノコック構造によって強度と内部空間を確保している。
外部にハードポイントや固定武装を配置する機体も多く、実戦や戦闘訓練ではバックパックに大量の武器を取り付けた姿が見られる。
重要部品が数多いわりに敵からは狙い易いため、生存性向上を最優先した分厚い装甲で覆うだけでなく、自動消火装置などダメージコントロールにも注意が払われている。
ドライバーが自らの搭乗機を信頼できるか否かは、バックパックの安全性に懸かっていると言っても過言では無い。
推進器として見た場合、総推力の60~70%を担うメインスラスターは機動力に直結する部分である。
黎明期の機体は推進技術が未熟だったため、揚力を確保できるようエアロパーツを持つことが特徴だった。
第2世代機以降は技術革新により飛行能力が向上し、エアロパーツを小型化ないし廃止した機体も多い。
バックパックと機体は直接接合されているわけではなく、現場の作業で取り外すことができる。
このモジュール化により「修理より新品へ交換したほうが早い」といった場合の整備性を高めているほか、多種多様なバックパックを使い分けることで汎用性を高めた機体もある。
変わったところでは改良型バックパックを「アップデートキット」と称して販売し、比較的安価に従来機種の延命を図る手法も存在する。
【装甲】
MFの装甲材はパルトリオンの開発と同時期に実用化された「リモネシウム・コバヤシウム合金(RK合金)」が主流である。
軽量且つ高強度、そして大気圏突入や放射能汚染にすら耐え得るRK合金は重量制限がシビアなMFにうってつけであり、パルトリオンから現代の最新鋭機に至るまで改良を重ねながら使用されている。
その防御力は1mmの厚さで「M61 バルカン」の20mm口径弾を容易く弾き、10mmになれば戦車砲の直撃さえ防ぐという。
光学兵器が普及してからはレーザー及びビームに耐性を持つ成分を塗料へ混ぜており、エネルギー量が低い攻撃なら中和できるようになっている。
ただし、産出地が限られるリモネシウム及びコバヤシウムは価格も相応に高く、コスト削減のためにアルミニウムやチタンを使用する場合もある。
一方、コックピットの内張りには「フェムトファイバー」という素材が使われている。
パイロットスーツ(MF分野ではコンバットスーツと呼ぶ)にも用いられるこの合成繊維は驚異的な防火性・防弾性・防刃性・防爆性を持ち、装甲が貫かれた場合は文字通り「最後の壁」となる。
コックピットに直撃を受けながらも、内張りとコンバットスーツのおかげで一命は取り留めたという話はよく聞かれる。
なお、フェムトファイバーに関する技術はオリエント連邦の企業が事実上独占しているため、日米メーカーの機体は強化カーボンカーボン(RCC)で代用することが多い。
【塗装】
正規軍のMFには軍用機とほぼ同じ迷彩パターンが採用されており、各国の事情を反映した様々なデザインが見受けられる。
代表的な迷彩パターンとしてはオリエント国防空軍のフェリス迷彩(白+黒+灰)、アメリカ空軍のロービジ塗装(グレー2色)、日本海軍の洋上迷彩、ロシア航空宇宙軍のブルー系迷彩、ヨーロッパ諸国の森林迷彩などがある。
これに対して建前上は「民間企業」であるプライベーターは様々な理由から迷彩塗装を避け、白や赤といった目立ちやすい色を使用している。
ただし、色合いこそ鮮やかだが艶消し処理を施しているほか、彩度自体はかなり低めに抑えられているため、実戦では見かけに反して判別し辛いと云われている。
【アビオニクス】
MFが搭載する電子機器は戦闘機に概ね準じており、無線通信装置、機上レーダーシステム、戦術データリンクシステム、エアデータ・コンピュータ、多機能航法装置、自動操縦装置、敵味方識別装置、自己診断システム、自衛用電波妨害装置、各種警報装置、GPS受信機といった基本的な物は全て搭載している。
当然ながらMFドライバーはこれら電子機器の機能を一通り覚え、必要に応じて適切な操作ができるようにならなければならない。
・動力
【第2世代機まで】
バックパックに内蔵した燃料電池による電気駆動。
この時代の技術力では小型軽量且つ高出力な機関の開発が難しく、当時既に普及していた燃料電池に白羽の矢が立った。
燃料電池搭載機の新規開発は21世紀中に終了したが、MF後進国では22世紀に入っても現役で運用されている。
【第3世代機以降】
小型軽量且つ核融合炉並みの出力を誇るE-OSドライヴの燃料「E-OS粒子」からエネルギーを抽出し、操縦装置用の光ケーブルを介して機体全体へ行き渡らせる。
異常なまでの高出力化によって光学兵器の安定運用が可能となり、レーザーライフルやビームソードが主兵装として装備されるようになった。
当初は粒子消費効率の悪さから稼働時間が燃料電池時代以下だったが、技術進歩により第4世代機ではアメリカ大陸横断が可能なレベルにまで延長されている。
【推進装置】
空中及び宇宙における移動はスラスター噴射によって行う。
バックパックと脚部のメインスラスターは大まかな加減速、それ以外のサブスラスターは姿勢制御及び速度の微調整に用いられる。
ほとんどの機体はリアクションホイールを搭載しているため、非戦闘時の姿勢制御には推進剤を消費しないこちらが使用される。
黎明期のMFは宇宙機と同じハイパーゴリック推進剤(ヒドラジン+硝酸)を使用していたが、2040年代にオリエント連邦の企業が高効率且つ安全な気体推進剤の開発・規格化に成功し、第2世代機以降はそちらが主流となっている。
推進剤は外部環境による影響を少なからず受けるため、投入される戦域に応じてブレンドを使い分けている。
・MFの操縦
【コックピットについて】
MFのコックピットはとにかく狭いことで有名であり、居住性度外視の設計から「F1マシンに乗ってるみたいだ」と評する者もいる。
開口部を無闇に広げると機体剛性や防御力の低下を招くため、基本的にはドライバー側がコックピットに収まるよう努力しなければならない。
ドライバーは30度ほど背中側へ傾いたシートに6点式のベルト(装着には外部からの補助が必要)で固定され、手元の操縦桿と足元のペダルで機体を制御する。
ちなみに、黎明期の機体はF-16やF-35、グリペンといった戦闘機から一部部品を流用していたと言われている。
可変機にはコックピットを覆う可動式カウルが用意され、ファイター形態時の空気抵抗を軽減する役割を持つ。
カウルの外部にはセンサーが複数配置されており、これが取得した情報を内側の全天周囲モニターへ映し出すことで視界を確保している。
【操縦装置】
手元にある2本の操縦桿は主に腕部を操作する。
右側が右腕、左側が左腕にそれぞれ対応している。
光ケーブルと電気式アクチュエータを組み合わせた「パワー・バイ・オプティクス(PBO)」を採用しているため、操縦桿に力を加えた際の入力信号で腕部が動くようになっており、レシプロ機のような機械的接続は存在しない。
理論上は固定されていても問題無いが、ドライバーが良好な操縦感覚を得られるよう、実用機では3~4cmほど動く仕様になっていることが多い。
また、戦闘機と同じく「HOTAS」という人間工学に基づいた概念が導入されており、戦闘時に多用するスイッチ類を全て操縦桿に纏めることで、ドライバーの疲労を抑えつつ効率的な運用を可能としている。
足下にある2枚のペダルは「スロットルペダル」と呼ばれ、その名の通りバックパック及び脚部スラスターの制御を担うほか、脚部自体を動かす際にも用いる。
右側が右脚、左側が左脚にそれぞれ対応している。
ペダルにもPBOが採用されており、上下左右に圧力が加わることで入力信号が送られ、機体の脚部に反映されるという仕組みである。
ニュートラルポジションの少し手前が「スロットル開度0%」になっているため、航空宇宙戦モード(後述)で加速したい場合はペダルを踏み込むことでスロットル開度を高くしていく。
減速する場合はニュートラルに戻せば自動的に推力が落ちるが、急減速が求められる際はつま先を上げることで逆噴射を行う。
一方、変形機構を有する機体のファイター形態では操作方法が大きく変化し、戦闘機に極めて近いものとなる。
具体的には右操縦桿が姿勢制御、左操縦桿が推力調整、スロットルペダルが左右の微調整(ヨーイング)を担う。
可変機ではこのように機体特性と操作方法が変わりやすいため、普通の機体よりも高い技量を求められる傾向にある。
【モード変更】
MFは地上戦、空中戦、宇宙戦の全てに対応できることが求められるため、自機が今置かれている戦場で効率的な戦闘機動を行えるよう、主に脚部の動作を変更する機能が用意されている。
空中戦及び宇宙戦は「航空宇宙戦モード」として一纏めにされ、離着陸専用のモードもこの下に置かれる。
黎明期の機体は手動で切り替えていたが、第2世代機以降は各種センサーが周辺環境を認識することで自動的に変更されるようになった。
地上戦モードは移動方法によって更に細分化されており、ほとんどの機体は人間のように歩く「地上・歩行」、脚部スラスターを用いる「地上・ホバー」、そして駐機中に地上を走行するための「タキシング」を持つ。
「地上・歩行」ではスロットルペダルで前後左右に歩き、踏み込みでスラスターによる跳躍を行う。
「地上・ホバー」ではペダルの踏力でホバー状態の速度を制御し、このまま左右に力を加えればその方向へ旋回する。
「タキシング」は踏力による操作がメインスラスターに切り替わるだけだが、安全のため最大推力は大きく制限される。
自動選択してくれる現行機種では滅多に起こらないが、第1世代機ではヒューマンエラーによる選択ミスが度々発生していた。
地上で航空宇宙戦モードにするとまともに立てなくなり、その逆だとスラスターの電子制御が機能せず宇宙で溺れるハメになる。
【計器類】
コックピットが狭いMFは計器盤を置くスペースが無いため、速度や高度といった基本情報は立体映像投映装置「ホログラム・インターフェイス・システム(HIS)」に全て表示される。
21世紀初頭に「フローティング・タッチディスプレイ」の名で研究が進んでいたこの技術は、MFに採用されたことで民間向けにも広く普及するようになった。
HISはドライバーから見て正面及び左右の三方向に映像が浮かんでおり、指先で触れるとタッチパネルのように操作することができる。
通常運用時は正面に基本情報及び射撃武装使用時の照準(擬似スコープ)、左にレーダー画面、右に機体情報を表示している。
なお、可変機でカウルを閉じている場合は左右の情報を全天周囲モニターへ表示し、HISは正面だけを使用する。
MFも機械である以上、メカニカルトラブルによりHISが表示できなくなる可能性を常に抱えている。
そのため、高度計・姿勢指示器・速度計・方位計・時計の5大計器には予備計器の装備が義務付けられており、これらは狭い計器盤に纏めて配置されている。
オリエント系メーカーはアナログ式、日米メーカー及びルナサリアンは非常用電源付きのデジタル式を採用している。
【脱出装置】
実戦運用や高等訓練を想定している機体には必ず脱出装置が装備されている。
ドライバーの両脚の間には警戒色で塗られたハンドルがあり、これを強く引くことで射出座席が作動。
自動でパラシュートを展開後、バーニアによる減速を行いながら着地または着水する。
厳密には補助計器盤の下をドライバーの脚が通る構造のため、脱出時はサバイバルキットを載せたコックピットブロック自体を射出するカタチとなっている。
また、ファイター形態の場合は脱出時にカウルが先に吹き飛ばされ、形態問わず脱出できるよう配慮が為されている。
ちなみに、オリエント系MFの大半が採用しているラスヴェート社の脱出装置は、音速以上での射出も公式にサポートしているが、それ以外のメーカーは「危険なので可能な限り避けるべき」という見解を示している。
脱出装置自体は大気圏内外問わず使用可能だが、パラシュートに関しては宇宙運用時は取り外されることが多い。
【操縦の難易度】
各種電子制御による操縦支援システムやリミッターが採用されているとはいえ、直立二足歩行且つ重心位置が高いことから物理的に不安定な存在であり、操縦には相応の技量が要求される。
実用化当初は戦闘機パイロットから機種転換する者も多くいたが、2040年代以降はMF操縦に特化した訓練カリキュラムが各国で確立され、MFドライバーのスペシャリスト化が急速に進んだ。
戦闘機とMFは基本特性が大きく異なるため、双方を高いレベルで乗りこなせる人間は極めて少なく、その中で戦果を挙げた人物はレティ・シルバーストン(史上初のエースドライバーだが、機種転換以前はエースパイロットだった)などごく一部に限られる。
また、狭いコックピットの中で戦闘機よりも過酷なG(高度な戦闘機動では最大12Gに達する)と大気圏内外の環境変化に耐えなければならず、ドライバーを志す者には超人的な身体能力及び精神力が要求される。
少なくとも2132年時点では機体性能に人間が追い付いていないのが現状であり、それを解決できる技術革新が待たれている。
ほとんどの機体はリミッターにより性能が8割程度に抑えられているが、ごく一部の高性能機はドライバーの自己責任によるリミッター解除機能を持つ。
リミッター解除時は電子制御をパフォーマンス重視へ切り替え、機体が持つ最高性能を限界まで引き出せるようになるが、ただでさえ高い操縦難易度は大きく跳ね上がる。
・MFの兵装
【携行武装と固定武装】
MFの武装には大きく分けて2種類の搭載方法がある。
レーザーライフルやビームソードといったマニピュレータを介して使う武装は「携行武装」に分類され、持ち替えによる汎用性の高さや規格化及び改良の容易さ、機体その物をシンプルにできることが長所である。
一方、敵機に払い落とされるなど紛失するリスクが常にあるほか、腕部を失うと武器を扱えなくなる(=戦闘能力の喪失)という短所も抱えている。
固定式機関砲のような機体に直接取り付けられている武装は「固定武装」に分類され、近接航空支援など射撃戦を重視した機体に多く見受けられる。
その性質上、固定武装と呼ばれる物の大半は射撃武装に分類される。
狭義においては取り外した状態での運用を想定していない、設計段階から機体に組み込まれている武装を指す。
長所としては高い安定性がもたらす命中精度向上、光学兵器の場合は良好なエネルギー効率による高出力化、そして四肢を失くしても使用可能な点などが挙げられる。
短所としては機体設計に対する制約、固定化されていることによる取り回しの悪さ、被弾時の誘爆リスク増加などがある。
マイクロミサイルポッドなど任意にパージ可能なオプション装備は、広義の意味では固定武装に分類されるものの、携行武装の特徴も部分的に持ち合わせている。
【射撃武装】
MFの携行射撃武装は歩兵が使用する銃器を拡大発展させた物が一般的であり、ハンドガン、各種ライフル、ショットガン、マシンガンが標準装備として多く見受けられる。
火力を求める機体ではガトリング砲や無反動砲、ミサイルランチャー、レーザーランチャー、MFサイズの携行式榴弾砲(ハウィッツァー)といった重火器が装備されている。
固定射撃武装としてはほとんどの機体が迎撃・対人戦用に内蔵する小口径機関砲、バックパックなどに装備されるキャノン砲、ミサイルポッド、レールランチャー(大型レールガン)などがある。
どちらにも分類されないミサイル類は四肢が使えないファイター形態における主兵装となっており、攻撃力低下と引き換えに小型軽量化を推し進めた所謂「マイクロミサイル」が広く普及している。
戦闘機が使用するような大型タイプは数発しか搭載できないため、これらは大火力が要求される任務に限り用いられる。
発射される物体に何を用いるかは、射撃武装の特性を大きく左右する極めて重要な構成要素である。
古典的な実包や砲弾、ミサイルは「実体弾」と呼ばれる。
実体弾武装は技術的には信頼性が確立されたジャンルであり、品質管理が適切ならば簡単には壊れないタフさを持ち味とする。
また、光学兵器が普及すると大気圏内外で威力が変動しにくい安定性やバリアフィールド貫通能力、そしてエネルギー消費の少なさといった新たな長所も見い出された。
逆に短所としては「弾薬の存在による重量増加」「(光学兵器と比べると)弾速が遅い」「反動に伴う命中精度低下」といった点が挙げられている。
一方、高エネルギー体を発射する射撃武装は「光学兵器」と呼ばれる。
2132年時点ではレーザーを用いるタイプしか実用化されていないため、実質的には「レーザー兵器」とも言えるが、現実世界の「レーザー」とは名前が同じだけの別物――我々にとっては全く未知の技術である可能性にも留意してもらいたい。
光学兵器の強みは何と言っても「高出力化=火力強化の容易さ」「弾速の速さ」の2点が挙げられる。
特に前者は動力部からのエネルギー供給だけで達成できるため、キャノン系武装に光学兵器(レーザーキャノン)が採用されやすい理由となっている。
後者に関しても発射したら即着弾というほどではないが、それでも実体弾に比べたら遥かに速く、一般人レベルの動体視力では目視回避は困難である。
前述の2点の陰に隠れがちだが、光学兵器には「攻撃力のわりに反動が小さい」「実包が無いことによる軽量性」「直進性の高さ」といった、実体弾武装とは対照的な長所が多い。
もっとも、それは短所に関しても同様であり、「大気圏内におけるエネルギー減衰が大きい(水中の相手には無力)」「高エネルギー体を扱うことに対する危険性」「バリアフィールドの突破が苦手」「現状の技術では曲射ができない」など、レーザーの性質上解決が難しい問題も無いわけではない。
実体弾武装と光学兵器には明確なメリット・デメリットがあるため、機体特性や任務内容に合わせた装備選択が行われている。
【格闘武装】
MFの格闘武装は取り回しに優れる携行式が大半を占め、人類が使用してきた刀剣類や長柄武器を現代的にリファインした物が多い。
そのため、最新技術を詰め込んでいるはずのMFが原始的な戦いをしているという、珍妙な光景を目の当たりにすることも少なくない。
これは「敵MFを確実に仕留める場合は近距離戦へ持ち込んだほうが良い」「相対するドライバーの力量が近いほど、射撃戦では決着が付き辛くなる」という理由に因るものであり、対MF戦を想定した機体ほど格闘武装の運用に重きを置いている。
生身の人間が使うような、金属製の刀身を有する武装は「実体剣」と呼ばれる。
日本軍が制式採用している日本刀型の刀剣(機械化軍刀)や、ルナサリアンの標準装備「カタナ」が代表的な実体剣である。
この他、射撃特化の機体が自衛用のナイフやダガーなどを装備する事例も見られる。
実体剣は部品数が少ないため保守整備が容易で、更には誘爆の危険性やアビオニクスへの悪影響も全く無いことが長所として挙げられる。
そして何より、バリアフィールドを少ないエネルギー消費で切り裂けることが最大の強みである。
ただし、重量が嵩張りやすいことから慣性モーメントが大きいうえ、雑に扱うと簡単に折れてしまうため、自由自在に振り回すには相応の訓練が要求される。
古典的な実体剣に対し、スペースオペラのような光の刃を形成するタイプは「ビーム刀剣類」と呼ばれる。
スターライガシリーズの「ビーム」はレーザーと同じ技術であり、レーザーが固定化されるようバイアスを掛けたものがビームである。
ビームソード(刺突重視)やビームサーベル(斬撃重視)など、MFの武装としてはこちらの方が主流になっている。
ビーム刀剣類は使用時しか刀身を形成しないため、小型軽量で取り回しに優れており、慣性モーメントも比較的小さい。
また、機体から直接エネルギー供給を受けるので基本攻撃力が高く、実体剣よりも切れ味は鋭い傾向がある。
扱い易さについては実体剣を上回る反面、エネルギー切れや柄破損時の誘爆など、高エネルギー体を扱うが故の短所を抱えている。
ちなみに、実体剣とビーム刀剣類は互いに切り結ぶことが可能である。
何かしらの理由で格闘武装が使えない場合、MFは四肢を用いた徒手空拳で戦うことも想定されている。
基本的には簡単な近接格闘術しか再現できないが、XWRI-4 リグエルなど格闘戦特化の機体は特殊なモーションパターンが用意されており、総合格闘技顔負けの動作が可能な場合もある。
なお、関節可動域はどの機体もあまり変わらないため、高い操縦技量を持つドライバーなら格闘機以外でも複雑な技を放てるという。
【防御兵装】
MFは優れた運動性を以って攻撃を回避するのが基本だが、それが間に合わず被弾を覚悟しなければならない場合に備え、左腕に騎士を彷彿とさせるシールド(盾)を装備している機体が多い。
「シールドは左腕に装備しなければならない」というルールは無いものの、MF自体がオリエント人に多い右利きを想定した設計であるため、オリエント連邦以外でもこれがデファクトスタンダードと化している(右腕からの攻撃は左腕のほうが受け止めやすい)。
数回の戦闘で破壊されることを前提としているので、素材には頑丈且つ比較的安価なチタンやオリハルコンといった合金が使用される。
シールドの大きさは機体特性に合わせて設計されるが、量産機では作戦内容やドライバーの好みに対応できるよう数種類用意され、同一機種でも異なるサイズのシールドを用いる場合がある。
逆にワンオフ機では専用設計のシールドを使用することが多いほか、軽量化を追求した機体の中には重量が嵩張るシールドを採用せず、簡易的なディフェンスプレートやガントレットに留める機体も見受けられる。
ルナサリアン戦役時代に登場したRM5-25 オーディール系列機では従来のシールドに代わり、ビーム刀剣類の技術から派生した非実体盾「ビームシールド」を世界で初めて採用している。
この技術の登場は従来型シールドを指す「実体シールド」というレトロニムの誕生も意味していた。
ビームシールドは実体シールドに付き物の破損リスクが無く、使用時以外は展開しないので取り回しに優れるという明確な長所が存在する。
ただし、防御以外には使えないなど汎用性に欠けているほか、多用すればするほどエネルギーを消費していくなど、実体シールドでは無縁だった短所もいくつか抱えている。
ちなみに、オーディールはシールド移行期の機体であり、小型実体シールドも保険として用意されている。
シールドよりも広く普及し、戦闘を想定した実用機の必須装備となっているのがチャフ・フレアディスペンサーである。
技術的には小型軽量化されていることを除けば航空機用と同じであり、主にミサイルの追尾を振り切る際に大量のデコイ(アルミ塗装したフィルムと火工品)をばら撒いて使う。
【追加装備】
ごく一部の機体は大掛かりな設計変更をせずに戦闘能力を増強させるため、補助ブースターや増加装甲をユニット化した追加装備が用意される場合がある。
オーディール系列機による使用を前提に同時開発された「G-BOOSTER」などが特に有名だろう。
本体と追加装備は主に分離ボルトで接続されており、何かしらの理由でパージが必要な場合は素早く排除できるようになっている。
【その他の装備】
MFは航続距離が比較的短い傾向にあるため、長距離飛行が予想される場合は予備の燃料及び推進剤を装填した「ドロップタンク」をハードポイントに装備する。
会敵時などは残量にかかわらず投棄し、デッドウェイト化して動力性能に悪影響を及ぼさないよう配慮されている。
なお、武装搭載量を重視する場合はドロップタンクを装備せず、空中給油機からの補給で燃料及び推進剤を必要量確保している。
直接的な戦闘行為以外の目的に使用される装備としては、偵察任務用の戦術偵察ポッド、電子戦用の電子戦ポッド、MF同士での空中給油を可能とするエネルギーサプライポッド、簡易的な修理キットを積み込んだリペアポッド、少量の貨物を積載できるフレイターポッドなどがある。
これらは内部こそ大きく異なるものの、外装は使い勝手が良いドロップタンクの筐体を流用していることが多い。
・MFの運用
【拠点】
高度な技術を多数用いるMFは専用設備を擁する基地や母艦が必要となる。
ただし、大型機でも全高6m以下と機動兵器としては非常にコンパクトなため、単に保管するだけならガレージや倉庫を利用することもできる。
事実、スウェーデンなど防衛戦闘を重視する国では民間施設に擬装した掩体壕を建設し、有事の際はそこに機体を隠すという戦略を採用している。
【法律上の扱い】
概要の項で述べている通り、航空法においては軍用機と同等に扱われることが多い。
スターライガなどプライベーターが運用する機体は民間機として登録されているが、こちらも戦時体制下の航空管制では軍用機と見做される(平時はゼネラル・アビエーション扱い)。
保安基準は(オリエント連邦の場合)正規軍もプライベーターも共通であり、官民問わず所有機材に対する定期検査義務を課している。
【保守整備】
MFの重量は重くても3~4t以下、軽い機体ならF1マシン並みの600kg程度しかないため、駐機中に移動が必要な場合は人力で押す光景がよく見られる(この仕事は主に新人メカニックが行う)。
1機のMFに専属するメカニックの数は12人程度と省力化が進んでおり、彼らの中には一人のドライバーを長年担当し続ける者もいる。
メカニックたちのリーダーは「チーフエンジニア」と呼ばれ、技術者育成が盛んなオリエント国防空軍及び同軍出身の人材が多いオリエント系プライベーターでは、エースドライバーを中心に専属チーフエンジニアが用意されている。
もちろん、立場上は特定のドライバーに専属している場合でも、必要であれば他のドライバーの面倒を見ることも少なくない。
【離着陸と発着艦】
推力重量比が極めて高く、超低速域での姿勢制御能力にも優れるMFは垂直離着陸が可能である。
また、前述のように機体重量が比較的軽いため、垂直着陸能力を活かせば普通の道路や建築物の上に降りることもできる。
着陸場所の制約が極めて少ない点はMFならではの強みだが、実際の運用においては飛行機のように滑空しながら着陸(着艦)することも多い。
これは推進剤の節約が最大の理由であるが、可変機の場合はファイター形態での垂直着陸が難しい(高速域重視の操縦特性になっているため)という事情も関係している。
一方、離陸に関しては緊急時を除き飛行機と同様の滑走を行ってから飛び立つ。
こちらも推進剤を少しでも節約することが目的であるほか、横方向の運動エネルギーを利用して上昇力を稼ぐという意図も兼ねている。
艦載機のカタパルト発艦も同様であり、最も効率が悪い「速度ゼロからの加速」による推進剤消費を抑えるために行う。
【混線】
スターライガシリーズにおける混線とは主に「何かしらの理由で敵味方の無線通信が交錯し、互いに筒抜けになってしまうこと」を指す。
世界規模の非常事態が発生した際の緊急連絡を目的とする世界共通周波数帯域「オープンチャンネル」に起因する現象だが、格闘戦などで敵機と物理的に接触しがちなMFは特に頻発しやすい。
【編制】
日本やアメリカなど多くの国では戦闘機部隊の編制を踏襲し、4機編隊を最小単位(小隊)としている。
これに対してオリエント圏の空軍は1機少ない3機編隊が最小単位になっている。
オリエント圏が3機編隊を採用する理由には諸説あるが、「プライドが高いオリエント人は人数が多いと揉めるから」「意思決定の際に2対2で割れるのを避けるため」など、オリエント人の国民性を加味した推察が為されている。
ルナサリアンも基本は3機編隊だが、編制に関してはある程度柔軟性が与えられており、ルナサリアン戦役では2機編隊を最小単位とする特殊なエース部隊の存在も確認されていた。
スターライガは固定された最小単位は定めておらず、4機編隊をベースとしつつも作戦内容に応じて幅広く対応している。
特殊作戦では1機だけを単独出撃させるという、正規軍ではあり得ない部隊運用も行っていると考えられる(特殊作戦については資料が公開されないため、詳細不明である)。
【価格】
21世紀の頃は「高価な兵器」の代名詞として語られていたMFだが、登場から100年ほど経った22世紀中期には戦闘機と同程度のこなれた価格に落ち着いている。
各国の主力量産機は比較的安価な部類に属し、15~25億円程度と下手な軍用機よりは遥かに安い。
100億越えの高級量産機や300億の大台に乗るワンオフ機もあるが、これらは量産効果が低い例外と言える。
ちなみに、黎明期の機体は部品(特に新素材を使う部分)の歩留まり率が悪く、これが機体価格を押し上げていた。
MFは本体価格よりも運用コストが嵩張りやすく、それが新造機の購入や自国開発、あるいは導入自体を躊躇う国が多い理由となっている。
新兵器を扱える人材の育成、運用に必要な設備の調達、複雑な機構を維持するための整備費、ジェット燃料よりも高価なE-OS粒子の購入費――。
これら初期投資及び維持費だけで莫大な費用が掛かるため、MF運用専任の航空部隊を持つのはビッグ3(日本、アメリカ、オリエント連邦)など主要先進国に限られる。
軍事費が限られる国では戦闘機の半分を置き換えた混成部隊にするなど、妥協策が採られている。
【弱点】
地上から宇宙まで、あらゆる領域で活躍することが可能なMFだが、致命的な弱点が一つだけ存在する。
それは水中戦に全く対応していないことである。
開放式コックピットを採用している以上、水密性など最初から要求されておらず、水中へ沈むとコックピットにどんどん水が流れ込んでしまう。
機体その物やコンバットスーツは高度な防水性能を持つものの、これはあくまでも雨の中での作戦行動を想定した能力であり、水中では基本的に無力だと思ってもらっていい。
念のために補足すると水濡れ厳禁というわけではなく、胸部インテークが浸からない程度(水深3mぐらいまで)なら問題無く活動できる。
ただし、MFは飛行能力があるので無理に水場へ入る必要性は薄い。
潜水艦など水中の敵と戦うことも考慮されていないが、ルナサリアン戦役ではMF部隊が対潜戦闘を行い、敵艦を撃沈せしめたという公式記録が残っている。
なお、光学兵器は水中では全く使用できず、実体兵器も通常の物はあまり役に立たないため、水中へ攻撃するには専用武装が必要になる。
ちなみに、水密性どころか気密性すら怪しいが、スターライガシリーズの人類は生身で宇宙に放り出されてもピンピンしているほど丈夫なので、こちらに関しては特に問題は無い。