屍の王女
プロローグ 終焉。
都が燃えている。
雲一つ無い夜空を業火がオレンジ色に染める。
何百年に渡りこの地を統治してきた王都テンベールは、燃え盛る業火によって栄花の歴史に幕を閉じようとしていた。
強大な呪力を持つネクロマンサーは宙を舞い、町に炎を放っていく。
市街は死霊の大群やスケルトンソルジャー、魔物で溢れかえり、衛兵や民はなすすべ無く屠られていく。
異形の者たちは誰かに操られているように行動している。
まるで戦場のように怒号、悲鳴、断末魔…阿鼻叫喚が溢れ、都全体を覆尽くす。豪華絢爛だったテンベール王都全域は激しい炎と黒煙が立ち込め、死臭と血の匂が充満する。
城の塔からその惨状を、虚ろで生気の無い小さな瞳は眺める…。
そう、全員皆殺しにしなさい。一人残らず…。
これで…これでいい。 全て燃えて無くなってしまえ!
黒衣のドレスを纏った少女の蒼白な顔には、薄らと笑みが浮かぶ。可愛いらしさなど微塵も無い歪んだ笑顔。その表情は怒りに満ち憎悪が溢れていた。
少女は傍らに何か球体のような物を抱えている。
それは生首だった…。
ルシウス・テンベール…国王の生首。
滅んでいくあなたの国を、この一番高い塔から見せてやった。
胴体から無理矢理引きちぎった首は壮絶な苦悶の表情を浮かべている。
復讐は終わった…。憎い奴はこれで全員殺した。
少女は血に染まった王冠を小さな頭に被る。
国王が被っていたものだ。
少女の体からは漆黒の陽炎が立昇り、華奢な体を包み込んでいく。
夜空が薄らと明るくなってきた。
私は日が当たる世界では生きられない…まあ、もう生きてはいないのだけれど…。
これでテンベールは私の、いや、屍の国になる。
私はソフィア・アルストロ 屍の君主だ…。




