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17.お嬢様とスライム

 町に帰ってきたボク達は早速、素材の買取所に向かった。

 先に宿でゆっくりしても良かったんだけど、戦果を噛み締めてから寝たいっていうシーロの強い要望があったからね。

 ま、そう思ってたのはシーロだけじゃなかったみたいだけど!


 クリス達の興奮は覚めないまま、重くなったサイフを握りしめて宿に帰ってきた。


「はぁ~、さすがにほっくほくだったね~!」


「スラ公のおかげで素材のほとんどが持ち帰れるからな。やっぱりブラックスライム様様だぜ」


「フェリ、ニイム、二人ともありがとうな。もちろんアインも!」


「ああ」


『どういたしましてー!』


「えっと、ぼくの方こそ、ありがとうございます……!」


 みんな嬉しそうでボクも嬉しいよ!

 今日はこのまま祝杯モードかな~♪


 ――コンコンコンッ


 おや、扉のノック……。

 珍しいね、お客さんが来たみたいだ。


「はい、どなたです――おわっ?!」


 クリスが扉を開けると同時に、誰かが突撃してきた!


 な、なに?! ……って、女の子?


「ティナ! ティナじゃないか!!」


「やっと……追いつきましたわ!」


 だれだれ~? クリスの知り合い?

 仲良さそうに抱き合っちゃって、もしかしてイイヒトだったりする~?


「ティナ、久しぶりー!」


「セシリア、お久しぶりですわ!」


 クリスと再会の抱擁(ほうよう)をしていたかと思えば、今度は女の子二人で抱き合いながらぴょんぴょんしてる。

 ハッ! この調子でいくとシーロも……。


「よう。オヤジさんの許し、もらえたのか?」


「ええ、わたくしの粘り勝ちですわ!」


 シーロとは抱き合わなかった……なーんだ。

 でも知り合いなのは確かみたいだね!


『ねーねー、ボク達にも紹介してよぉ~』


 ――ぽいーん、ぽいーん、ぽいいーん!


「きゃっ! ……ス、スライム……かしら?」


 ただのスライムじゃないよ~。

 超便利でカッコイイ、スーパーウルトラスライムのボクだよ~。


「あぁ。新しく入ったメンバーがいるんだ、紹介するよ」


 クリスがフェリをちょいちょいと手招き。


「まず、こっちの子がフェリ。まだ幼いから荷物持ち(ポーター)としての加入なんだけど、クラスはテイマー。それでさっきのシャドウスライムはフェリの従魔で、ニイムって言うんだ」


 次にアインに手を向け、


「彼はアイン。クラスはマジックナイトで、レベルも俺達とは釣り合ってないんだけど……本人の希望で、メンバーとして加入することになったんだ」


 最後に、飛び込んできた女の子の肩に手を置いた。


「彼女はフロレンティナ。俺達の幼馴染(おさななじみ)で、本当は一緒にパーティーを組む予定だったんだけど……」


「お父さんが許してくれなかったのよねぇ……」


「しゃーねーわな、ティナは領主の一人娘だ。おいそれと冒険者になんかさせられるか、ってなもんだ」


「それでもわたくしは皆と一緒に冒険がしたかったんです。だから、一生懸命説得いたしましたわ!」


 はー、なるほど~。

 ふわふわした可愛らしい子だと思ったら、イイところのお嬢様だったのかぁ。


「あっ……あ、あの……」


「あら、ごめなさい! 挨拶が遅れてしまいましたわね、どうぞよろしくお願いいたしますわ」


 ためらうフェリと、全くためらわないティナ。

 ティナはフェリの手を取って握りしめ、可愛らしい笑顔を見せてくれた。


「あぅ……よ、よろしく、お願い……します……」


 ティナも亜人を気にしない人なんだね、良かった良かった。

 クリス達の故郷――イビスの風土なのかな?

 それとも単に、似たタイプが集まったってだけかもねっ!


「アインさんも、よろしくお願いいたしますわ」


「俺のことは呼び捨てで構わない」


「わかりましたわ。パーティーメンバーですものね、アイン。わたくしのことも、どうぞティナとお呼びになってくださいな」


「ああ」


 こっちも問題無いみたいだ。

 お嬢様っぽいけど、意外とおおらかなタイプなんだね~。

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