8.浸透スライム
ボク達はミノタウロスと対峙するクリスの元に駆けつけた。
「ブモォォォオオオオ!!」
ううっ、思ってたよりも迫力がスゴイ……。
大人一人分ぐらいはありそうな大斧を軽々と振り回し、足踏みで床を震わせることができそうなほどの体。
『二足歩行する牛』ぐらいに思ってたけど、全然そんなもんじゃなかった!
これ、ホントにボク達だけで勝てるのかなぁ?!
「待たせたなクリス、加勢すんぜ!」
「稲妻いくからタイミング合わせてね!」
「頼む!」
クリスは盾を使って攻撃を上手くいなせてるみたいだ。
でも、もし失敗して直撃を食らったらと思うと……ぶるぶる。
と、とにかく攻撃だ!
こっちに向かって来ない程度で、かつ出来るだけダメージを……!
――ごぼいんっ!
――ごぼいんっ!
よし、間を開けていけばこっちに向かってくることは無いみたいだ。
シーロは攻撃を避けるのが上手いから、攻撃しつつ回避しつつでクリスをサポートしてる。
フェリちゃんは……って、ヤバイ! 危ない!!
『フェリ、フェリ! 攻撃しすぎだよ! このままじゃフェリが標的にされちゃう!』
「うっ、ぐっ……で、でも……ぼくも、みんなを……クリスさんを……!」
フェリは攻撃を止めようとしなかった。
くそぅ、こうなったら別方向からボクもたくさん攻撃を……。
「ブ、ブモ……オオオォォ!」
って、ぎゃー! ミノタウロスがこっち向いたぁー!
「?! フェリ、危ない!」
――ドガッ、ズガガガッ!
「ぁぐっ……!」
フェリは攻撃を真正面から受け止めてしまった!
一応盾で防いだけど、ミノタウロスの攻撃は勢いがありすぎて、そのまま部屋の隅まで吹き飛ばされる。
『フェ、フェリ~!!』
い、急いで治療しなきゃ!
万能スライム細胞って打ち身にも効くかな?!
クリスとシーロがミノタウロスを再び引きつけてくれたのを確認してから、急いでフェリに駆け寄る。
――ぽいんぽいんぽいんぽいんっ!
『フェリ、大丈夫?! ケガは?!』
「ご、めん……ニイム……」
痛みのせいか、起き上がるのもままならないフェリは相当苦しそうだ。
『それは後で! とにかく一番痛いとこはどこ?!』
「う、で……」
ミノタウロスの攻撃を受け止めたせいだろうな……もしかしたら折れてるのかもしれない。
どうか中まで染み込みますように! えいやっ!
――ぽにょっ、もにょにょにょにょにょ……
ボクから出てきたスライム細胞が、フェリの腕に広がっていく。
……たぶん、中まで染みてる気がする。たくさん出したけど垂れていかなかったし。
『ど、どう? 効きそう……?』
「うん……ちょっと楽に、なった……」
『良かった~! じゃあ他も治すからじっとしててね!』
――ぽにょっ、もにょにょ……ぽにょっ、もにょにょ……
大急ぎで治していかないとね!
フェリが可哀相っていうのもあるけど、クリス達も心配だ。ボクも早く戦闘に復帰しないと!
「――準備できたわ! いくわよ!」
「引くぞシーロ!」
「おうよ!」
二人がミノタウロスから素早く離れると、セシリアの杖からパチパチと音が漏れ出した。
「――稲妻ッ!」
――ドガンッ!!
ミノタウロスの真上に出現した雷は、ジグザグとした稲光を描いてミノタウロスを貫いた。
肌が焼け、体も痺れているのか、さすがのミノタウロスもフラついている。
うわー、すごい! ホントに小さな雷みたいだなぁ!
「よっしゃあ! 一気にいくぜ、クリス!」
「ああ!」
チャンスとばかりにクリスとシーロが攻撃を再開した。
よし、治療が終わったらボクも……!
「ぼ、ぼく……も……」
『って、フェリ! 君はまだダメだよ! ボクの万能スライム細胞は治るまで時間がかかるんだ。しばらくはじっとしてて!』
「で、でも……」
『だぁーめ! ちゃんと避難してること! いいね?!』
「わ……かった……」
悔しそうに頷くフェリ。
可哀相だけど、今はフェリの体が優先だ。
『じゃあボクは行ってくるから。フェリはちゃんと回復するまで休んでてね』
「うん……」
よし、クリスとシーロに加勢だ!




