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6.温まるスライム

「それよりも、パーティーの奴らには何と説明するんだ」


『うっ、それもあったんだった……』


 フェリになら全部話してもいいんだけど、またクリス達への秘密が増えちゃうしなぁ。

 かといって、クリス達に全部話すのは……だめだよねぇ、信じてもらえないと思う。

 クリス達が悪いわけじゃないけど、それぐらい『喋る転生スライム』って変だもん。


 うーん……仕方ない。ちょっとだけ誤魔化しちゃおう。


『フェリには前のボクのことは一旦伏せておくよ。ボクはスライムとして生まれた頃の記憶が無くて、その頃にアインと出会ったことにしよう」


「良いだろう」


 生まれる、アインと出会う、記憶喪失になる、フェリと出会う。

 うん、これならバッチリだ!


『そういえば、アインは何でスライムのボクと話せるの? フェリと同じでテイマーの資質持ち?』


「そうだ。使ったことのない物も多いが、大抵の資質や適正は持っている」


「そ、そうなんだ……」


 チートだ、チートキャラだ……。

 そんなに強くて才能もあるのに、何でボクと知り合いだったんだろ?


 ……気になるけど、頑張って自力で思い出さなきゃね!

 このままじゃアインに悪いもん!


『じゃあフェリを呼ぶから、アインも適当に合わせてね』


「わかった」


『フェ~リ~! 来て来て~!』


 ――ぽいーん、ぽいーん!


 こっちをチラチラと気にしてたフェリが、おずおずと近づいてくる。


 真実をちょっぴり混ぜながら話してみたら、フェリはあっさりと信じてくれた。


「そっか……ニイムって、生まれた頃のきおく、無いんだね……」


『そうなの~。特に困ったこともなかったから、これまで気にしたことなかったんだけどね」


「お前――ニイムの声が俺にも聞こえることは、他のメンバーにも言っておいた方がいいんじゃないか」


『そうだね。クリス達も気にしてるだろうし、説明しに戻ろう!』




 二人と一匹でクリス達のところに戻って、事情を説明する。

 特に怪しまれることもなく、三人はすぐに納得してくれた。


「へぇ、アインって本当に多才なんだな。羨ましいよ」


「しっかしオメー、従魔でもない野良スライムと知り合いって……ヘンな野郎だな」


「ちょっとシーロ、言葉は選びなさいよ! ごめんね、アイン!」


「いや、別に気にしてない」


「そ、そう……?」


 ボクが喋るってことについては、クリス達もすぐに信じてくれたみたいだ。

 ま、フェリとはよく話してたもんね。

 普通のテイマーと従魔でもコミュニケーションはとれるんだから、そう信じがたい話でもなかったのかな。


「それよりも、今日はこのまま野営で良いのか。まだ早い時間だが」


「あぁ、明日はボス部屋に行ってみようかと思ってね。早めに寝ようと思ってるんだ」


「ファスールダンジョンの中ボス……10階の主か。分かった」


「頼りにしてんぜ~、マジックナイトさんよ」


「ちょっと、目標はあくまでもアイン抜きでの討伐だからね!」


「わーってるって」


 明日は初の大物バトルかぁ。ボク、役に立てるかなぁ。

 攻撃は体当たりだけだし、回復は傷口に触れてなきゃダメだし……ムリかも……。


 いやいや、弱気はダメだよねっ!

 中ボスは大きなミノタウロスだって話だから、隙を見て後ろからアタックすればいけると思う。

 回復だって一旦下がってもらえたら出来るんだし、やれることはあるはずだ。

 スライムでも頑張って参加するんだいっ!


「じゃあ交代で睡眠を取ろう。悪いけど、アインとニイムは先に見張りをお願いできるか?」


「問題ない」


『お、おぉぅ……オッケー!』


 まだ二人きりはちょっと気まずいけど……むしろこれはチャンスだよね?!

 いっぱい話して打ち解けて、あわよくば記憶を思い出すきっかけになるかも!


『よーし、アイン、色んなこと話そうよ! ボクも今まであったこと、いっぱい話すからさ』


「……見張りは忘れるなよ」


『もちろんだよっ!』



 こうしてしばらくの間、旧交を温めるボク達だった。

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