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3.第二のストーカーとスライム

 この声、この髪、この服装! 間違いなく本人だ。

 昨日は後ろ姿しか見えなかったけど、『ダークエルフ』のお兄さんだったのかぁ。

 全体的に黒い見た目とクールな表情……まさにダーク! って感じだね。


「え、ニイムを買おうとした人?!」


「そうだ。もっとも、今回は譲り受けようと思って来たわけじゃないが」


 およ。俺は諦めないぜ的なことを言ってたけど、もう諦めたのかな。

 思ったよりもアッサリぽん。


「えーと、じゃあ今回はどのような用件で……?」


「パーティーに入れてくれ」


「……え?」


 ……え?


「お前達のパーティに俺も入れてくれ、と言ったんだ」


 ええーーー!


 や、やだなー! ボクやだなー!

 だって昨日は「売ってくれ」で、今日は「仲間に入れてくれ」だよ?

 ボクに対して並只(なみただ)ならぬ執着ってやつを感じるッ!

 これはボクの身が危ない予感ッ!!


「……志望理由は?」


「そこのスライムがいるからだ」


 とっても正直ぃ~!

 でも正直に言えば良いってもんじゃないよ?!


「クラスとレベルは?」


魔法騎士(マジックナイト)。レベル41だ」


「よんっ……上級職(ハイクラス)?!」


 クラスに就いて修行を積めば、クラスアップの試験が受けられる。

 受かれば晴れてハイクラスに就ける、というわけだけども……。


 ハイクラスに就ける人はそう多くない。試験が難しいからだ。

 それに、この黒いお兄さんはクリス達とそう変わらない年に見える。

 ダークエルフは人間より長生きだけど、若い内の見た目年齢は人間と一緒ぐらいだ。

 だからこんなに若いハイクラスは、かなり珍しいはず。


 レベルも十分に高いし……なんでそこまでして、このパーティーに?

 ボク? ボクを狙ってるんだよね?!


「俺達の平均レベルは12だ、釣り合わないよ。それに護衛費を出せるほど裕福でもないんだ。悪いが他のパーティーを……」


「護衛費などは不要だ。普通のメンバーとして入れてくれれば良い」


「……」


 あ、怪しい……怪しすぎる。

 どう考えても『報酬としてお前を貰っていくぞ!』のパターンじゃない?


 ボクががくぶるしていると、クリス達だけのヒソヒソ話が始まった。


「……どう思う?」

「ンなもん、めちゃくちゃ怪しいに決まってる」

「こ、怖い……です」

「でもさでもさ、すっごく強いじゃない! しかもタダだってさ!」

「だから怪しいんだろうが」

「明らかにニイム目当てだよなぁ……」

「隠す気も無いみてぇだな」

「ニ、ニイムは……ぼ、ぼくの……」

「でーじょーぶだって。無理やり奪う気なら昨日のうちにやってる」

「なんでわざわざパーティーに入りたがるんだろうか」

「買えないならパーティーに、ってことでしょ?」

「そんだけの理由であんな高レベルの奴がうちに来るかよ。美味い狩場にも行けないのに」

「どうしても荷物が減らせなくて、とか?」

「アホか、オメーじゃねぇんだぞ」

「でも率直だけど強引じゃない。悪い人じゃないんじゃないか?」

「そう、なん……ですか?」

「ヘンな奴には変わりないけどな」

「俺は……良いと思う。皆は?」

「まーいいけどよ」

「私も賛成! ……フェリ君は?」

「フェリ、嫌なら嫌って言っていいからな。気を遣わなくていいぞ」

「ぼくも……大丈夫、です。ニイムを、連れて行かないんだったら……」

「……そうか。よし、じゃあ決定だな」


 わー! 決まっちゃったー?!

 うぅ、まぁ良いけどさぁ……クリス達が良いならそれでも……。


「ご、ごめんねニイム。もしかして、イヤだった……?」


『ううん……良いんだ……。ああいう人には慣れてるし……ねっ」


 ボクがちょっと沈んでたのを見て、気を遣ってくれるフェリちゃん。


 大丈夫、大丈夫さ。

 ストーカーが一人から二人に増えたところで、大した差じゃないさ!


「では改めて宜しく頼む。俺の名はアイン。見ての通りダークエルフだ」


「宜しく、アイン。じゃあ詳細をこっちで……」


 フェリがパーティーに入った時と同じように、自己紹介とギルドの登録を済ませるクリス達。


 また一人、ボク達に仲間が増えた。

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