26.尊厳を勝ち取るスライム
「ふふ、ニイムが……お父さんだって……ぷ、ふふふっ」
『えー、何で笑ってるのー! どこにウケたのさっ!』
――ぽいーんっ!
「だって……ニイム、スライムなのに……こんなに小さいのに……ふふっ」
『だってボク、こう見えても普通のスライムじゃないんだからね?!』
色んな知識もあるし、前世の記憶も(ちょっとだけ)あるし、考えるスライムなんだよ?!
すごくない?!
「そう、だね……。ニイムは、初めから……すごかった」
『でしょでしょ?! だから大人でいーの! お父さん(仮)でいーの!!』
「ふふ……うん、そうだね」
『そー!』
へへん、大人の尊厳を勝ち取ったぞい!
……あれ? 何の話をしてんたんだっけ?
「じゃあ……パーティーメンバーぼしゅう、見に行こうか?」
あ、そうだったそうだった。
冒険者パーティーでなら、活躍の場があるかもしれないんだもんね。
『うんっ、行こ!』
「うん……一緒に、行こう」
今度こそ役に立つんだーい!
***
パーティー募集板の前で、条件をクリアできそうなものを探すボクとフェリ。
『どう~? そっちはあった~?』
「ん……無い、かも……」
むむーん、やっぱり冒険者パーティーも厳しいかぁ。
荷物運びの募集はあるけど、年齢制限があったり、経験者のみだったり。
冒険、危ないもんね……。
『こうなったら、冒険者の人に直接声を掛けて回るってのはどうかな?』
「直接……」
『募集を出すまでじゃないけど、そこまで言うんならーって人もいるかもしれないしさ。あとは、制限に引っかかってるけど一応お願いしに行ってみるとか』
「わかった……お願い、してみる」
『よぉーし、売り込みだー! ボクもしっかり可愛さをアピールしとくからね、安心して!』
可愛い! 便利! 安い!
これだけ揃えば拾ってくれるパーティーもいるでしょ!
本音を言えば安くはしたくないんだけど……初心者の幼いポーターなら、仕方ないからね。
「あの、すみません……。ぼく、ポーター志望、なんですけど……」
『フェリ、ファイトー! ボクがついてるよーうふ~ん!』
――ぽよよよよよ……ぽい~ん、ぽっい~ん!
条件を満たしていないけどポーターを募集してた人や、通りすがりの人。色んな人に声を掛けていくフェリと、それを応援しつつパーティーを魅了するボク。
断られてもめげずに、どんどんアタックあるのみだー!
どんどん、どんどん!
どんどん……どんどん……。
……どん、ど……ん……。
…………。
「……見つからない、ね……」
『くぅ~、こんなにカワイイ美少年とスライムがお願いしてるのに! 誰も首を縦に振らないなんてッ!』
この世界の人間は、ショタ属性もスライム属性もゼロなのかな?!
こんな世界、間違ってるんだからっ!
ぬう~ん、今日こそ……今日こそは何か仕事を見つけないと!
どこかにフェリを雇ってくれそうな人いないかなぁ。
なんだかとってもムダに人の良さそうな、そんな都合の良い冒険者は……。
……って、あーーーっ! み、見つけたー?!
あの人! あの人たちだー!!
あの人たちなら、仲間に入れてくれるかもしれない!




