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15.???のスライム

「――おい、呼んでるんだから返事ぐらいしろ」


「え? あぁ、ごめんごめん、読むのに夢中で気づかなかったよ」


 僕は手に入れたばかりの本に集中していて、呼ばれていることに気づかなかった。

 まぁ気がついたところで生返事をしただろうけど。


「また日本の漫画や小説か。最近そればかりだな」


「ふっふーん、最近は小説じゃなくてラノベって言うんだよ? 小説よりももっと軽く読める、大衆向けの娯楽なんだ」


「フン……どっちでもいい」


「分かってないな~。このライトさが良いのに」


 面白さを共有することは、『相棒』として大切だと思うんだけどな、僕は。


「そういえば、君みたいに真っ黒い服を着てクールぶってるヤツを何て言うか知ってる?」


「俺は別に振りをしているわけじゃない」


 反論を無視して、教えてあげることにした。


「中二病! って言うんだよ!」


 惜しいな~、これでポーズでもキメてくれたらイメージにぴったりなのに。


「おい、勝手に人を病気扱いするな。お前も真っ白で似たようなもんじゃないか」


「白いキャラは特に名称が無いんだよねぇ。何かあれば面白かったのに」


「……相変わらずおかしな奴だな」


「どうせなら面白い方がいいじゃん~」


 僕はゴロリと寝そべって、読みかけの本を開き直す。


「そういえばさ、最近ラノベで”転生モノ”が流行ってるんだよ。知ってた?」


「転生? そんなもの、いつもの事だろう」


 そう。僕らの周りでは常に命が巡っている。

 いつも何かが死んで、何かに生まれ変わっている。


「いやそれが普通の転生じゃなくて、前の人生の記憶や知識を引き継いでいたりするんだ。それで、その知識を元に新しい人生で無双するんだよ!」


「……なんだそれは。そもそも前の人生の知識があったところで、次世代で価値が生まれるとは思えん」


「それがね、転生先は大体低次元の世界なんだよ。異世界転生だね」


「ハァ……くだらんな」


「なんでさ~! いいじゃん、楽しそうじゃん! 低次元っていっても異世界だし、主人公は今までにないものを見たり経験したりするんだよ。夢があって楽しいと思うな~」


 んもー、このロマンを分かってくれないとは!

 どうせなら人生面白く生きたい、っていう気持ち、よく分かるんだよねぇ。

 僕もずっと退屈だもん。


 あ、良いこと思いついた。


「僕も転生してみようかな」


「は?」


「いや、だからさ、転生して人生を送ってみるのもいいかなって」


「何言ってるんだお前は。己がどういう存在か自覚しているのか」


「ちょっとくらい平気だよ~。あぁでも、そうだな……今の知識を全て持ったままっていうのはマズイかもね。知識は一般的な人間と同じぐらいにして、転生先は……うん、スライムにしよう」


「おい、正気か?」


「正気のホンキ! だーいじょーぶ、リーリオにも協力してもらうし」


「……」


 うわ~、ものすっごく渋い顔してる。

 へへ、でも相棒だもん、分かっちゃうよ。これは「嫌だけど認めてやるか」って顔だね!

 「止めても無駄だ」だったかもしれないケド。


「上手くいかなかったらすぐ死んじゃうかもだけど……上手くいくよう祈っててよね!」


「……あぁ」


「じゃあリーリオにも話してくる! またスライム生が終わったら会おうねー!」




 そう言って、僕はリーリオの元に飛んで行ったんだ。

 最初はめちゃくちゃ反対されたけど……まぁ押し切った。


 その結果、当初の目的通り、スライムに転生を果たしたというわけだ。

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