黒の機械 1
「冬夜君入ってきなよー」
「お前、アイツも連れてきたのか?」
「うん、今日は冬夜君と一緒に来たからねー」
中で何やら話している。
「そうか...まぁいいが静かにしろ...」
「分かった」
すると、ドアからひょいっと顔を出したクリスタが冬夜に手招きをする。
早く行けと言うように冬夜の背中をウルフが押す。
そして、冬夜とウルフも部屋に入った。
「こっちだよ」
奥の方で声がする。
「ほらあっちだ」
暗くて見えずらい部屋なので冬夜が戸惑っているとウルフが冬夜にそう言った。
「う、うんありがとう」
冬夜がクリスタの元へと行くとクリスタがこれだよーっと小さな声で言う。
一体これは何だろう?
目の前には真っ黒で複雑そうな機械があった。
コードが何本も通されており、とても普通の人には作れないような物だ。
だが、冬夜は二つ前の前世で機械の事を研究していたからか、真っ黒い機械を見て、何に使うのか予想を立てていた。
だか、分からない様だった...冬夜が学んだ機械工学などの資料にも見覚えのないコアやパーツばかりだった。
「これは一体...」
「これはね…いいや、説明より使ってもらった方が早いや」
そう言うと冬夜は黒い機械へと押し込まれた。
「うわっ」
仰向けの体制で冬夜が機械の中で横になる。
「じゃあスタート」
クリスタが言ってボタンを押すと冬夜の入った機械をガラスがスライドし閉じられた。
ん?何だろう...意識が...遠の.....く...
「あれ、僕は一体...確か、黒い機械に入って...」
言いかけると
「冬夜君聞こえる?」
クリスタの声か、何処から聞こえてくるんだろうか...
「聞こえるよ」
「あ、聞こえた!良かったじゃあここのルールを説明するね」
ルール?何か起こるのかな?
「まず、出てくる武器は何を使ってもいいよ。次に、敵を倒すと光の玉、│光源玉が出てくるから握り潰すと敵の消滅となるよ。しばらく潰さないと敵が復活するから気をつけてね。」
え?これは戦う為の装置なのか...それはいいとして、クリスタに取っては戦う事が遊び?いや、違うのか?
と、混乱している冬夜にクリスタが言った。
「あ、あとこれはバトルシュミレーションゲームだから怪我しても大丈夫だし、死んじゃっても大丈夫だよー」
そういう事か...良かった...
冬夜は戦う事に対してはいつも本気なのでいつも遊び感覚でクリスタが戦っているのではないかと不安だったらしい。
「じゃあ開始!」
するとブザーが鳴り、何も無い真っ白だった空間に景色が現れる。
「ここは砂漠だ...あそこにあるのが武器か...」
冬夜は武器を自分で作る事が出来るが、取り敢えず取りに行く事にした。
冬夜が行くと目の前には縁が青色に輝く武器が横にズラっと空中に並んでいた。
やっぱり剣がいいな...
剣を取ると、他の武器は消えてなくなった。
「無くなっちゃうのか...」
冬夜は他にも少し使ってみたい武器があったらしい。
「冬夜くん、武器を取ると敵が何処からでも出てくるから気をつけてね」
クリスタが言った即座に後ろから
サーっと砂から形が浮かび上がった。
そして出てきたのはオートマタだった。要するに人型の兵器だ。
「今回は50体だけにしておいたから最後の一体を倒したらクリアだよ」
だけって...クリスタって結構戦闘オタクなのかな?
...そう言えば昨日もダンジョンで三回層から出てきてたな...
三回層なんて入学したての学生が行けるような所じゃないし...
冬夜が考えているといつの間にか目の前には50のオートマタが並んで立っていた。
冬夜と目が合うと一斉に襲いかかってきた。
「アイスブレード!」
あれ?魔法が使えない...
「あ、ごめんそこでは魔法が使えないんだった」
「分かった」
正直魔法がないと少しきついかもしれない...
剣を構え目の前の敵に刃を向ける。
「行くよ...」
オートマタへと冬夜が走り出す。
「兜割り」
あれ?案外柔らかい...
「なら...」
剣の切れ味がいいのかオートマタがやわなのかは分からないが冬夜は簡単に斬れる事が分かったので一気に倒してしまおうとオートマタの集まる中心へと行くと、綺麗な回転斬りをかました。
バタバタとオートマタは地面に倒れ、電子と化して消えて行く...
「冬夜くん、あと一体で最後だよ」
あと...一体?
頭にクエッションマークを浮かべたような顔の冬夜が周りを見渡すが砂漠の砂しかなく、他には何も無い。
すると、目の前の砂の中から先程のオートマタとは比べ物にならない程の金属の塊が出てくる。
全て姿を現すとそれは体長100メートルほどはあった。
「これかぁ...」
嫌な表情を浮かべながらも、戦う意思はあるようで、金属が見えた瞬間に攻撃を仕掛ける。
「│氷化月刀」
先程までとは違い剣の安定度が良くなり、スピードが格段に上がった。
そして、一瞬にして敵を切ると表面は氷ついている、これはスピードが上がり、極限の角度から斬る事により、物理では証明できない特殊な何かが冷気を発生させた事で出来た。
あれ?...切れていない...しかも、傷一つ付けられていないや...
冬夜が呆然としていると...真上から巨大な拳が振り降りてきて冬夜を殴り潰す。
冬夜を潰しながら地面にオートマタの拳が着くと、冬夜の姿は消えていた。
「ぷはぁっ」
下が砂で良かった。砂じゃなきゃ押し潰されて死んでいたかもしれないな。
どうするかな...さっきのでも傷つかなかったし...
悩んでいるともう一撃拳が降ってくる。
だが今回は華麗に避ける。
すると何度も何度も拳が降り注いでくる。
それらもかわすが、攻撃する隙が無くなってしまった。
「あ、そうか...リーフ?今いい?」
「いいよ〜」
そう言うと冬夜は剣を一振する。
「ここでもリーフの力は使えるのか、なら勝てるぞ...」
だが、冬夜がここでは魔法を使えないためかリーフの力は元の風を起こす力になっていた。
「よし、行くぞ!」冬夜が地面に向かって剣を振り下ろすと「ブォン!」っと音がなり風の勢いで空を飛んだ。
この時冬夜は少しだけ戦いを楽しんでいた。
「このまま胸の辺りまで行ければ...」
だが、オートマタはそれを許さなかった様で冬夜がオートマタの胸元まで行くと視界の端には大きな金属の塊が二つ...オートマタの手だ。
これは、ゲームオーバーかな......いや、やっぱり倒さないと...一か八か...見様見真似だけど。
「結集流儀・第一の型・夢中の斬鉄」
冬夜が空白で技を使うと一瞬冬夜自身も何が起こったか分からなかったが気づいた時には既にオートマタの後ろにいた...
ゴゴゴゴゴッ!っとオートマタが胸部から斜めに斬られ、崩れ落ちる音がした...
ここまで読んでいただきありがとうございます。
これからも読んでいただけると有難いです。




