バウンドレイン
「冬夜またあの森に行くんならいい無属性魔法を教えてやる」
ウルフは冬夜がやる気になったと思い新たに魔法を教えてやろうとしている。
「それは嬉しいな、どんな魔法なのかな?」
僕は興味ありげに聞いた。
「今回教える魔法はな、相手の攻撃を動力源に応用が利く魔法だ。試しに俺が使うから見てろよ...」
「バウンドレイン ファースト!」
ウルフが魔法を唱えると途端に、ウルフを守るように無色透明だが発光していて、目視可能な透き通った盾が現れた。
「よし、冬夜攻撃を仕掛けてこい!」
「う、うん、分かったよ」
ウルフを攻撃するなんて少し戸惑うけど、やらなければ今回はウルフに怒られるし、それはそれでやだからなぁ...やろう...
「行くよ!」
なんか、凄い魔法は...凄い...すご...
「ソード・オブ・キングダム!!!」
...不意に頭に流れ込んできた呪文を唱える...すると僕の利き手である左手に1本の氷で出来た刀があった...それは今まで僕が作った氷と違い、パッと見真っ青で、覗き込むと中は薄暗く光っている...不思議だ...
「...それはまさか...今回の冬夜は本気らしいな...」
ウルフが冬夜に聞こえないくらい小さな声で驚きながらも落ち着いて言った。
「さぁ冬夜、その刀で俺を斬りつけてみろ!」
冬夜は少し勢いを付けるとウルフ目掛けて兜割りを仕掛けた。
「うっ!」
...なんだ...弾かれたのか...もう一度!
冬夜は何度も何度もウルフを斬ろうとするが、何度も弾かれる。
それでも冬夜はやめようとせず、まるで何かに取り憑かれたように刀を振るい続ける。
「はぁ...はぁ...まだ、まだまだ!」
「こりゃやべーな、冬夜...その刀を離せ!」
冬夜にウルフの声は届かない...
「クソっ!まだ間に合うかも知れない...」
「バースト!」
ウルフは冬夜の足元を爆発させた...冬夜は吹き飛び地面に落ちた...だが、その左手には刀が無くなっていた。
「ごめん、ウルフ...体が言うことを聞かなくなって...そのまま...」
「大丈夫だ...あれはお前のせいじゃあない。魔法が悪かったな...」
冬夜は首を傾げ、ウルフに聞いた。
「魔法がって、どういうことだい?何か、あるのかな...」
「あぁ...今の魔法には霊が取り憑いているんだ、それも強大な怨念を持ったな...だから制御出来る様になるまで使わなくていい...」
霊か...僕は霊の事を信じてはいるけど魔法に取り憑くなんて有り得るのだろうか...でも、現に僕は肌でそれを体験したから信じるしかないかな...
「分かったよ」
「じゃあ取り敢えずさっきの続きだ」
ウルフはこうしている間にも「バウンドレイン」
の魔法を維持している。
「今お前がありったけ斬り付けてくれたから十分に動力源となる力の準備が整った。見とけ!」
「バウンドレイン サード!」
ウルフが勢いよくそう言うと、凍ったウルフの剣先を空へと向ける。
その瞬間何かがウルフから放出され、空中で...
「ドカン!!!」
と言う大きな音を散らせながら爆発した。
「すごい、これは面白い魔法だね、でも、最初にファーストって言ってたんだからセカンドじゃないのかい?」
「この魔法には形態が無数に存在するんだ、俺は適当に自分が知った順番にセカンドやサードって言ってるだけだ、まぁ要は魔法に関係無くてただの覚え方だ」
冬夜は納得したかのような顔になり、それ以外の質問はしなかった。
「じぁあ冬夜次はお前だ俺が攻撃して、動力源の力を溜めさせてやる、と、その前に俺とお前を《氷の枷》で繋げておけ、そしたらさっき見せたように魔法を唱えろ」
「うん」
冬夜は自分の腕とウルフの剣の柄を氷の枷でガッチリと繋いだ。
「バウンドレイン ファースト」
そう言うと冬夜の前に、ウルフの出した透明の盾よりかなり小さめの盾が現れた。
「あれ、小さいな…」
「使ってけばそのうちもっとガッチリとした盾になるから心配するな」
そう言うとウルフはいきなり冬夜の盾へと攻撃し始めた、硬く、重たく、凍った刀身で何度も何度も攻撃する。
だが、冬夜の顔は険しくなって行く。攻撃を抑えるがやっとだと言うふうに。
「ウルフ...まだ...かな」
冬夜の盾は壊れそうになっている。
「よし、そろそろ良いだろう、力が溜まったイメージはあるか?」
「うん、まぁ...あるにはあるよ」
「なら、その力を一度で使い切らずに、何度かに分散させて使うんだ、取り敢えず最初は地面に向けて放出してみろ」
「バウンドレイン セカンド」
冬夜は言われた通りに地面に軽く力を放出させた。
「うわぁ!!ウルフ、どうなってんの!?」
冬夜が力を放出させると、冬夜とウルフは絵に書いたように空へと勢いよく飛び上がった...と言うより吹き飛ばされ、雲の上を飛び越えて行った。
「落ち着け、取り敢えず残ってる力を分けて使い魔物の森まで行ってみろ」
冬夜は落ち着き、黙ってウルフの言うように魔物の森へと行くためにもう一度力を放出させた。
するとまた二人は勢いよく雲を貫き、斜めに下へと落ちてゆく。
「冬夜、見えたぞ、さっきまでは力を自分から放ち、離脱させてたが、次は自分と力を繋ぎ止めたまま地面に着く直前でゆっくりと出し続けろ」
「う、うん...」
冬夜は顔が真っ青になりながらもウルフに言われたことを実行し、地面に着陸した。
「おい、どうした冬夜顔色悪いぜ?」
「ごめん、急激にあんな高い所に行くなんてびっくりしちゃって...アイスゲートも今は使ったらダメだし...」
「そ、そうか...ちと、悪いことしたかな...」
ウルフが少し申し訳なさそうに言った。
冬夜がやっといつも通りに戻り二人は森の中を歩いていた。クリスタとの集合場所の光洞窟の方面に進んでいる。
「ところでよぉ冬夜ー」
「ん?なんだい?」
「ギルドの爺さんに貰った本はどうしたんだよ?」
ウルフが先程から気になっていたかのように冬夜に聞く。
「あぁあれか、まだ見てないや、洞窟の前に着いたら読んでみようか」
「よし、なら早く行こうぜ!」
まるで子供が新しいオモチャを目の前にしているかのようにウルフは本が気になってしょうがなかったようだ...
「着いたぜ冬夜、早く読もうぜ!」
ウルフは興奮気味に言った。
「そんなに気になるのかい?」
「あぁ、最初は気づかなかったけどよ、お前がしばらく持っていたらその本からなんかすげーオーラを感じてくるようになってな」
オーラか...それは、僕が忍者の役職を持っているからこの本が反応したってことなのだろうか。
渡された時も忍者に渡すよう言われてたみたいだし...
「じゃあ開けるよ」
そう言って僕は本を開くと冬夜とウルフは光に包まれ、洞窟の前から姿を消した...
投稿遅れて申し訳ないです...




