少女と隕石
見方は色々。賛否両論あるようですが、Ryan Armandさんのminus.に敬意を表します。
ことの始まりは、アマチュア天文学者が見つけた新しい小さな隕石でした。
しかし、日に日に大きくなっていくそれは、いつしか人々の不安を掻きたてる存在に成長していきました。
その日はいつも通りの日でした。
だけれど、とある天文台ではそのアマチュア天文学者からの知らせを聞いて、大騒ぎしていました。
それからしばらくの後、天文学者たちは絶望のどん底に居ました。
彼らが出した計算結果が恐るべきものだったからです。
「99.9999999999%の確率で隕石がこの星に衝突する」
国で一番偉い人は事態を重く見て、科学者達に何度も計算をさせました。
他の国にもお願いして計算してもらいましたが、結果が覆る事はありませんでした。
混乱を招かない様に、密かに国を超えた対策が打たれましたが、あまりに巨大な隕石であったために残念ながらどれも失敗してしまいました。
テレビで緊急会見が始まりました。
全てのチャンネルで同じ映像が流れます。
「国民の皆さん。どうか落ち着いて聞いて欲しいと思います。
今、我々の空から小さな星が落ちてきています。
それはもうすぐ我々の住むこの星に落ちてきて、壊滅的な被害を与えることでしょう。
……既に策は尽きました。
あとは祈り、静かに過ごすしかありません。
どうか、その時まで平静に」
大事な事を全て伝え終えると、大統領は記者から次々に飛び交う質問に答える事なく、泣きながら去りました。
彼にも大切な家族が居たからです。
この事を知った人々は驚きました。
ほとんどの人が、どうしてこうなるまで政府は黙っていたのかと怒りました。
大きな町ではやけになった人たちが暴動を起こし、火を放つ始末。
平和活動家達はプラカードを掲げました。
「私達の星にようこそ!」
宗教活動家はひたすら祈りました。
大事な人が居る人は、その人と一緒に時間を過ごすようになりました。
全人類が混乱にある中、テレビを見ていたひとりの少女は怯える家族をよそに、冷静に彼女の兄の部屋に向かいました。
それから、お菓子と水筒でぱんぱんになった小さなリュックサックを背負い、家を飛び出します。
彼女は、彼女が思いつく限り、なるべく高い山に登りました。
お菓子と水を飲み干した頃、頂上にたどり着いた彼女は息を整えます。
それから、昼間にもかかわらず空に見える大きくなったそれを睨み付け、
――彼女は兄の部屋から持ってきたバットをゆっくりと振りかぶりました。