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0 たった一つの答えを
「……ねぇ、最大多数の最大幸福って知ってる?」
こんだけ逼迫した状況で一体何を…。
しかし、数百回と聞いた質問に、意識することなく脳内で答えがはじき出される。
あぁ分かっている。それは………………………………。
とてもシンプルで、寝起きの0.1秒後に言われたって答えられるはずだ。そうやって育てられてきた、そうやって生きてきた、そのはずなのに…。
今にも堰を切り出しそうな彼女の瞳が、明瞭な答えを噤ませる。
後は声帯に空気が通り粘膜が振動して音を鳴らすだけ。普段無意識に行われているこの動作がここまで難しく感じる日が来るとは…。
「答えは……。」
振り返ってみれば、俺はやはり、ただお前を失望させたくなかったんだと思う。それだけのために、生まれてから今日までの全ての「教育」を否定してまで、この答えを導き出した。
たった一人の女のために? あいつらが聞いたらとんだお笑い種だろうな。だが、そんなことはどうでもいい。
重要な事はたった一つ、目の前の女を必ず守る事、そしてたった一つの答えが紡がれる。
「クソ食らえだ」