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休み

私はその日ブラウド様のお家にお土産を持参してお邪魔していた。


「あ、あの………」

「なんだい?お嬢ちゃん。」

「ブラウド様は?」

「そのうち来るよ。それよりこれは旨いな~‼」


焼いてきたお土産のクッキーを頬張っているのはガルド様だ。

研究室に引きこもっているブラウド様をメイドさんが呼びに行っている間にガルド様がお土産を食べ始めてしまったのだ。


「お気に召したのでしたら、近いうちにまた焼いて来ますね。」

「………これはお嬢ちゃんが作ったのかい?」

「薬を調合するより簡単ですから。」


ガルド様の横でお茶をいただいている黒髪黒目の女性は、ブラウド様のお母様だろう。

彼女も日本人よりの美人さんで親近感を勝手に抱いてしまう。


「ああ、紹介がまだだったな!彼女はワシの妻のバネッサだ。」

「バネッサよ!宜しくね。」

「カーディナルですわ。宜しくお願いいたします。」


バネッサさん美人!

美人とお茶会!

癒される~‼


「旦那様、ブラウド様は研究に集中しすぎてお声が届いていないようです。」


メイドさんが戻ってきて言った言葉に私はがっかりした。


「ご迷惑をおかけするわけにはいかないので、おいとまさせていただきますね。」


私が立ち上がろうとしたらバネッサさんに手をキュッと捕まれた。


「お茶会しながらあの子が出てくるのを待ちましょ‼」

「ですが………」

「そうね………こんなおばちゃんとは話が合わないものね………」


私は思わず椅子に座り直した。


「おばちゃんなどではありません‼バネッサ様は美しい女性です!」

「まあ!ありがとう‼」


バネッサ様気さく。

親しみやすくて気さくなんて素敵だ。

こうして私はまんまとバネッサ様とガルド様と3人でお茶会を楽しむことになったのだった。





時刻はすぎて夕方になってしまいました。


「私、そろそろ家族が心配するのでおいとましたいと思います。」

「もう、そんな時間!まあ、大変!」

「馬車を出させよう。送らせるから安心しな。」

「ありがとうございます。」


そんな話をしていると何やら考えながら歩いているブラウド様が見えた。


「今ごろ来た!ブラウド!カーディナルちゃん帰っちゃうわよ‼」

「………へ?」


ブラウド様は私を見ると目を見開いた。


「………いつから………」

「メイドさんが呼びに行ったでしょ?」

「………それって昼前………」


ブラウド様は私の目の前まで来ると頭を深々と下げた。


「申し訳ないです。」

「あ、頭を上げてください‼また、日を改めて出直します。」


ブラウド様は眉毛をハの字にしてから思い出したように言った。


「媚薬!そうだ‼貴女のために作った物があります。」


ああ、この間言った媚薬を無効化する薬の開発に使うために作ってくれたのか!

しかし、ブラウド様の後ろに顔をひきつらせたバネッサ様が居ますよ。

しかも、人を殺しそうな殺気が駄々漏れです。

次の瞬間、バネッサ様の右足が高々と上がりブラウド様のわき腹目掛けて振り下ろされた。

それを綺麗にかわしたブラウド様は怪訝そうな顔をしている。


「何故攻撃をするんですか?」

「当たり前だろ?可愛いがまだまだ幼女のカーディナルちゃんに媚薬だ?ロリコンか?犯罪か?死刑執行か?」

「誤解です。」


ああ、バネッサ様の口調が荒いです。

私は慌てて止めようとした。

さっきまでの気さく美人がメンチ切ってます!

怖いです‼

美人だからこそ怖いです‼

瞳がウルウルしているのは気のせいだと思います。


「バネッサ様、媚薬は私が研究用に用意していただいた物で使用目的ではございません‼」

「………そうなの?」

「はい!」


結構な強さをお持ちのバネッサ様って何者?


「母がすみません。おっちょこちょいと言うか、がさつと言うか?」

「私も似たようなものです‼」

「………武術の心得が?」

「嗜むていどですわ‼」


ブラウド様は暫く考えると言った。


「紙の資料も差し上げます。」

「ありがとうございます‼ついでに魔法植物大事典もあれば貸していただけませんか?」

「解りました。」


ブラウド様が部屋に戻っていくとカゲロウさんが私を迎えに来てしまった。


「げ!カゲロウ隊長。」

「バネッサ………久しぶりだな。姫様を迎えに来た。」


諜報部の人?だったようです。


「カーディナルちゃんカゲロウ隊長と知り合い?」

「隊長さんなんですか?」

「今は違います。今は姫様専属ですので。」

「は?カゲロウ隊長が組織じゃなく個人についたの?しかも、こんなに小さな少女に?」

「安心しろ、姫様はお前より強い。」

「はぁ?」


バネッサさんは私を勢いよく見た。

私はとりあえず、笑顔を作った。


「嘘つかないでください。」

「嘘ではない。姫様は暗殺部トップクラスと同じレベルだ。」


そ、そうなの?

私が首をかしげるとカゲロウさんがニコッと笑った。


「ヒグラシに余計な事まで教わっているみたいなのでね。」


ひ、ヒグラシさん、バレてるよ!

カゲロウさんにバレたら殺されるって言ってたよね?


「ヒグラシは旦那様にしぼられているから大丈夫ですよ。」

「お父様が………なら平気ですね!」

「はい。真っ青な顔で涙を流しながら旦那様に引きずられて行きましたので大丈夫です。」


だ、駄目なんじゃないのか?!

私はとりあえず遠くを見つめた。


「お待たせしました。これになります。薄いピンクから濃いピンクの五種類の媚薬で色が濃くなるほど威力が強くなるのでお気をつけください‼」

「了解しました。」


ブラウド様に研究材料と言う名のお土産を沢山もらって私たちは帰っていった。

これから媚薬やチャームの魔法を無効にするアイテムを作り出すと、固く誓った私の休みであった。


ブラウド様のお母様は謎多き女性です。


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