さびしい ココル姫目線
ココル姫目線です。
私がヤードと出会って恋にいたるまでなんてアッと言う間だった。
整った容姿に優しいしゃべり方お姉様とカエルが大好きな男の子。
私の我が儘も笑顔で聞いてくれる………聞くだけね。
笑顔で私の頭を叩く。
カエルを持って追いかけてくる。
二言目には『馬鹿』。
何で私はヤードが好きなんだろ?
………ヤードは私には嘘ついたりしないからかな?
ヤードが馬鹿って言う時は私が馬鹿な事言ったりやったりするからだし、私が傲慢にならずにすんだのはヤードが馬鹿って言ってくれたからだろうな~。
それに、ヤードは私が言ったことちゃんと覚えててくれるの。
私がちょっと好きかもって思って言ったこともちゃんと覚えててくれて、サプライズでプレゼントしてくれたり………何でそんなに良い男なの?
そんなの好きになっちゃうに決まってるよ!
学園に入学して思った。
ヤードはモテる!
私が何時でも何処でもずっとヤードの隣に居たいって思っているのに、ヤードのまわりには何人も女の子が居て近寄れない………
冷たい態度をとられてもあの子達はクールで格好いいってめげたりしないの………
私だったら泣いちゃうと思う。
一緒にいれない今だって泣いちゃいそうなのに、冷たくされたら立ち直れないよ。
「ココル様、大丈夫?」
私の側に居てくれるのは今はエルお姉様だ。
「ヤードの隣は私のなのに………」
「そうですよ。ヤード様の隣はココル様の居場所です」
可愛い可愛いエルお姉様は最近声が出るようになって、はじめて知ったの!
声がスッゴク可愛い‼
エルお姉様の声が出るようになって変わったのはヤードのお兄様のバートお兄様がエルお姉様を誰が見ても解るぐらい溺愛しているってこと。
顔を見れば抱き締めちゃうし、膝の上に乗せられて食事を口に運ばれていた時は流石にエルお姉様が泣いてしまっていた。
恥ずかしくて死ぬんだって………
ヤードはそんなことしないだろうな………
されても困るけど………
でも、愛されてるって解りやすくて羨ましい。
私だってヤードとイチャイチャしたい!
………けどね……学園に入ってからヤードとまともに話せてないの………ヤードは私の事嫌いじゃないよね?
私はヤードの何番目に好きな物なんだろ?
一番はお姉様でしょ?
二番はカエル
三番は?エルお姉様かな?
四番は?紅茶を淹れること?
五番は………ここぐらいに私を入れてくれないかな?
ヤード、お話したいよ………
ヤードとまともに話せてないままダンスパーティーの日を迎えてしまった。
ヤードと踊りたい。
けど、ヤードは女の子に囲まれてるから………たぶん………無理だろうな……
ヤードが興味を持ってくれるようにカエル色の緑のドレスが良かったのに、私のメイド達は物凄く嫌がってコバルトブルーのドレスに藍色のアクセサリーを付けるように強制してきた。
拒否権は無かった。
「今日のココル姫様は一段と美しい、どうか自分と踊っていただけないでしょうか!」
ヤードを見つめていると突然手を捕まれ、さらに手の甲に勝手にキスをされ驚いた。
たしかこの人侯爵家の………名前なんだっけ?
名前は、まあ、良いや!
それと、私、最初はヤードと踊りたいの。
「あ、あの、私……手をはなして下さい。」
「では、自分と婚約すると言うなら手をはなしましょう」
………コイツヤバイヤツだ!
私は必死に手を引いたけど、男の人の力にはかなわなかった。
「い、嫌!はなして‼」
男はニコニコするだけで話を聞いてくれない。
嫌だ!怖い!ヤード助けて‼
「ココルが嫌がってんだろ!」
そこに現れたのはやっぱりヤードだった。
「ヤード!」
私がヤードの名前を呼ぶとヤードは不機嫌そうに言った。
「お前は本当に空気が読めない馬鹿女だな」
キャイン!ぼ、暴言!
な、泣いても良い?
「ヤードラル様、ココル姫様に何て口を聞くのですか?」
「お前は早くココルの手をはなせ」
「ヤードラル様には関係のない話でしょう」
「はぁ?」
ヤードはさらに不機嫌になり眉間にシワを寄せた。
「ココルが嫌がってるんだからはなさないと不敬罪だぞ」
「………」
侯爵の息子は渋々手をはなしてくれた。
「改めまして、ココル姫様自分と踊っていただけないでしょうか?」
侯爵家の息子は改めて私に手をさしのべた。
いや、だから、ヤードと踊りたいのに。
私はヤードに視線をうつした。
ヤードはかなり不機嫌そうな顔だ。
怖い!ヤードも怖い!
嫌だけど踊った方が良いのかな?
私が悩んでいるとヤードが口を開いた。
「悪いがココルは俺と踊る約束をしているから後にしてくれ」
え?いつ約束した?ここ最近話すら出来て無かったよね?
「ココル、お手」
「わ、私は犬じゃ無いわ!」
「………ああ、そうだったな。今日のドレス、よくにあってるぞ……ヤドクガエルみたいだ」
周りの御令嬢達が私を可哀想な者を見るような目で見つめている。
でも良いの!
だってカエルはヤードの二番目に好きなものだもん!
「や、ヤード、私、カエルみたい?」
「ああ………不満か?」
「ううん、嬉しい」
私が泣きそうになりながらヤードの手を掴むとヤードはさっきの不機嫌そうな顔を笑顔に変えた。
「ココルは泣くと更にカエルみたいになるからな、俺と二人の時以外泣くなよ」
「う、うん………」
私は一生懸命泣かないように頑張っているのに涙が止めどなく溢れた。
「折角の化粧が台無しだ」
ヤードはそう言うと私の手を引いて開場を後にした。
開場から出ると、ヤードは持っていたハンカチで私の顔を拭いてくれた。
優しいヤード、大好きだよ。
涙が止まらないよ。
久しぶりのヤードが嬉し過ぎて涙が止まらないよ。
私がエグエグしているとヤードのため息が聞こえた。
呆れられちゃった。
「嫌だよ……ヤード、嫌いにならないで……」
「なるわけないだろ。馬鹿」
「馬鹿だもん!涙止まんないし!」
「じゃあ、僕が止めてやる」
へ?
次の瞬間、唇になにかがのった。
………ヤード?
わ、私、も、も、もしかして、き、キスしてる?
唇がはなれるとヤードはニコッと笑った。
「泣き止んだか?」
「う、うん………」
「そうか、じゃあ、化粧直しに行くぞ」
「う、うん、あの、ヤード」
「なんだ?」
「あ、あの………」
「なんだ?」
「………」
何を言ったら良いか解らなくなっている私にヤードはまたキスをしてきた。
「………な、何で?」
「もっとして欲しいって顔してた」
「し、してないよ!」
「そうか?してろよ」
「?………な、何で!」
「僕はしたいから」
私は何を言われたのか解らず固まった。
「ほら、行くぞカエル姫」
「うん、ヤードだーい好き」
「知ってる」
先を歩くヤードの耳が赤かったのは私だけしか知らない秘密で良いんだよね。
「ヤード、私ヤードのお嫁さんになりたい」
「………解った。ココルがお願いするなら、叶えてやる」
「良いの?ヤード大好き!」
「だから、知ってる」
それから、化粧を直して学園の屋上に向かった。
もう、ダンスパーティーなんかしてられない!
ヤードと二人っきりの時間が欲しいの!
私は、ヤードと話が出来て嬉しくてニヤニヤしっぱなしだった。
ヤードも穏やかな顔で私の話を聞いてくれていて本当に幸せだった。
やっぱり私にはヤードじゃないと駄目でヤードには私じゃなきゃ駄目だよね?
ダンスパーティーの日、私はヤードを好きなのを再確認したのだった。
そろそろ終わります。




