創立記念パーティー
おめでとうをありがとうございます!
最高のプレゼントです。
この学園の創立記念パーティーは盛大だ。
有力貴族や騎士団、魔法士団に国王夫妻にいたるまでいろいろな著名人が訪れる。
若く才能のある人材を手に入れるため早いうちから目をつけて仲良くなっておこうって意味合いがある。
いわゆる青田買いってやつだ。
そんな創立記念パーティーに私は黒いマーメイドラインのドレスに真っ赤なジュエリーをつけての参戦だ。
国王の挨拶が終わりみな国王への挨拶を始めた。
私だって例外ではない。
「カーディナル久しいな」
「お久し振りにございます。陛下」
「女性らしくなりましたね」
「ありがとうございます王妃様」
和やかムードをぶち壊したのは王子です。
「父上、母上お話があります」
「「ジェイス?」」
二人がハモって聞くと王子が爆弾を落とした。
「俺を、勘当してくれませんか」
王子の言葉にその場が凍りついた。
「俺は庶民の女性を好きになってしまった。だから……」
私はサッと手を上げて国王に向かって言った。
「国王陛下今から私がする事、口にする言葉は全て私の意思によるもので家族は一切介入していない事を考慮した上で発言することをお許しください」
「懐かしいな………良かろう」
国王に許可をもらうと私は王子に近よりながら言った。
「貴方様にも言っておきます。私のすること発言は私の意思によるもので家族には一切関係の無い話です」
そして私は大きく振りかぶって王子の左頬を殴り付けた。
回りからご令嬢達の悲鳴が聞こえたが知るか!
「あ~あ、カーナを本気で怒らせちゃったね」
王子の後ろに控えていたお兄様が吹っ飛ばされた王子を支えて転ばないようにしてくれていた。
「アホが、一回死ね」
「お前!」
「黙れアホが、お前が王子を辞めて何の価値がある?ラブラちゃんに苦労をかけるつもりか?金だけ置いて死ねよ」
回りがシーンと静まり返った。
「お前みたいなアホは庶民になって生きていけると思ってんのか庶民をなめるなこの世間知らずのボンボンが!」
遠くの方で『ああ、カーディナル様もやっぱり宰相閣下のお子様だったのですね~』って聞こえたが無視だ。
「お前に残されている未来なんてたったの三通りだ!」
「?」
「国民のために何もかもあきらめて私と結婚するか?愛するラブラちゃんを王妃にするか?庶民になって私の怒りを買い暗殺されるか?の三通りだ。好きなのを選べ」
「何でその三通りなんだ!俺なんかより叔父上の方が国王になる器だってカーディナルだって解っているだろ?」
「それがどうした?お前に器が無くてもお前が国王になればお兄様が全面的にフォローする。お前には国王になるための教育をうけていると言うそれだけで十分だ」
王子は理解が出来ないと言ったような顔をした。
「ブラウド様には国王になるだけの器があるかも知れない。だがな、あの人は自分で自分の居場所を作り上げた人だ。仮にブラウド様が国王になったとしよう、ブラウド様は一から国王の勉強をする。その間に疫病が流行ったらどうする?お前が薬を作るのか?ブラウド様に国王の勉強と薬学両方やれと言うのか?それで何人の人の命が失われるか解らないのか?お前が言ってることはな、自分勝手すぎる!しかもだ、地位や名誉が無くなったお前にラブラちゃんを幸せに出来ると本気で思ってるのか?」
「ラブラはそれでも俺の側に居てくれると言った」
「アホが、それは愛があるから言えるセリフだ。それは、ラブラちゃんがお前を幸せにしたいと思ってるから言えたセリフだ!お前はラブラちゃんに幸せにしてもらいたいのか?ラブラちゃんを幸せにしたいのかどっちだ!」
「………」
王子が黙ると私は王子の腹をもう一発殴って言った。
「ラブラちゃんが苦労をする選択肢なんて、私が選ばせる訳がないだろ?」
「ゲフ……だが、ラブラは庶民だ」
「そんなものは既に手筈は整っているんだよ。お前のようなアホに頼らなくても有能な人間は直ぐに解るさ」
私が真っ青な顔のギャラリーに視線をうつすとスクスクと言う笑い声がその場に響いた。
「貴女が何を企んでいるのかと思ったらそう言う事でしたか」
声の主はゆっくりと前に出た。
「我が妻は娘が死んでからは塞ぎがちだったのだがね、ラブラさんに会ってからは毎日楽しそうなんだよ。まさか、これがねらいだったとはね」
「フルール公爵様、貴方の愛する奥様はラブラちゃんを養女に迎えたら喜ぶでしょうね」
「負けたよ。ラブラさんは家に迎えよう。王子殿下に直ぐにとられてしまうのはいささか納得出来ないがね」
そう、マナーの練習の時に付き合ってもらっていたフルール夫人に引き合わせたのはこれが目的だった。
ラブラちゃんは絶対に幸せにして見せる!
「さあ、ラブラちゃんは公爵家の人間になるのが決まったぞ、お前はどうする?ラブラちゃんを王妃にすると言うなら私に文句はない」
「……………ラブラを王妃にする」
私は満足して国王に頭を下げた。
「この度は無礼の数々、許されることでは無いのは承知しております。どうぞなんなりと罰をお言いつけ下さい」
さすがに王子を目の前でボコってしまった訳だし、国外追放?死刑だけは嫌だな。
私は悠長にそんなことを思っていた。
「う~ん、これはまいった。カーディナル、君は自分の価値があまるで解っていない」
「へ?」
「君はたぶん国外追放か隣国などとの政略結婚あたりの罰を想定しているんじゃないか?」
「さすが陛下」
国王は深くため息をついた。
「君を国外に出したと知れば国民はきっと暴徒とかすだろ。カーディナル、君は国民に愛されすぎている。しかも、宰相家族は君を追って国を出てしまう。下手したら王族を皆殺しにしてから国を出て行くだろう。そんな想像が出来ないか?」
いや、うん、出来るよ。ごめんできちゃった。
国王の斜め後ろに控えるお父様から黒いオーラが見えてる気がするのは気のせいか?
そんな中私たちに近づいてきた気配を感じて振り返るとそこにいたのは藍色の燕尾服を着たブラウド様だった。
「兄上、ならば……自分に彼女を下さい」
「はぁ?」
「自分は呪われている。だから、嫁を貰いたくとも誰も自分の嫁には来たがらない。そんな自分の嫁になるのは罰になるんじゃ無いでしょうか?」
な、何を行ってるんだろう?全然理解できずにボーッとブラウド様を見てしまった。
「それに、カーディナル嬢はラブラさんの教育係にうってつけです。下手な貴族にやるよりは、王族に迎えた方が国のためになる。そう、思いませんか?」
「それは名案だ‼だろ、宰相」
「………百歩ゆずってっと言ったところでしょうか?いや、俺はこの国を潰して家族と新天地を見つけても良い」
「そう言うな。カーディナルもそれで良いな!」
ぽかーんとしていた私はまだ理解できずにいた。
えっ?何でそうなるの?
「あ、あの……そ、それは罰ですか?」
私が聞くとブラウド様はニコッと笑った。
いやいやいやいや、それは罰じゃないだろ!
慌てて私が口を開こうとしたその瞬間ブラウド様は私の頭に手をポンポンとのせると言った。
「今日からナルは自分の婚約者です。宜しくお願いします」
「えっあの、こちらこそ?」
ブラウド様は満足そうに笑ってくれたが、私はいまだに何がおこっているのか解らずその後の記憶はあいまいであれは夢だったんじゃないかと現実逃避をするのだった。
この回が書きたかった。




