怪我
GWですね……
エルさんが来て半年が過ぎた。
最近ではラブラちゃんと一緒に居れなくなってきていた。
それと比例するようにラブラちゃんは王子と一緒に居る時間が増えた。
私からしたらラブラちゃんが王子とラブラブになったら良いって言うのもあって、あえて二人の時間にしていたと言うのもある。
そのせいで、ラブラちゃんと王子の話を他の令嬢や令息から聞くようになった。
「このままにしていて良いんですの?ここはビシッと言ってやってはいかがなんですの?」
そんな苦情が私の所に来る。
「王子!貴方の軽率な行動がラブラちゃんの迷惑になるんですから、人目につかないところでイチャイチャしてください」
「………イチャイチャは、して良いのか?」
「ラブラちゃんが嫌がらなければ良いです」
「本当に良いのか?」
「だから、ラブラちゃんが迷惑でなければ良いですってば」
「………そうか」
そんな話をした日の午後、ラブラちゃんが怪我をした。
階段から突き落とされたらしい!
そんな、ヒロインみたいなイベントをラブラちゃんがうけるなんて!
私は王子のせいだと思い、王子のもとへ急いだ。
王子のもとには数人の令嬢とお兄様がいた。
「私は見たのです‼真っ赤なツインテールの女生徒が走り去るのを……」
真っ赤なツインテール?それって私の事みたい………
「それはカーディナルがやったと言いたいのか?」
王子は眉間にシワを寄せて呟いた。
「ありえないな、カーナがそんなことするわけがない」
「だよな」
その令嬢の中に居た侯爵令嬢が前に出て言った。
「最近の王子殿下があのラブラとか言う女と仲良くしているのが許せなかったに決まってます‼」
侯爵令嬢の言葉にお兄様は深いため息をついた。
「ありえない」
「バーテミック様は女の嫉妬が解りませんの?カーディナル様だって婚約者が他の女にちやほやしていたら嫉妬するに決まってますわ‼」
「………ありえない………」
「バート………ありえないよな………」
お兄様はさらに深いため息をついた。
「どうして解ってくださらないの?バーテミック様からしたら妹君を庇いたいのは解りますわ!ですが目撃者が居ますのよ‼」
今度は王子が深いため息をついた。
「お前らの方こそなぜ解らないんだ?カーディナルが目撃なんかされる訳が無いって」
「「「はぁ?」」」
数人の令嬢のすっとんきょうな声が響いた。
「カーナが本気でラブラさんを邪魔に思うなら、カーナは誰にも気が付かれること無く彼女を殺せる。目撃なんてヘマはしない。もっと効率良く殺しているよ」
「こんな白昼堂々とラブラを殺そうとする必要もない。カーディナルが本気を出せばカーディナル本人が出てこなくても喜んで暗殺してくれる暗殺部の奴がゴロゴロ居るんだぞ!俺を殺すのだってカーディナルが頼めば我先にと暗殺部の奴が名乗り出るだろう。そんなカーディナルが、ワザワザ自ら事をおこすか?馬鹿も休み休み言えよ」
お兄様と王子は同時にため息をついた。
「さて、どちらの方が私の大事なラブラちゃんに怪我をさせたのかしら?」
私は優雅にその輪の中に向かって言った。
ヒッと小さな悲鳴がもれる。
「正直に言った方が宜しくてよ。私が本気など出さなくても誰がやったかなんて調べれば直ぐに解るのですから」
私の言葉に男爵家のご令嬢が腰をぬかしたようだった。
私はその娘に近づき言った。
「貴女かしら?」
「ヒッ…ごめんなさい、許してください‼」
私はニッコリ笑うと言った。
「貴女だけかしら?」
「あ、あの、侯爵令嬢のターミナ様に命令され……」
「なんて嘘をつくの貴女!!」
私は侯爵令嬢の前に立つと言った。
「調子に乗りすぎましたわね。私は王子を殺す事はあってもラブラちゃんだけは傷つけたりしませんの!以後気を付けてね。私がお前を殺さずにすむように。解るな……」
「は、はい………」
侯爵令嬢はその場にヘナヘナと座り込んでしまった。
脅かしすぎたか?
「王子もラブラちゃんに迷惑かけないでくださいね!次は無いからな」
「は、はい」
私は王子に満面の笑顔を向けると、ラブラちゃんが居る保健室に諜報部員さながらのダッシュで向かうのだった。
ラブラちゃんの怪我はたいしたこと無かったみたいです。




