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兄様の恋  ヤードラル目線

弟目線にしました。

 家に姉様が帰ってきた‼

 幸せだ‼

 姉様の他に兄様とエールリアって伯爵令嬢も家に住む事になった。

 僕にとっては姉様だけで良かったんだけど、エールリアが理由で姉様が帰ってきたのだからエールリアも許す。

 

「姉様、兄様は何で帰ってきたの?」


 小声で姉様に聞けば、姉様は可愛らしく笑って教えてくれた。


「エルさんはお兄様の想い人だからですわ」

「‼」

 

 兄様は本当にエールリアが好きで、心配だから家に帰ってきたらしい。

 エールリアは僕を見ると怯える。

 嫌、兄様と父様以外の男が恐いみたいだ。

 酷い目に合ったのは父様から聞いている。

 僕は兄様や父様には似ていないから、恐いんだろう。

 別に似ていない事を気にしたこともない………だって、姉様と僕は似ているからそれでいい。




 話がずれたね。

 暫くするとエールリアは僕を見ると真っ青な顔をするくせに寄って来ようとするようになった。


「近寄んなくて良いよ」


 可哀想だから言ったのに、エールリアは涙をいっぱいにして首を横にふった。

 ………僕はエールリアをほっておく事にした。面倒臭いからじゃないよ。

 

 僕は家族のプライベートルームの10人がけのソファーで本を読むのが好きだ。

 理由?ここにいれば僕に気がついた姉様がかまってくれるからだよ。

 ソファーの左端が僕の定位置だ。

 そんなある日、エールリアがソファーの右端に座った。

 姉様と兄様が学園に行っている間は僕と使用人ぐらいしか居ないからかまって欲しいのか?

 僕が視線を向けると逃げて行った。

 次の日、エールリアは1人分僕に近づいて座り視線を向けると逃げて行った。

 なつかない小動物が心を開きかけているような感じ?

 何でそんなに僕と仲良くなりたいの?

 男が恐いんでしょ?

 僕はエールリアと話をした方が良いのかも知れない。

 



 

 僕はエールリアとコンタクトをとるために紙とペンを用意した。

 

『エールリアは何で僕の近くに来るの?  ヤードラル』


 その一文を書いて今日エールリアが座るはずの場所にペンと一緒に置いておいた。

 エールリアはソファーに座ろうとしてその紙に気がついたようで、僕と紙を交互に見るとゆっくりと紙に何かを書き込んだ。

 僕はその紙を魔法で手元に運ぶと読んだ。


『バート様とカーナ様の弟君のヤードラル様に怯えるなんて失礼ですよね?だからちゃんと大丈夫になりたいです』


 君、父親を目の前で殺されて男に酷いことされそうになって男が怖くなったんでしょ?無理しなくて良いよ。

 さすがにそれをそのままエールリアに話す事は、酷いことだと解るから書けないな~。


『僕はカエルと姉様以外に興味が無いから気にしないで良いよ』


 僕はそれだけ書いてエールリアの所に魔法で届けた。

 エールリアは驚いた顔をして何かを書き込んだ。


『カエルが好きなの?』


 僕は一言書いて彼女のもとに紙を届けようとして驚いた。

 彼女は三人分ぐらい僕に近づいて来ていた。


『カエル大好き』


 僕の一文を見るとエールリアはゆっくりと1人分近寄って紙に何かを書き込んだ。


『カエルと言えば私がカエルを持ってカーナ様を追いかけたらカーナ様に生き物で遊んではいけません‼って怒られた事があります』


 エールリアってお転婆さんだったんだな。

 それにしても姉様の話が聞けるなんてラッキーだ。

 僕は思わず笑ってしまった。

 気がつくとエールリアは僕から1人分あけた場所に座っていて僕が何を書くのかのぞいている。


『姉様の話嬉しい』


 エールリアはそのまま手を伸ばして書いた。

 

『カーナ様とはすぐに仲良くなれた訳ではないのです。バート様が間に入ってくれたから仲良くなれたんです』

『エールリアは兄様が好きなの?』


 思わず直球を投げてしまった。

 エールリアは真っ赤になった。

 そして小さな文字ではいと書いた。


『じゃあエールリアの事はエル姉様って呼べばいい?』

『だ、駄目です‼私が勝手にバート様をお慕いしているだけなので!』

『大丈夫だよ兄様はエル姉様が好きだよ』

『それは妹と同じ意味ですよ!絶対です‼』


 エールリアは耳まで真っ赤になってしまっている。


『私よりもヤードラル様は好きな人、居ないのですか』

『居るよ』

『どんな方なんですか?』

『わがままなお姫様』

『わがままなんですか?』

『わがままなのに僕に嫌われたくなくて頑張る可愛い子』


 今まで誰にも言ったことがない心の内側を何故か書いても良いかなって思ってしまった。


『可愛らしい方なんですね』

『可愛い。本人には口が避けても言わないけど』

『なぜです?絶対喜びますよ』

『調子に乗るから絶対言わない』


 エールリアは僕の顔をまじまじと見て書いた。


『いつかは言ってあげてくださいね。』


 エールリアと目があったのははじめてだった。


『エル姉様は姉様の髪の毛と同じ色の瞳なんだね。良いな!』

『ヤードラル様もバート様と同じ色の瞳で羨ましいです』


 エールリアは僕にニコッと笑って見せた。


『もう、僕は恐くない?』


 エールリアは驚いた顔をしてから書いた。


『大丈夫みたいです』

『エル姉様、うちの屋敷の者は皆エル姉様に酷いことしないよ。ゆっくりでいいから皆とも仲良くなってね』


 エールリアは顔をクシャッとしてからポロポロと涙を流しながらコクコクと頷いた。




「エル?ここに………」


 学園から帰ってきた兄様がドアを開け、僕とエル姉様は慌てた。

 筆談していた紙に魔法で火をつけ証拠隠滅するとエル姉様はパチパチと拍手をしてくれた。


「何してたんだい?」

「筆談してたんだよ兄様」

「………仲良くなったのかい?」


 兄様、もしかして嫉妬?


「そうだよ!仲良くなった。兄様ほどは仲良くなってないから安心して」

「ヤード、どう言う意味だい?」

「兄様が心配するような事じゃ無いから‼兄様はエル姉様を幸せにすることだけ考えてれば良いよ」

「エル姉様?」

「そう!エル姉様って呼ぶことにしたんだ!そのうちうちの家族になるんだから良いでしょ?」


 兄様は頭が良いから僕が応援してるって解ってくれるだろう。

 兄様は期待を裏切ることなくニコッと笑ってくれた。

 兄様がエル姉様の頭を撫でながら僕とどんな話をしていたのか聞き出そうとしているを見ながら僕は兄様にバレないように人差し指を口元に押し付けてシーっとジェスチャーをエル姉様におくった。

 エル姉様も小さくコクコクと頷いてくれた。

 ああ…兄様の恋だなんてこれから楽しくなりそうだって思いながら、僕はニヤニヤと笑ったのだった。


娘が寝言で「………五番目から食べる~」って言ってた。

何の夢見てるんだ?

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