エールリア バーテミック目線
残酷描写ありです。
ご注意下さい。
僕には愛する人がいる。
家族ともう一人。
エールリア,スティリット。
彼女は僕にとって、家族とおなじ………嫌、それ以上に大事な女だ。
エルは父上の親友であるジョナス,スティリットの娘で僕が5歳の時にはじめて会った。
妹のカーナと同い年で3歳の彼女のイメージは"小鳥"と言った感じだった。
深緑色の髪の毛はふわふわのウエーブがかっていて、瞳は燃えるような紅い色で妹とは逆の色をもつ彼女を可愛いと思ったのは妹の影響が無いとは言えない。
カーナはエルを前にして僕の背中の後ろに隠れてしまいエルが必死にカーナの顔を見ようとして、それに驚いたカーナと一緒に僕の回りをグルグル回ると言う可愛い出逢いだった。
カーナと仲良くなるためにエルはカーナの好きな歌を歌うようになった。
可愛らしい声にカーナよりも先に僕がエルを気に入ってしまったなんて誰も知らないだろう。
カーナとエルが仲良くなると、僕も一緒に遊んだ。
ヤードはあの頃、病弱で一緒に来ることが出来なかったからヤードはエルと会った事が無いと思う。
エルは歌うのが好きな女の子で笑顔が可愛くて泣かれるとやっぱり可愛いのだけど、カーナと二人で彼女を笑わせようと必死になったものだ。
そんな彼女の父親から相談したい事があると手紙が来たと父上に聞かされた時、僕に言い知れない不安がよぎった。
小さい時にしか会っていないエル。
可愛いエルが今も鮮明に思い出せる。
何かあるなら力になりたい。
ただ単にエルに会いたいだけだと言われたら、そうだと答えるだろう。
カーナと一緒に別荘へ行くはずだったがカーナに断ると、カーナは僕がエルを好きな事を言い当てて早くエルの元へ行くように促してくれた。
エルの屋敷についた時、何故もっと早く来れなかったのか後悔した。
エルの屋敷は炎に包まれ、使用人の悲鳴が響いていた。
「バート、エールリアを探せ」
父上の言葉にハッとして僕は小さい時に何度も通った彼女の部屋に急いだ。
魔法で炎を消しながら彼女の部屋にたどり着いた時小さな悲鳴が聞こえた。
「嫌ぁぁぁ」
「煩い、黙らないと父親のように首を跳ねるぞ‼」
血の気が引いた。
部屋に入れば小汚ない太った男がエルのベッドに彼女の両手をひとつにまとめ枕に縫いとめ今にも彼女の服を引き裂こうとしている姿が見てとれた。
僕は男の頭を掴むと何処から出たのか解らない力で彼女の上から引き剥がすと腰にさしていた剣で男の首を突き刺した。
「エル‼」
エルは焦点の合わない目に涙をいっぱいにして深緑色の髪の毛は真っ白になってしまっていていた。
よく見ればベッドのわきに首の無い死体があり、少し離れた所に彼女の父親の首が転がっていた。
彼女は父親が死ぬところを見ただけじゃなく、父親を殺した相手に犯されそうになったのだ。
エルを抱き締めると、エルは俺の腕のなかで必死にもがいた。
「エル、僕を覚える?バーテミックだよ。君を助けに来たんだ………ごめん、すぐに来れなくてごめん」
「………」
彼女の体から力が抜け、止めどない涙が僕の胸元に吸い込まれていった。
彼女は僕の知っている彼女とは変わってしまった。
深緑色の髪の毛は真っ白に、声は恐怖のせいで出せなくなってしまっていた。
彼女の部屋のクローゼットには彼女の侍女が三人隠れていた。
彼女が必死にかくまったらしい。
侍女達が持っていたのは同じ伯爵位を持つ者の不正の証拠書類だった。
父上は彼女と生き残った使用人を家に引き取る事にしたようだった。
彼女は僕と父上以外の男が恐いみたいで僕の後ろに隠れるようになった。
家族に事情を説明すると、カーナが側に居てくれると言う。
僕も一緒に寮暮らしを免除してもらい出来るだけエルの側にいれるようにしてもらった。
可哀想だったのはヤードだと思う。
ヤードは彼女にかなり怯えられてしまった。
ヤードはカーナ以外にはキツい性格だから仕方が無いのかもしれない。
そんな中ヤードに怯えてしまう事に凹んでいるエルの頭を撫でながら、無理してヤードに近寄らなくていいのにって醜い嫉妬心を抱いているなんて誰にも知られたくない事だった。
エルちゃん頑張れ!




