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マナー

 ブラウド様の怪我は本当に良くなったみたいで、安心した。

 ラブラちゃんと王子とブラウド様にお茶菓子をだす。

 今日は私が作ったマドレーヌでお茶会だ。


「ラブラちゃん。休み明けにマナーの試験があるのは覚えていますか?」


 大きな口をあけてマドレーヌにかぶりついたラブラちゃんの動きが止まった。


「………お前落ちたな」


 容赦無い王子の言葉に私は王子を睨み付けてからラブラちゃんの肩にポンっと手をおいた。


「今日から頑張りましょうね。私がちゃんと教えますから大丈夫ですよ」

「ナルはスパルタだからな~」

「文句がおありなら私はいっさい手伝いませんがよろしくて?」

「ごめんなさい………本当にごめんなさい」


 私はニッコリ笑って思った。

 王妃に必要なマナーもみっちり教えてやろうと。

 私の計画は誰にもバレる事は無い。

 何故なら外野は王族の二人しか居ないのだからだ。

 二人にとっては当たり前でしかない。

 それにバレたとしても最上級のマナーだし、王妃候補の私から教わったのだから仕方ないと皆が思ってくれるだろう。

 私はその日から頑張ってラブラちゃんに王妃に相応しいマナーを叩き込んだのだった。




 その日、少し白い顔をしたラブラちゃんが完璧なマナーでお茶を淹れて私達の前に優雅に差し出してくれた。


「有難うございます………」

「ラブラともうします」

「ラブラさんですのね!可愛らしい名前ですわね」


 今、ラブラちゃんが相手をしているのは公爵夫人です。

 綺麗な金髪に深緑色の瞳のこの近くの領地を納める40代ぐらいの物腰柔らかな人、今日のために来ていただきましたよ!

 私相手だと気が抜けちゃうから用意した優しい御婦人です。


「カーディナル嬢がラブラさんを紹介して下さって私本当に嬉しいのですよ」

「そう言っていただけて本当に光栄です」

「私の事は気軽にフルール夫人とお呼びください」


 おやおや、フルール夫人はラブラちゃんが気に入ったようだ。

 優しい人だが気軽にフルール夫人だなんて呼ばせるような地位の人では無いんだ。


「失礼ではありませんか?」

「私がそう言っているのだから良いのですわ」


 軽くウインクして見せるフルール夫人は可愛らしい。

 私もこんなオチャメな大人になりたい。

 転生前の私は誰がどう見ても"恐い"ってイメージだったと思う………性格上キツい言い方が得意で出口を塞いでいく答弁は大の男を簡単に泣かせるほどだった。(あの頃の部下ごめん)

 それもあって、今世では可愛い大人になりたい‼

 話がずれてしまった‼

 フルール夫人はラブラちゃんに沢山話しかけている。

 微笑ましく見ている私と何がおきているのか解らずも、たぶん身分のある女性に失礼をしないように顔色悪く対応をするラブラちゃんにただ単純にラブラちゃんを気に入ったフルール夫人のお茶会は端から見たら優雅なお茶会に見えるだろう。

 それも、ラブラちゃんがマナーの鬼と化した私のレッスンについてきた賜物だ!(ラブラちゃんに怯えられているが苛めた訳ではない)

 

「カーディナル嬢!ラブラさんは庶民なのですの?」

「はい」


 私が笑って見せるとフルール夫人はニッコリと笑って言った。


「完璧なマナーや作法に加えて王家の色をお持ちだから、王族縁の方かと思ってしまいましたわ‼ラブラさんは王宮に務める事も簡単でしょうね」

「そんな………そうなんですか?」


 ラブラちゃんが王宮務めに興味津々だ。


「王宮に務める侍女さんよりもマナーは完璧ですわ!なにせ私が徹底的に仕込みましたから‼ラブラちゃんが慌ててボロを出さなければ……ですが………」


 私がラブラちゃんに目線を向けるとラブラちゃんが怯えたようにヒッと呟いたが私はニッコリ笑ってやった。


「カーディナル嬢、あまり苛めては駄目よ」

「苛めてなんていません‼ラブラちゃんが生きていくために少しでも役に立つための必要スキルを私が出来る精一杯で教え込んでいるだけですわ!」

「程々にしなくては嫌われてしまいますよ?………ラブラさん、何か困った事があれば私も頼ってくださって良いのですよ」

「そんな、フルール夫人のお手を煩わせる訳にはいきません」

「気にしないで良いのですよ。ラブラさんは少し私の娘に似ているの。だからこそ頬っておけない感じがするのですよ」


 フルール夫人は嬉しそうに笑った。

 フルール夫人の娘さんは王家の色をもった娘さんで、流行り病で私が小さい時に亡くなっていた。

 だからラブラちゃんを気に入ったのか?

 

「フルール夫人の娘さんでしたら美しい方なのでしょうね!」

「美しいって言うより………元気一杯でちょっとドジな所があって無鉄砲でマナーの勉強が大嫌いな子だったわ」

「それは、ラブラちゃんそっくりですわね!とくにドジで無鉄砲でマナーの勉強が大嫌いな所とか」

「ナル、怒るよ」


 フルール夫人はすごく嬉しそうに笑った。

 ラブラちゃん、素が出ているよ。

 私は叱りつけたいのをグッと我慢した。

 その後もフルール夫人のくわわった私達のお茶会は長期休暇の間に数回開催された。

 ラブラちゃんは休み明けにマナー試験でSランクをもらうことになったり、私が特別に寮暮らしではなくなり家から学園に通うことになるのだが……それはまた別の話である。


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