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月光飛行草

晴れたのに寒い。

ダンスパーティーって事で、王子と最初にダンスしました。


「王子………」

「なんだ?」

「ダンス上手いんですね」

「まあな、お前に恥をかかせるわけにはいかないからな」


なんだこいつ、私のために頑張ったのか?

思わず呆れてしまった。


「なんだ?」

「馬鹿だなぁって思って」

「黙ってろ」

「あまりの馬鹿さ加減に、ちょっと可愛く見えてしまったのは幻覚ですわね」

「そのまま俺に惚れたらどうなんだ?」

「夢は寝てから見てください……ですわ」


王子は不満そうだったが私は楽しかった。




ダンスパーティーとは言え立食のスペースもあって軽く食べることが出来る。

私とラブラちゃんは一緒にその料理に舌鼓をうっていた。


「美味しいね」

「はい!ラブラちゃんと一緒に食べると更に美味しいですわ‼」


ラブラちゃんはヘニャンと可愛く笑ってくれて私は幸せだった。


「ねぇ、バルコニーに出ない?」

「良いですわね!お菓子を持っていきましょう‼」


王子と踊った後、数人の男性にダンスを申し込まれ、私はそれにこたえていた。

そのせいで体力は限界だったし、さっきからチラチラダンスに誘いたそうな人が此方に視線を向けてくるからバルコニーは助かる。


「ゆっくり女子トークしよ。」


ラブラちゃんはお皿にたくさんのケーキをのせて私の手を引いてバルコニーに向かった。




バルコニーには月明かりだけが灯り、学園の森を照らしていた。

綺麗だな~‼

私はうっとりしてしまった。


「ナル、ブラウド様って素敵な人だね」

「そうなんです‼素敵な人なんです!」

「好きなんじゃないの?」

「好きですよ」

「恋愛的な意味でだよ」


私は暫く黙ると言った。


「私は貴族ですから、政略結婚をするはずなんです」

「ナルなら恋愛結婚出来ると思うよ」


私は苦笑いを浮かべた。


「私、恋愛ってよく解んないんですの」

「え?」

「長く生きてきて一度も恋らしい恋をしたことがなくて………興味がある事に集中するあまり、恋人どころか友人と言える人すら居なくて………だから、ラブラちゃんが友達になってくれて幸せなんです」


ラブラちゃんは少し困ったように言った。


「私はナルにいっぱい幸せになってほしい。だから、ブラウド様は素敵な人だしナルにお似合いだと思ったの」

「ブラウド様は素敵な人だから私みたいなのじゃなくて、もっと素敵な人が恋人になると思うんです」

「………ナル以上の女とか居ないから」

「ラブラちゃんが居ます」

「………嫌味か?」

「違いますよ‼」

「私にはそんなでっかいおっぱい無いもん!」


ラブラちゃんはやけ食いのように小さなケーキを口に放り込んでもぐもぐしていた。

リスみたいで可愛い。

その時だった。

森の中に光りがポッと灯ったのが見えた。

何だあれ?

しかも、ポアポアといくつもの光りが灯り始めた。


「あれは………」

「お化け‼」


たぶん違うと思うよ。

私がそう思った時だった。


「姫様」


テントウが私に話しかけてきた。


「こちらを」


テントウは私に透明な瓶を手渡してきた。


「あれは、月光飛行草(げっこうひこうそう)の種です。レアな草で、月夜にしか胞子を飛ばさない魔草です」


レアな植物‼

私はテントウの持っていた瓶を受けとるとラブラちゃんに言った。


「私、ちょっと収集してきます」

「え?行くの?」

「はい!ダンスパーティーが終わるまでには帰ってきますね」

「そんなに長く?」

「ダンス苦手なんです」

「逃げる気だ!」


私はラブラちゃんに手を振ってから走り出したのだった。




ポアポアの月光飛行草の種はタンポポの綿毛が蒼白く光っているみたいに見えた。

それを瓶につめながら森の中を歩いていると、開けた場所に出た。

しかも、月光飛行草が辺り一面に漂っていた。

群生地ってやつだろう。

そう思ったその時、月光飛行草の種の中に見知った人が立っているのが見えた。


「ブラウド様?」

「ナル?どうしてここに?」


見ればブラウド様も瓶を持っている。


「同じ理由のようですね」


ブラウド様はニコッと笑うと言った。


「幻想的な場所に妖精が現れたのかと思いました」

「へ?」

「今日はいつも以上に美しいですね」


ブラウド様こそ幻想的な美しさですよ。

私もそう言いたかったけど言葉が出てこなかった。


「自分もこの学園に通っていた時よくここに来たんですよ」

「これだけ美しい場所なら私も通ってしまいますわ」

「なら、またここで会えますね」

「はい」


その後も月光飛行草の効能を話したりして時間はアッと言う間に無くなった。


「………そろそろ戻らないと」

「楽しい時間は直ぐに過ぎてしまいますね」

「本当に」

「ここは自分のお気に入りの場所なので、出来れば誰にも言わないでいただけたら幸いです」

「はい」


ブラウド様はゆっくりと笑ってくれた。

この人に幸せになってほしい。

私はそんな事を漠然と思った。



何だか夢を見ていたような気持ちでダンスパーティーに戻ると王子にこっぴどく怒られた。

王子、呪われろ。

そんなことを思ったのは悪いことだと私は思わない。

またイチャイチャしてました?

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